NAKAHARA-LAB.net

2020.12.3 08:25/ Jun

あなたの組織は「不完全な組織変革」を繰り返し「肉汁ドリップ出まくりドパー」状態に陥っていませんか?

 あなたの組織は「不完全な組織変革」を繰り返し「肉汁ドリップ出まくりドパー」状態に陥っていませんか?
  
  ・
  ・
  ・
  
 組織変革の古典的モデルとして最も有名なものに、クルト・レヴィンの主張した「組織変革の三段階モデル」というものがございます。
  
 彼は、「組織が変わる」ということを「段階を踏んだ一方向プロセス」としてとらえ、その各段階を「解凍」ー「変革」ー「再凍結」という3段階モデルで示しました。
  
 ここで3段階の、それぞれの意味は下記のような感じです。
  
1.「解凍」段階
 組織が、それまでもっていた「従来のやり方・価値観」をいったん、疑い、壊す段階
  
2.「変革」段階
 組織の「従来のやり方・価値観」を新たな環境にあうように変革する段階
  
3. 「再凍結」段階
 組織が必要とする「新たな物事のやり方・価値観」の定着をはかり、ルーティンに結びつける段階
  
 ・
 ・
 ・
  
 もちろん、こうした組織変革のプロセスが、うまく一方向に進み「従来の価値観・やり方」が「新たな価値観・やり方」に転換して、定着すればいいのでしょうけれども、悲しいことに、私たちが生きる「シャバの世界」
は、なかなか、そうはならないようにも思います。
   
 僕が、仕事柄、よく組織を見ていて、起こるのは、下記のようなプロセスです。
  
 名付けて・・・
  
 不完全な組織変革の5段階プロセスモデル(中原 2020)
  
1. 「不完全解凍」
2. 「変革不十分」
3. 「肉汁ドリップ出まくりドパー」
4. 「再凍結不十分」
5. 「似てもやいても食えない」
   
 ああ、いやだ(泣)。
  
 ・
 ・
 ・
  
 どういうことか、と申しますと、まず、1.「不完全解凍」のプロセスでは「従来のやり方・価値観」を中途半端に否定し、中途半端に疑ったりします。
  
 たとえば、トップが変わったときなど、トップはすぐに、従来のトップを否定し、中途半端に新しいことを言いたがります。しかし、そこでの物言いは、現場の実情を踏まえたものでもありませんし、さして必要性があるものでもありません。そういたしますと、要するに「解凍」が不完全なままに終わる。
  
 そういたしますと、第二のプロセス「2. 変革」もうまくいきません。解凍が不完全なので、変革に向かう「重い腰」があがらないのです。そういたしますと、変革も不十分なままに終わります。
 部分的に「従来のやりかた・価値観」が否定され、とってつけたような「新しいやり方・価値観」がなかばスローガンのように導入されます。
  
 しかし、ここで問題は、先の解凍プロセスで、「組織は、まったく解凍がなされなかったわけ」ではない、ということです。「従来のやり方・価値観」は中途半端に否定され、変革も中途半端に行われてしまいました。
 そういたしますと、解凍した組織からは、いろいろな不満や葛藤が染み出してきます。これを肉に例えますと、「3. 肉汁ドリップ出まくりドパー」状態ということになります。もう、謎すぎて、意味がわかりません。
   
 しかし、このまま、経営層としては、組織をほおっておくわけにはいきません。かくして、またまた中途半端に「再凍結」を試みます。しかし、組織は「肉汁ドリップ出まくりドパー」状態にすでになっておりますので、「4. 再凍結不十分」という状態になります。
   
 かくして、組織は「5. 似てもやいても食えない」状態になります。
 わたしたちは、無駄に、冷凍と解凍を繰り返した「生肉」を食うことはできません。おそらく、それと同じです。
  
 あべし(泣)
  
  ▼
  
 このふざけた記事を朝っぱらから書いていて、痛感するのは
  
 戦力の逐次投入
  
 という事態は、やはりもっとも避けたほうがいいということにつきます。
  
 つまりは、「組織変革」にあたるときには、おそらく、組織の危機なのでしょうから、それに場当たり的に向かい、少しずつ戦力を投下するのではなく、いっきに、覚悟をもって行う、ということです。そして、それを行うときには、それなりの矛盾・葛藤が生じるということでしょう。
 「みんながお手てつないで、仲良くチーパッパと、将来を夢見る組織変革」は、まったくないとは言いませんし、理想状態としてかかげるのは否定しませんが、ま、なかなか、ないということです。
  
 ま・・・社会の多くのひとびとは、そんなことは百も承知ですよね。
 しかしながら「組織変革をしっかりやりきる」ことを夢見て、「不完全な組織変革プロセス」に陥ってしまうのが、わたしたちの生きる「悲しいシャバのサガ」なのかもしれません
  
 ・
 ・
 ・
  
 あなたの組織は「不完全な組織変革」を繰り返し「肉汁ドリップ出まくりドパー」状態に陥っていませんか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
       
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
   
  ーーー
   
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

   
 ーーー
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約30000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?

2024.11.26 10:22/ Jun

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?