NAKAHARA-LAB.net

2020.11.26 09:25/ Jun

過去20年で「大学に流れる時間」が変わったかもしれない話

 かつての大学は、今より、ずっとずっと、ゆっくり時間が流れていたように思う。
  
 僕の心の中にある、今から20年くらい前の大学の原風景は、
  
 天気がよく
 ポカポカしている
 土曜日の昼下がり
  
 少し眠気を感じながらも
 興味関心のあう研究者たちが集まり
 喧々ガクガクとした議論をしている
 自主研究会
  
 の風景である。
  
 それは「知識を仕入れる」というよりも「知識に浸る」といった場であった。同じ分野の研究者が集まり、ともに本を読み、ともに知識に浸る場が、大学であった。
  
 難解な書籍をとりあげ、一行一行、味わうような精読がなされることも少なくなかった。個々の研究もさることながら、そこには思想を感じる余裕があった。
  
 今よりも、ずっとずっと、大学の時間は、ゆっくりとしていたように思う。
  
  ▼
  
 それから爾来20年。
  
 たしかに研究会も開催されるけれど、なんだか、とにかく大学人は忙しい。
「知識に浸る場」なんていうものは、いまや「死語」なのではないだろうか。
  
 また、最近、気になっているのは、研究者のなかには「大著を読まなくなっているひと」が増えていることである。
 領域を越境するような難解な大著を精読するよりは、手っ取り早く、自分の狭い狭い分野の電子ジャーナルを多読する。
  
 つまり「知に浸る」というよりは「知」を道具的に「消費する」
 そうした読み方が増えてきたように思う。
  
 ま、こんなことを言っていると、お前も年をとったな、と言われそうだけど。
 ノスタルジーに浸るのもいい加減にせい、と(笑)。
  
 ただね・・・なんか、最近、危機感も感じるんだよなぁ・・・。
  
  ▼
  
 せんだって、大学に久しぶりに向かい、ピエール・ブルデューの大著「再生産」「ディスクタンシオン」を手に取った。
 この2冊とも、その一部を、大学時代に精読した経験のある、思い入れの深い本である。
 
 このたび12月のNHK100分名著で、ブルデューの「ディスタンクシオン」が特集される、という。これを機会に、もう一度、読み直そうと思った。
  

  
 ・
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 大著は「なかなか噛みきれないスルメ」のようなものである。読めばよむほど、毎回違う味がする。
  
 すこし時間をとって、じっくり大著を味わいたい。
 今の僕には、そういう時間が必要なのかもしれない。
    
 そして人生はつづく
    
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