2020.8.4 08:24/ Jun
あなたの組織や職場では、最近、「希望」が失われていませんか?
あなたの組織や職場では、従業員のエンゲージメントを高めるために、どのようなリーダーシップが発揮されていますか?
・
・
・
スティーブ・バッコルツ 、トム・ロス、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 (著)、小田 理一郎 (監修)、東出顕子 (訳)「成長企業が失速するとき、社員に“何”が起きているのか? 」を読みました。いわゆる「従業員のエンゲージメント」について概観し、それを高めるために、いかなるリーダーシップを発揮しなければならないか、について学ぶ良質の実用書だと思います。この本を日本語で読めることができるのは、とても素晴らしいことです。監修者、訳者にこの場を借りて御礼を申し上げます。おすすめの一冊です。
今日は、この本をご紹介させていただきましょう。
▼
本書の中心的なテーマである「エンゲージメント」は、近年のHR業界において注目されているバズワードです。
本書では、エンゲージメントを
1.組織に「何らかの変化」がふりかかったときに
2.その変化を「肯定的」にとらえて
3.自らの仕事において、必要最小限度のエネルギーを超えて、
4.自らの裁量で投入するエネルギーの量
と把握しています。
端的にいってしまえば、「エンゲージメント=自由裁量のエネルギー」です。
(エンゲージメントには様々な定義がございます。ここでは、こう把握します)
ギャラップ社などの民間調査の結果で、よく知られているように、日本は、「熱意ある社員」の割合が、世界でもっとも低い「低エンゲージメント国家」です。これが近年、経営指標として注目されてきました。それは、エンゲージメントが離職率の低下、労働生産性に影響を与えうる、という指摘がなされたからです。
本書のユニークなところは、このエンゲージメントと、それを高めるにまつわるリーダーシップを主要な論点としているのにもかかわらず、
組織が「失速するとき」、組織内部に何がおこっているのか?
というとっかかりから、この問題を論じていることです。これがとても生々しく興味深い。
エンゲージメントが失速するとき、根源にあるものを著者は「喪失体験」だといいます。
ここで「喪失体験」とは、
「組織が何かを得る」のではなく
「組織が何か失っていくとき」に感じる感覚
のことでしょう。
失速していく企業において、喪失する経験は、下記のような言葉に代表されます。
自組織のなかで、下記のような言葉を聞くようになったら、もしかすると要注意かもしれません(同書、p40より一部改)。
【人間関係の喪失】
「最近、多くの同僚や友人がいなくなったな・・・」
【アイデンティティの喪失】
「自分は・・・・の世界では名が知れていたのに、今では・・・・・」
【構造の喪失】
「窓のあるオフィスを失った」
「うちの部署は、違うことをやれと言われた」
【将来の喪失】
「自分の仕事は堅実だと思ってきたのに・・・・」
【意味の喪失】
「・・・・・の意味が理解できない」
【目的の喪失】
「こんなことをするために入社したんじゃない」
【影響力の喪失】
「もう誰も、わたしの意見なんて、求めていない」
【伝統の喪失】
「うちの会社は、もう家族にやさしいとはいえないな」
【安定性の喪失】
「次に何が起こるか、まったくわからない」
【権利の喪失】
「以前はボーナスを充てにできたのに」
【コントロールの喪失】
「自分の運命の手綱を自分で握っていたのに・・・」
【希望の喪失】
「うちの会社は生き残れそうにないな」
・
・
・
なんか思い当たるところはないですか・・・。
自分の組織には、12個中、何個あてはまりますか?
えっ、12個全部?
それは危険かもしれない(泣)
実に悩ましい。
▼
本書の後半部では、このような「組織の喪失」に対して、リーダーシップをいかに発揮していけば、それを乗り越えることができるのかを論じています。
エンゲージメント向上のために、従業員が求めていることは、下記の6つです(同書、p74より引用)。
1.未来に可能性があると感じられること
2.明確な焦点と期待が示されること
3.チームの一員だと感じること
4.情報を知らされている、と感じること
5.リーダーが従業員を気にかけていることが示されること
6.リーダーが変化の先頭にたつこと
・
・
・
いかがでしょうか?
あとの詳細はどうぞ本書をお読みください。
▼
今、日本・世界は、いいえ、世界に存在する多くの組織は、コロナ禍で様々な艱難にぶち当たっています。
なかには、変化に対応するため、普段以上のエネルギーを発揮し、何とか、この難局を乗り越えるべく動いている組織があります。一方で、変化に対応できず、組織のなかに、さまざまな「組織の喪失」が生まれ、従業員のエネルギーがだだ下がり、ダダ漏れ状態になっている組織もあります。
あなたの組織や職場では、最近、「希望」が失われていませんか?
あなたの組織や職場では、従業員のエンゲージメントを高めるために、どのようなリーダーシップが発揮されていますか?
そして人生はつづく
ーーー
新刊「サーベイフィードバック入門ーデータと対話で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」が好評発売中です。AMAZON人事・マネジメントカテゴリー1位を記録しました。組織調査を用いながら、いかに組織を改善・変革していくのかを論じた本です。従業員調査、HRテック、エンゲージメント調査、教学IRなど、組織調査にかかわる多くの人事担当者、現場の管理職の皆様にお読みいただきたい一冊です!
ーーー
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
ーーー
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約28000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
最新の記事
2024.12.8 12:46/ Jun
2024.12.2 08:54/ Jun
2024.11.29 08:36/ Jun
2024.11.26 10:22/ Jun