NAKAHARA-LAB.net

2020.7.14 06:57/ Jun

あなたの周囲には「対話ゼロで、とりあえず多数決病」に罹患している方はいませんか?:「話し合い」よりも「空気」で物事が決まる国!?ニッポン!?

あなたの周囲には「対話ゼロで、とりあえず多数決病」に罹患している方はいませんか?
  
  ・
  ・
  ・
  
 数年前から、大学で学部生を教え始めるようになって、ずっと疑問に思っていることがあります。
     
 それは、
  
 1.多くのひとびとが集まっている集団で
 2.物事を決める方法とは
 3.どこで教えられているのか?(≒学ばれているのか)
  
 という素朴な問いです。
  
 己の浅学を恥じますが、これが、正直に、僕にはよくわかりません。そして、今日お話しする内容が、どの教科、どの分野に関連づくことなのかも、よくわからないのです。
  
 この話題は、とてもシンプルですが、ずっと感じてきたことです。
 恥を忍んで、今日は、このことを書いてみましょう。
  
  ▼
     
 数年前、学部にうつってきて、20歳前後の若い学生と接するようになって、まず、僕が気になったのは、彼らがチームや集団になったとき、「物事を決めるときの決め方」でした。
      
 僕の目からみると、彼らのなかには「対話ゼロで、とりあえず多数決病」に罹患していると思われる症状が見て取れたのです。
   
 ここで「対話ゼロで、とりあえず多数決病」とは、「物事を決める」ときに
    
 1.まずは「個人」であまり「考えをまとめること」をせず、
    
 2.集団では、いいね、いいね、と空気とノリでやりとりをして
  
 3.とりま(とりあえず)多数決で決めてしまい
  
 4.結果がでたあとで、不平不満がプスプス生じて
  
 5.中には「わたしは知らない、関係ない」とトンズラする輩がでてくる
  
 ような決め方です(号泣)。
  
 特に気になるのは、「とりま(とりあえず)多数決」です。
 何をやっても「とりま多数決」、考えもなく「とりま多数決」。別に「多数決」が悪いわけではないのです。多数決が悪いのではなく、「とりま多数決」がどうも案配が悪い。
  
 といいますのは、この「とりま多数決」には「事前に行わなければならない対話」や「事後に各人が担わなければならないない責任」が付随していません。
       
 ですので、
  
 物事が決まっているようで、決まらない
 決まってはいるんだけど、動かない
       
 という状態が生まれます。
    
 教員としてもっとも気になるのは、「多数決」に至る前に「何をしなければならないのか」ということと、多数決を行ったあとは「何が必要か」がわかっていないのではないか、ということです。
  
 こういう場面を、何度となく経験してきました。
    
  ▼
   
 これに対して、僕が、自分のなかで理想的だなと思っている「物事の決め方」とは、下記のようなものです。これをなんと表現していいか、まったくわからないのですけれども、僕のなかの理想です。もちろん、これは「僕の理想」であって「他の方の理想」ではないかもしれません。ただ、僕が指導する学生には、物事を決めるときには、下記のようなステップをとるように助言してきたつもりです。
  
 物事を決めるときには、
  
 1.個人でいったん考えをまとめる
  
 2.個人の考えを表出し、個人間の考えの「ズレ」にだしあう
  
 3.相互の「考えの分岐点」をしっかりと確認したうえで、
   
 4.最後は、議論か、多数決などで決める
  
 5.決まったことには、みなで従う
  
   ・
   ・
   ・
  
 嗚呼、こう書いてみると、「アタリマエダのクラッカー」すぎて、もう泣きたくなります。
 しかし、どうやら、この手のことは、きっちり、学生には大学に入る前には、定着していない印象があります。いや、むしろ、少なくない学生が「対話ゼロで、とりあえず多数決病」に罹患している。この「対話ゼロで、とりあえず多数決病」を「アンラーニングすること(揺さぶること)」から、大学での学びがはじまります。
          
 皆さんは、いつ、どこで「物事の決め方」を学びましたか?
      
  ▼
     
 今日は「物事の決め方」に関して、ずっと疑問に思ってきたことを書きました。
    
 今日のブログでは学生をとりあげましたが(ごめんね)、よくよく考えてみると、大の大人だって、「物事をきちんと決めているか」というと、そうではないような気もしてきます。物事が決められないのは、学生だけではなく、大人もそうなのかもしれません。
  
 そんなことを考えていると、この国は、
  
 物事を「話し合い」よりも「空気」で決めてしまう国
  
 なのかもしれないな、とも思ってきます。
    
 いずれにしても・・・わたしは、教師です(キリッ・・・なんつって)。
 そして学校とは、社会に出る前の「試行錯誤」の場所です。
  
 学校という安全空間での、学生との試行錯誤を通して、「物事の決め方」を教えていこうと思います。
 
 そして、今日の話題は、自分に対しても「矢印」が向きますよね。
 自戒をこめて申しますが、物事を決めるときには、しっかりと意見を表明し、得た結論にはフォロワーシップを発揮しようと思います。
 
 そして人生はつづく
   
  ーーー
  
新刊「サーベイフィードバック入門ーデータと対話で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」が好評発売中です。AMAZON人事・マネジメントカテゴリー1位を記録しました。組織調査を用いながら、いかに組織を改善・変革していくのかを論じた本です。従業員調査、HRテック、エンゲージメント調査、教学IRなど、組織調査にかかわる多くの人事担当者、現場の管理職の皆様にお読みいただきたい一冊です!
  

  
 ーーー
  

    
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
   

  
 ーーー
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約28000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
   

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?

2024.11.26 10:22/ Jun

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?