2020.5.28 07:50/ Jun
就職面接を乗り切るために必要なのは「他人の靴をはく能力」である!
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僕は1年ほど前から「転職学」というプロジェクトに、パーソル総研(小林さん)・パーソルキャリアの皆さん(吉村さん、平田さん、影山さん、藤田さん)と取り組んでいるのですが、せんだっての会議で、こんな問題提起をさせていただきました。
今日は、「就職面接で発揮されるべき認知能力」について、不肖・中原が「ふと思いついてしまったこと」について、皆さんにお話しさせていただきたいと思います。
僕は面接のプロではありません。
下記は「思いつき」ですので、どうかあしからず。
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まず、一般に、就職面接とは「一問一答のクイズ」のように考えられている節があります。
キャリアカウンセラーの方とか、面談・面接を専門にする方は、そうは考えないとは思いますが、一般の方々にとっては、そうだと思います。
つまり、面接には「質問する側=採用担当者」と「質問される側=求職者」がいて、「質問する側」が「問い」を投げかけて「質問される側」が、それに「答える」ということです。
そして、ともすれば、求職者側は、この「一問一答」に「正しい答え」があるのだと考えてしまいます。おそらく、経験値の少ない求職者であれば、なおさら、そうでしょう。
こういう質問には「かくかくしかじか」のように答えておけばOK!
この類いの質問には「ほげほげちょめちょめ」のように答えて「おけまる」
と考えてしまいがちです。
ポイントは、
面接には「正しい答え」がある
と考えてしまうことです。
そうなると、面接対策とは「正しい答え」を「暗記すること」ということになります。
せんだって、立ち寄った本屋さんで面接対策本を読みましたが、その本には「正しい答え」が山のように書いてありました。
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しかし、よくよく考えてみると、
就職面接には「正しい答え」があると考えてしまうこと
には、いささか無理があるような気がします。
といいますのは、「質問する側」が「どの立場」にいる人かによって、聞きたい内容は異なりますし、理解の枠組みが異なるからです。
たとえば、そのひとが人事担当者の場合には、あくまで人事の目線から、求職者が述べたことを解釈します。一方、質問する側が、現場のコテコテの管理者の場合には、「現場に何をもたらしてくれるのか」という目線で、目の前の求職舎の回答を解釈します。
「うーん、この求職者の経験は、うちの社風にあわないな・・・やめとこ」
「うーん、この求職舎の経験は、うちの職場のA君と組み合わせると、いいかもしれない・・・いけるな」
といったように、同じように「過去の業務経験」を語ったとしても、脳裏に浮かべていることは、まったく異なることが予想されます。
つまり、そう考えれば、
就職面接には「正しい答え」はない
ということになります。
別の言葉でいえば、
「就職面接に答えが正しいかどうか」は「質問する側」の「認識の枠組み」によって決まる
ということになるのです。
つまり、ここでわたしたちは、ひとつの「プチ結論」に至ります。
それは、
就職面接で発揮されなければならない認知能力とは「単なる暗記」ではない
ということです。
むしろ、
就職面接で発揮されなければならない認知能力とは「他人の靴を履く能力(Put yourself in their shoes)」である
という問題提起が生まれます。
ここで「Put yourself in their shoes(他人の靴をはく能力)」とは、「他人の立場にたって俯瞰的に物事を考える」ということを表現する、典型的なメタファです。
「他人の靴を履く」とは、ものすごく窮屈なことであり、違和感を感じることです。「他人の靴」が自分の足にフィットするわけではありません。しかも「他人の靴」をはいたところで「他人になりきれるわけ」ではありません。
「他人の靴をはく能力」とは、このように、自分の足と靴とのズレを感じつつ、相手の立場からものを考える高度な能力に他なりません。
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もし仮に、ここまでの議論が「是」というのであれば、我々は、「就職面接で発揮されなければならない認知能力」について結論に至ります。
まず第一に、就職面接で発揮されなければならない認知能力とは、まずもって「他人の立場から見て」、「自分が話している内容」が、相手からみて「どう思えるのか」「どう見えるのか」を推論することです。
そのうえで、
第二に、相手の反応やレスを観察したうえで、「自分が話している内容」を即興的に作り替え、相手にわかるように「翻訳」しながら話せることです。
加えていうならば、このように複雑な作業を「面接のあいだ」だけで行うことは、極めて困難です。
ですので、面接の「前」には、それなりの準備ー自分の経験の棚卸しが必要です。
すなわち、面接にのぞむ前には、
第三に、就職面接には様々な質問者(ステークホルダー)がかかわることを想定し、自分の業務経験や過去を棚卸しし、ストーリーとして複数まとめておくことが重要になります。
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このように考えますと、最近、流行のナラティブ論的な観点から考えるならば、
就職面接とは「求職者のもつナラティブ(認識の枠組み・ストーリー)」と「採用担当者のもつナラティブ」が出会い、お互いを探り合い、なんとか「折り合い」をつける場
という風にも解釈できるのかもしれません。
ここでナラティブとは、それぞれのひとびとがもつ「認識の枠組み・ストーリー」とお考えください。それぞれの人々は、それぞれのもつ「ナラティブ」に依拠して、物事を考えています。
先にも述べたように、就職面接において、求職者は、まず、経験の棚卸しを行ったうえで「自己のナラティブ」をまとめ上げる必要があります。これは就職面接「前」に為すべき行為でしょう。
そのうえで、就職面接においては、
つぎに、求職者が果たすべきは、面接官の立場と仕事を何とか類推しつつ、適宜、質問を行ううえで、相手がもつ「ナラティブ」を探り当てることが必要になります。
ここで必要なのは、とにもかくにも「他人の靴をはく能力」です。あくまで相手の立場にたって、物事を考えることです。
そのうえで、さらに就職面接をパスするために必要なのは「相手のナラティブ」にあうように、即興的に自己のナラティブに微調整を加え、話すことでしょう。
さらに話をややこしくするので、このあたりで本当にやめますが(笑い)、求職者は求職者個人のナラティブだけをもっているわけではありません。
彼らが新卒の場合には「保護者のナラティブ」、彼らが既婚者で家庭をもっているならば「パートナーのナラティブ」すらも、彼らは内化しながら、面接にあたっています。
同様に、それは採用担当者も同じです。彼らは「人事部長のナラティブ」や「経営者のナラティブ」を内化しながら、面接を進めています。
要するに、
就職面接とは、人々のナラティブが「とぐろを巻いていている場」であり、それらに折り合いをつける場
であるということです。
最後の方は、ややこしいかもしれません。
すみません(笑)
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いかがでしょうか?
もちろん、これは、僕がプロジェクトメンバーの皆さんのお話を伺いながら、3秒で思いついたことなので、単なる「思いつき」です。
ただ、就職面接とは「正しい答えの一問一答」である、という浅薄な理解を行っても、なかなか「よい面接」にはたどり着かないと思うのですが、いかがでしょうか。
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今日は「就職面接において必要な認知能力」について、思いつきを気ままに書かせていただきました。
わたしは採用・就職のプロフェッショナルでも研究者でも何でもないですが、
就職面接を乗り切るために必要なのは「他人の靴をはく能力」である!
就職面接とは「求職者のもつナラティブ(認識の枠組み・ストーリー)」と「採用担当者のもつナラティブ」が出会い、お互いを探り合い、なんとか「折り合い」をつける場である
と思いますが、いかがでしょうか?
少なくとも
就職面接には「正しい答え」はないんぢゃなかろうか!
さぁ、就活の選考解禁日、6月1日が近づいてきました。
そして人生はつづく
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