NAKAHARA-LAB.net

2020.4.28 09:18/ Jun

マネジメントの質を決めるのは、マネジャーのもつ「人間観」である!?

 マネジャー(管理者)が暗黙のうちにもっている「人間観」は、「人材育成」に対して強い影響力をもっているものです。
   
 よく知られているように、マネジャーは、それぞれ「implicit person theories (IPTs:暗黙のうちの人間観)」というものをもっています(Heslin et al 2006)。そして、その人間観は、彼 / 彼女の行うマネジメントに広範囲に影響を及ぼします。
  
 具体的には、
  
 人間の能力なんて生まれながらにして決まっちゃっているんで、仕事できないアイツなんて、育成しても仕方がない
  
 とか、はたまたその逆に、
  
 人間の能力は後天的にまだまだ伸びるものなので、仕事を通じて、能力を育成することができるだろう
  
 とかいう具合に、人間の能力や資質に対しても、マネジャーのもつ「暗黙の人間観」は及びます。
    
 そして、この「暗黙のうちの人間観」は、マネジャーの行う人材育成のあり方にも強い影響を与えます。
  
「人間の能力なんて生まれながらにして決まっちゃっている」よね、と思っている「生得説」を骨の髄から信じてしまっているひとは、「変わらない部下の業務能力」を、自ら苦労して高めてあげようなどとはしないものです。
  
 おそらく、仕事につまづいている部下を見ても、
  
「ケッ、こいつ、使えねーな。誰だよ、こんなカスを採用したのは」
  
 と悪態をつくだけです。
 
 一方、「人間の能力は後天的にまだまだ伸びる」と信じているマネジャーは、事態が異なります。彼 / 彼女は、自分の働きかけによって、部下の能力は伸びると思っているので、低業績者に対しても、支援の手をさしのべます(Heslin et al 2006)。
  
 このように「人間観」の影響とは、まことに大きいものです。
  
「人間をどう見立てているか」によって、彼 / 彼女のマネジメントの成否が変わり、おそらくは、部下がどのように仕事をするか、その質まで左右してしまうものなので・・・。
  
  ・
  ・
  ・
  
 さて、あなたに質問です。
  
 あなたは、どのような「人間観」をもって部下に接していますか?
  
 あなたの上司は、どのような「人間観」をもっていますか?
 そして
 上司の人間観は、上司の行うマネジメントにどのような影響を与えていますか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
   
新刊「サーベイフィードバック入門ーデータと対話で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」が好評発売中です。AMAZON人事・マネジメントカテゴリー1位を記録しました。組織調査を用いながら、いかに組織を改善・変革していくのかを論じた本です。従業員調査、HRテック、エンゲージメント調査、教学IRなど、組織調査にかかわる多くの人事担当者、現場の管理職の皆様にお読みいただきたい一冊です!
  

  
 ーーー
  

    
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
   

  
 ーーー
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約25000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.28 09:58/ Jun

専門知の「パワフルさ」と「盲目さ」!?

2024.12.25 10:57/ Jun

「最近の学生は、昔からみると、変わってきたところはありますか?」という問いが苦手な理由!?

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点