NAKAHARA-LAB.net

2020.2.12 07:40/ Jun

研修・ワークショップ業界に蔓延する「盛り上がった信仰」!? : 研修が「死語」になる日は近い!?

 もうそろそろ「盛り上がる=よい研修」という認識を改めませんか?
   
  ・
  ・
  ・
  
 最近、研修、ワークショップ、セミナーなどの「よしあし」を語るボキャブラリーや指標が、「貧困」なのではないか、という思いをもちます。
  
 一番問題を生み出しやすいと思われるのは「盛り上がった」という研修の語り方です。
  
「研修は、たいへん、参加者が盛り上がってですね。事後のアンケートでも、満足度が非常に高かったのです」
  
 というような会話は、おそらく、日本全国・津々浦々の研修業界、ワークショップ業界で聞かれることばのひとつでしょう。しかし、僕は、こうした発話を聴くたびに、心がザワザワしてしまう人間のひとりです。
    
「盛り上がった研修が、よい研修」
  
 という「盛り上がった信仰」は、研修業界のなかに根強くこびりついていて、それは「研修の満足度が高いものは、よい研修」という認識と共振します。
  
 しかし、少し考えてもすぐにわかるとおり、「盛り上がって、満足度が高い研修で学ばれた内容」が、実際に、現場で「実践」されたり、必ずしも、役立てられたりするわけではありません。もちろん、「盛り上がって、かつ、実践もされること」もありえますが、究極的に問われるべきは後者の「実践の程度」です。
      
 一般に「研修で学ばれたものが、現場で実践され、成果をあげること」を「研修転移」とよびます。が、本来問われなければならないのは、研修転移であり、「実践が為されたかどうか」なのです。
    
 ですので、これからの研修、ワークショップでは
  
 盛り上がりを求めるな、実践を問え!
  
 満足度を問うな、研修転移を問え!
    
 ということになると思うのですが、いかがでしょうか。
   
 もちろん、
  
 
「盛り下がる」よりは、「盛り上がる方」がいいのかもれないけれど(笑)
    

  
  ▼
  
 今日は研修、ワークショップ業界に広がる「盛り上がった信仰」のお話をしました。この問題は、実は、研修を提供する側、研修を実践する講師のサバイバルストラテジーと関係しているだけに、非常に難しい問題でもあります。研修の満足度は、いとも簡単に操作しやすいことも、この問題の深刻さに輪をかけています。
   
研修の「満足度」を問うな、研修転移を問え!? :「現場にインパクトを1ミリも及ぼさない研修」は「共犯関係」によって生み出されている!?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11065
  
いとも簡単に「操作」できちゃう「研修の満足度」!? : 研修評価アゲアゲの「悪の!?マニュアル」!?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9586
  
 しかし、これからの研修は、
 
 盛り上がりを求めるな、実践を問え!
  
 満足度を問うな、研修転移を問え!
    
 になるのだと思います。
  
 もしかすると、研修という言葉も「死語」になるのではないでしょうか。
  
 なぜならば、問われているのは
  
 実践
  
 なのですから。
  
「研修」ではなく「実践」でいいじゃない(笑)
  
 そして人生はつづく
  

    
  —
  
「フィードバック入門」10刷、「実践!フィードバック」が重版5刷です。ハラスメント時代に必要な部下育成の技術がフィードバック。耳の痛いことをいかに部下に通知し、そこから立て直しをはかることができるか。全国各所の管理職研修で用いられています。はじめてリーダーになる方、管理職になる方におすすめの2冊です。どうぞご笑覧くださいませ! この書籍をベースにした映像教材、通信教育教材、研修などもございます。
      
 
   
DVD『フィードバック入門』、通信教育、研修はこちら
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
   
 ーーー
  
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約25000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
    
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.28 09:58/ Jun

専門知の「パワフルさ」と「盲目さ」!?

2024.12.25 10:57/ Jun

「最近の学生は、昔からみると、変わってきたところはありますか?」という問いが苦手な理由!?

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点