2020.1.14 06:56/ Jun
課題が「簡単」すぎれば、あっぱくさくて、学べない
課題が難しすぎても、今度は失敗しすぎて、学べない
最適な学びにつながる「スイートスポット」はどこか?
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アリゾナ大学のロバート・ウィルソン先生らの研究チームは、この難問に、機械学習のコンピュータシュミレーションをつかって答えを出しました。
コンピュータに、正答率の異なる単純な問題(ものごとをカテゴリーに分類する問い)をだして、「コンピュータが、もっとも効率よく学ぶには、どのくらい失敗させるのが最適なのか?(optimal learning)」なのかをさぐったのです。
Wilson, R.C., Shenhav, A., Straccia, M. et al. The Eighty Five Percent Rule for optimal learning. Natuture Communications 10, pp4646 doi:10.1038/s41467-019-12552-4
研究の結果、彼等のはじきだしたのは「85%ルール」です。
つまり、コンピュータが「85%の正答率(エラー率15%)」で分類できたときに、学習率が最適化されることを見いだしました。とても興味深い数字です。
学習とは、結局「試行錯誤にともなう学び」です。
この試行錯誤の割合をパコーンと「15%」と見いだしたのは、非常に興味深いことです。
もちろん、課題がコンピュータシミュレーション上の単純な 知覚弁別課題であること、などから、この研究を広範囲に「人間のあらゆる学習」に適用することは無理があります。
しかしながら、パコーンと数字を出したのは気持ちいい。
「15%だ!、どうだ!」
この研究は、非常に興味深く拝見させていただきました。
皆さんは、いかが思われますか?
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今日は「学習にともなう最適なエラー率」とはいくつか、という研究を紹介させていただきました。
周知のとおり、2000年代後半から、本邦の人材開発領域で、主要な理論と注目されているのは経験学習です。
経験学習でもっとも重要なのは、ストレッチ(背伸びの経験をさせること)と、振り返りです。
しかし、これまで、前段の「ストレッチをどの程度させたらよいか」は、議論が分かれるところでした。
ひとによっては、現在の能力以上の200%の課題を与えることがストレッチだった。またひとによっては、現在の能力の105%くらいの課題がストレッチだと思っていた。ちなみに・・・前半の「200%」は「無茶ぶり」と言うのだけれども(笑)。
今日ご紹介した知見は、1)コンピュータシュミレーションではじきだした最適学習の研究であること、2)課題がシンプルな弁別課題であること、などの制約はあり、そのまま「適用」することはできません。
しかし、ひとびとが、自分なりにストレッチの程度を決めたりするときに、「参考」になる数字なのかなとも思います。
あなたは、学ぶときに、どのくらいの試行錯誤を好みますか?
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ちなみに、冒頭の「あっぱくさい」は、北海道弁で「簡単すぎる」だと思います。きっと。
北海道を出て、今年で27年
そして人生はつづく
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