NAKAHARA-LAB.net

2020.1.7 07:07/ Jun

今年こそ「時間泥棒さん」に「自分の時間」を奪われたくないのなら、ボーッとしててはいけない理由:今年こそ実行するタイムマネジメント2020(笑)

 あなたは「暇で暇で、やることがないリーダー」にあったことがありますか?
   
 はたまた
   
 あなたは「会社でビジョンを描いているリーダー」にあったことがありますか?
  
  ・
  ・
  ・
   
 マネジャーやリーダーと呼ばれるひとが「多忙」にさいなまれ、「自分の時間がない」のは、経営学研究ではかつてから指摘されていたことです。
  
 たとえば、そのきっかけになったのは、ヘンリー・ミンツバーグの「マネジャーの仕事」というエスノグラフィー的な研究でしょうか(ミンツバーグ 1973)。
  
 ミンツバーグは、上級役員の背後に影武者のようについてまわり、調査を行うことで、マネジメントやリーダーシップを発揮する人材の「多忙さ」を「たゆみないペースでの、不連続な断片化した仕事」と表現しました。
       
 彼が観察したリーダーたちは、
       
 ・上級役員としての活動の時間は9分もない
 ・30分以上邪魔がはいることなく仕事ができるのは、2日に1回しかない
 ・ひとりでいた時間は全体の22%しかない
  
 ような「雑事にまみれた日常」を生きていたのです。
 要するに、マネジャーの仕事は、次から次へと仕事が舞い込んでいる、「果てしない断片化」の極地にあったということですね。よく「マネジャーやリーダーはビジョンを描け」なんて言われるけれども、「ビジョンを描く暇なんて1ミリもない。現実はまことに過酷です。南無阿弥陀仏。
      
  ▼
   
 この手の研究は、ミンツバーグ以前にも、古くはケリー(1964)の研究、スチュアートの研究(1967)などがありますが、もうひとり代表的な研究がウォーレン・ベニスの研究です。
        
 ベニスは「リーダーはなぜリードできないのか?」という命題を掲げ(ベニス 1985)、やはり、リーダーの仕事が「ルーティンワーク」にまみれており、たとえばビジョンを描くような「創造的な仕事」を脇においやっていること。本来取り組まなければならない「リーダーならではの仕事」が、おざなりになっていることを明らかにしました。
     
 近年では、ハーバード大学のポーター教授とノーリア教授が「How CEO manage the time(CEOは、いかにタイムマネジメントを行っているのか?)」という研究に取り組んでいます。
  
 彼らは、知り合いの合計27人のCEOに対して、調査依頼を行い、15分ごとの時間の使い方に関する詳細な記録を行いました。その結果は、先行研究をおおよそ追従するような結果となっているようです。
  
 まず、CEOたちは、平日平均9.7時間働き、作業時間の61%を対面での対人やりとりに費やしていました。
 そして、ビジョンを描くこと、戦略を練ることのためには、やはり時間がいる。しかしながら、CEOは「とてつもなく多くの要求」を部下から受けている存在であり、そのような時間をとることは極めて難しい現実を生きていることがわかりましhた。
  
 しかし、それでは、どのように自分の時間を確保するのか?
 いくつかの方法として読み取りうるのは・・・
 
・CEOの直下で働き、情報処理を行ってくれる優秀な人材、リーダーシップチームを確保すること
・仕事の成果に直接関係しない外部の活動を制限する
・自ら達成したいアジェンダ(目標)を決めて、それを遂行するべくタイムマネジメントを行うこと
・自ら返答しなくて良い電子メールを避ける(電子メールに返答しなければならないという規範の誘惑に勝つ)
  
 などでしょうか。
  
 要するに
  
 何も考えずにノホホンと暮らしていると、もれなく時間泥棒さんに、時間を奪われる
   
 時間を確保することにも「意志」が必要だ
  
 ということなんでしょうね
  
 ボーッとしてんじゃねーよ
 チコちゃんに叱られるよ(笑)
  
  ▼
  
 今日は、CEO研究の知見をひもときながら、タイムマネジメントについて考えてみました。
  
 冒頭述べた2つの質問、すなわち
  
 あなたは「暇で暇で、やることがないリーダー」にあったことがありますか?
  
 はたまた
   
 あなたは「会社でビジョンを描いているリーダー」にあったことがありますか?
  
 に対しては、多くのひとびとは「NO」と答えるのではないか、と推察します。「たいていのリーダーは、暇がなくて、あくせくしているもの」であり、また、「ビジョンを描いている時間はないこと」が多いからです。
  
 しかし、マネジャーやリーダーの本来業務は、ビジョンを描き出すこと。たとえば、5年先・10年先の未来をタイムマシンから戻ってきたひとが語り出すように、未来を語り、ひとを巻き込み、組織を動かすことです。そのためには、「意志」をもって時間を確保することが必要ですが、いかがでしょうか?
  
  ・
  ・
  ・
  
 今年最初のブログは、タイムマネジメントに関することです。
 僕はCEOではありませんが、年々、多忙になっているひとりでもあります。
  
 今年こそは、時間を確保しましょう。
 そのためには「意志」をもつことです。
  
 やらないことは、徹底的にやらない
 やるべきことは、徹底的にやる
  
 これに尽きるのではないか、と思います。
  
 皆さんは、意志をもって自分の時間を確保していますか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
       

    
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.25 10:57/ Jun

「最近の学生は、昔からみると、変わってきたところはありますか?」という問いが苦手な理由!?

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?