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2019.11.15 06:57/ Jun

ことを為しとげるには「権力」は必要か?:あなたの組織には「泥」をすすり過ぎて「暗黒面」に堕ちたリーダーはいませんか?

「ことを為しとげるには権力は必要だ」
   
現在、世の中に流通している「リーダーシップ理論」は「綺麗なリーダーシップ論」に寄りすぎているのではないだろうか?
   
これからは「地に足がついた、泥をすするリーダーシップ論」があってもよいのではないだろうか?
  
  ・
  ・
  ・
  
 せんだっての大学院・中原ゼミでは、こんな議論で盛り上がりました(笑)。
  
 博士課程の大学院生の辻さんが「The Oxford handbook leadership and organization」の中にある1章「リーダーシップと政治スキル」の章(Treadway, D. C. 2014)を報告してくださり(ありがとう!)、それに対して、議論がなされたのです。
  
 
   
 ここでいう、リーダーが用いる「政治的スキル」とは
  
1.仕事で他者を積極的に理解し、
2.知識をつかって他者に影響を与え、
3.ひとや組織の目標のための行動をとること
    
 という意味です。
(政治的スキルが、リーダーシップの定義とトートロジカルにも感じてしまいますが・・・その話題はまた別のところで)
    
 政治的スキルを支えるのは
    
「誠実さ」と「抜け目なさ」
「広範な社会的ネットワーキング」と「他者に影響力を与える資質」
   
 です。
  
 これらを駆使して、リーダーは、政治をおこない、ひとや組織を動かします。
  
  ▼
     
 ところで、一般には「政治」と申しますと、どこか「汚いもの」「望ましくないもの」というイメージがございます。
   
 実際、リーダーがおこなう「政治的行動」には、立場の異なる2つの考え方があります。
  
 代表的なのは、「政治」を「組織的な権力構造」にとってかわられる非正統的なもの」とみなすミンツバーグ教授流(カナダ・マギル大学)の考え方。こちらは、組織内の政治を、どちらかというと、ネガティブに描き出します。
  
 一方、もうひとつは、「組織政治は悪いものではなく、むしろ、組織の成功やキャリアマネジメントにとって必要」なものと考えるフェッファー教授(米国スタンフォード大学)の考え方です。こちらは組織内政治を、どちらかというと、プラスに描き出します。
    
 冒頭で
   
「ことを為しとげるには権力は必要だ」
  
 という言葉を紹介しましたが、これは、後者のフェッファー先生が、よく使う言葉です。僕としては、どちらかというと、こちらの立場に共感します。
    
 そのうえで、
    
・自分らしさを活かして
・透明性のある意志決定をおこない
・倫理を大切にしつつ
・ひとを魅了していくこと
  
 を「よし」とする近年のリーダーシップ理論に、「そうなりゃいいな」と思いつつも、どこか「モヤモヤしてしまうもの」を感じてしまうことも吐露しないわけにはいきません。
   
 それ「だけ」で、組織は動くのか、成果が出せるのか?、と。
   
 これを仮に「綺麗なリーダーシップ論」とみなすのなら、そうしたものを「理想型」として追求するのはよいと思います。非常にメンバーに恵まれ、メンバーが専門性高い場合など、こうしたリーダーシップで動く組織も存在します。
   
 一方で、組織は、綺麗なものだけで動くとは限らない。組織内の「権力」や「政治」といかに向き合うか、という「地に足がついた、泥をすするリーダーシップ論」も必要なのではないかと思ってしまいます。
  
 もちろん、この答えは二者択一なのではなく、「どういう組織を率いて、どういう課題解決を行い、どの程度のスピードで答えをださなければならないか」に依存するのでしょう。
  
 また泥ばかりすすっていては、おそらく、皆さんの周囲のリーダーたちは、スターウォーズ風にいうと「暗黒面」に堕ちちゃうかもしれませんね。解毒も必要です。
   
 皆さんはいかが思われますか?
   
 あなたの組織のリーダーたちは、組織内政治や権力とどう向き合っていますか?

 あなたの組織のリーダーたちは、泥をすすい過ぎて、暗黒面に堕ちていませんか?
  
 そして人生はつづく
  
 ーーー
    

  
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