2019.10.4 07:17/ Jun
新学期がはじまっています。学部に加え、大学院の授業も本格化してきました。
今日はそのご紹介を!
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今学期の大学院は「人材開発・組織開発特論2」という授業と、院ゼミが僕の主担当です。
「人材開発・組織開発特論2」は、学生が5つのチームに分かれて、自らクライアント組織を探し、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を行い、成果をまとめる授業です。
(東浩司さん撮影:感謝!)
自分が人材開発・組織開発・リーダーシップ開発のコンサルタントに「なったつもり」で、いかにクライアントと関係を結び、助けになる助け(Helpful help)を現場にもたらし、その成果を測定するか?
この一連の活動を、実際に「やってみて」、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発がなんたるかを学びます。
かつてアリストテレスは、こう言ったといいます。
あることを行うためには、それを前もって学んでいなければならない。しかし、それが、学ばれるのは実際に行われることによってである。
ひとは建築することによって大工となり、琴を弾ずることによって琴弾きとなる
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』1103a32-33)
人材開発は、人材開発をやってみて、学ぶほかはありません。
「人材開発には、OJTとOFF-JTと自己啓発があってですね」なんていう、経営学の教科書によくある知識を座学で学んでも、1ミリも、人材開発ができるようにはならないのです。
もちろん、
組織開発は、組織開発をやってみて、学ぶほかはありません。
そして
リーダーシップ開発は、リーダーシップ開発をやってみて、学ぶほかはないのです。
この授業では、そうした「学びの機会」をささやかですが、提供できたらなと思っております。
大学院の授業です。
これを通して、プロフェッショナルを目指して欲しい!
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院ゼミは、各人の研究報告をいただいたあと、論文をみなでよんでいます。昨日読んだのは、「The Oxford Handbook leadership and organization」の「Chapter 34, Leading for Creativity: People, Products, and Systems」です。こちらは、創造性とリーダーシップの研究で名高いMunfordさんらの論文でした(新村さん・ご報告)。
もっとも興味深かったのは、
「創造的な組織」をリードしていくのは難しい
というアタリマエの指摘です。
たとえば、仕事の評価ひとつとっても、それは難問です。実際、論文の中には、こんな言葉がありました。非常に含蓄のある言葉です。
「創造的な仕事」を「評価」することは難しい。
「創造的な仕事」を「評価」すること、そのこと自体が「創造的」である。
(Munford et al 2014)
また、知識社会、高度情報化社会においては、
管理職のリーダーシップの源泉が「専門知識」が重要になる
という指摘も、そのとおりだと思います。もちろん、リーダーシップ行動やマネジメント行動も重要。それに加えて、自分の専門知識をいかに高めて、環境を察知できるかどうかが、フォロワーがついてくるかどうかの分かれ道になる。
誤解を避けるために申し上げますが、「専門知識」だけでひとはついてこない。頭はいいけれど、人がついてこない残念なリーダーは、世間にあふれています。
しかしリーダーシップ行動やマネジメント行動がいくら完璧にできても、それだけでは不足になる。とりわけ、創造性を行使しなければならない組織では、「専門知識」がなければ、ひとはついてこない。
リーダーは、リーダーシップ行動もさることながら、自らの知識領域の「専門知識」を常に高めなければならないのです。
なぜか?
それは
創造的な人々は、専門知識のあるリーダーの下で働くことを好む
からです。
つまり、
知識社会においては、専門知識のない「アッポちゃんなリーダー」のもとで、誰も働きたいとは思わない。専門知識を高めていないリーダーは、創造性のある組織をリードできない
のです。
この問題は、
なぜリーダーや管理者は学び続けなければならないのか?
という問題に深くリンクしているような気がします。
また深く考えていきたい問題です。
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学部の中原ゼミは「いろんな壁にぶちあたりながら、頑張っています」
2年生が現在取り組んでいるのは「新入生の採用」と「金融庁様ときらぼし銀行様の産官学コラボプロジェクト」です。
金融庁 × きらぼし銀行 × 立教経営中原ゼミ2年生の「産官学共同研究プロジェクト」がはじまりました!:心ゆくまで知的に暴れろ!
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/10662
「新入生の採用」では、神戸大学の服部さんのご著書「採用学」などを購読し、企業の行っている採用プロセスとほぼ同じようなかたちで、自分たちのゼミの採用プロセスを組み立てています。
採用コンセプトを決め、人材像を決め、採用基準を定義し、評価手法を定義し、面接の練習を行い、通知を行うまでをやりきろうとしているのです。
採用をしっかりやりきれば、採用する側の気持ちにもなれます。採用される側として留意しなければならないこともわかる。採用をプロジェクトとしてやりきることで、人材マネジメントにおける「採用プロセス」を体感して欲しい、というのが、その背後にある思いです。
金融庁様ときらぼし銀行様のコラボプロジェクトは、三年生にも支援をもらいながら、なんとかフィードバックの機会まで、プロジェクトを仕上げようとしています。
こう書いてしまうと、スムーズに進んでいるようにも見えますが、まだまだ課題だらけです。中原ゼミらしく
七転八倒、阿鼻叫喚
になりながら、頑張っているようです。
中原ゼミ2期公式インスタ
https://www.instagram.com/nakahara.seminar.second/?hl=ja
3年生は、ミニ卒業論文と称して、1月末までに「1万字」のミニ論文を提出したり、2年生のサポートを行ったり、はたまた入ってくる1年生の育成を「人材開発」してみたりしようとしているようです。
はっきりいって、元気です。
大丈夫。
終わらない旅はない。
もうサイコロは振られている。
あとは完走して欲しいものです。
そういえば、中原ゼミの皆さんから、お誕生日ケーキをいただきました!ありがとうございました!
FacebookやTwitterなどなどで、皆様からもたくさんのお祝いメッセージをいただきました!心より感謝です。
我が人生で三本の指にはいるくらい「忙しい毎日」ですが、楽しい毎日です。
そして人生はつづく
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9月1日・日本経済新聞の中原の記事「長時間労働の構造にメス」のなかで拙著「残業学」が紹介されました。おかげさまで重版出来6刷、さらに多くの皆様にお読みいただいております。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
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新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・ラーニングエージェンシー 旧:トーマツイノベーション著)が重版出来!1万部突破です!AMAZONカテゴリー1位「企業革新」「女性と仕事」を記録しました!。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
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新刊「組織開発の探究」発売中、重版4刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
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