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2019.8.1 06:48/ Jun

組織変革のときに必ず生まれる「抵抗勢力」は「根回し」か「排除」か「ごちそう」か?

 組織変革において「変革への抵抗」はつきものです。
  
 組織にとって「大切なもの」を「変えよう」とするから「抵抗」が生まれる。
 組織にとって「大切ではないもの」を変えようとしても、誰一人として「抵抗」しません。
  
 なぜなら「変えようとしているもの」がさして「大切ではない」からです。
  
 ということは
  
「抵抗勢力のいない組織変革」は存在しません
  
 もし「抵抗勢力がまったくいない組織変革」が存在しうるのだとしたら、その組織変革は「組織変革」ではなかった、ということになります。さしずめ「組織変革」ではなく「組織改善」くらいだった、ということなのでしょう。
  
 ここで「変革への抵抗勢力」に対して、リーダーの前には、いくつかの選択肢が用意されています。
  
 あなたがリーダーだとしたら、
  
 1.抵抗勢力を生み出さないように「根回し」を行おうとするのか?
  
 2.抵抗勢力を「排除するべきもの」ととらえて、いかに、それを排除するかという視点にたつか?
  
 いや、むしろ
  
 3.抵抗勢力が生まれるのは「あって当然」と考え、それをポジティブにとらえなおすのか?
  
 皆さんなら、どの立ち位置にたちますか?
 いや、そのすべてですか?
  
  ▼
  
 伝統的には組織変革論の中心は1ないしは2ということになります。
 すなわち「根回し=組織政治的合意の形成」か、ないしは「抵抗勢力の排除」
 これが古典的な組織変革論の考え方です。
  
 しかし、個人的に興味深かったのは、3の立ち位置です。
  
 すこしポジティブすぎるきらいもあるかもしれませんが、先日、「抵抗勢力」なんて生まれてあたりまえで、むしろ、それを「好機」ととらえるくらいがちょうどいいという達観した考えに、出会いました。先日読んだ文献には、こんなことが書いてありました(Morris and Raben 1995)。なるほどなぁ、と思います。
  
 その心を端的に表現してしまえば、
  
 「組織変革への抵抗は、ごちそうである」
  
 ということですね。
   
 組織変革への抵抗によって、むしろ強固な変革を創り出していけるのではないか、という視点です。
   
 曰く、変革への抵抗には下記の5つのポジティブなエフェクトが存在します。
    
1.変革への抵抗によって、変革の目的が問い直されて、よりクリアになる
    
2.変革への抵抗は、組織内の会話を活性化し、変化に対する方向性を「Active」な状況にする
  
3.変革の抵抗があることによって、組織変革のレベルがあがり、施策の実装のクオリティがあがる
  
4.変革の抵抗によって、組織メンバーが「本音で何を思っているのか」が顕在化される
  
5.変革の抵抗を乗り越えることで、「新たな強固な組織へのコミットメント」がつくりだされる
  
 いかがでしょうか。
  
 変革への抵抗・・・シンドイけどね。
  
 でも、言われてみれば、変革への抵抗には、たしかに、そういうポジティブな側面もあるような気がしてきたのは気のせいでしょうか。ポジティブすぎ?
    
  ▼
  
 今日は組織変革論の中から「変革への抵抗」をいかにとらえるか、ということを書きました。
 皆さんなら、どのように考えますか?
  
 組織変革において「抵抗勢力」は「根回し」か「排除」か「ごちそう」か?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
   
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昨日は、「立教キャリアカンファレンス2019」という立教大学キャリアセンターのイベントに登壇させていただきました。300名以上の人事担当者の方々にお越しいただけたそうです!本当にありがとうございます。
   
個人的には立教大学が掲げる「キャリアの立教」というスローガンは、立教っぽくて好きです。身内ながら(!?)心より応援したいところです。
   
「就職の立教」でないところが、「立教っぽい」(笑)。でも、それは「茨の道」でもあります。人生100年時代、「就職」すりゃいいってわけじゃない。就職しても、学ぶことや変化することから遠ざからない。学びつつ、働き、豊かな仕事人生を全うする学生を育成する、ということが、「キャリアの立教」にこめられた願いなのかな、と思いました。
   
ぜひ、これをきっかけにして、学生ひとりひとりが、「自分の仕事人生をまっとうしようとするキャリア意識」を高めていただければと思いました。微力ながら貢献させていただきます。トヨタ自動車の採用をご担当なさっている唐澤さんのお話も大変興味深いものでした。ご出席いただいた300名の方々、ご企画をなさったキャリアセンターの林良知さん、佐々木宏キャリアセンター長、山口和範学部長におかれましては、貴重な機会をいただきありがとうございました。
   

   
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