2019.7.24 06:32/ Jun
士業は「危機」か「チャンス」なのか?
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せんだって、中小企業の経営を、経営者とともにサポートしつづけている「志のある社会保険労務士」のみなさんの勉強会にお邪魔させていただきました。
北は北海道、南は沖縄?からお集まりいただいた140名の社労士さんの前で、当初は「残業学」のお話ーすなわち、「長時間労働が生まれるメカニズム」と「長時間労働をいかに抑制するのか」というお話をさせていただくことになっていました。
講演は2時間の長丁場でしたが、皆さんのご尽力もあり、やっている側としては「あっという間」に終えたような気がいたします。本当にありがとうございました。
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講演は、当初、長時間労働に関すること「だけ」をお話しさせていただこうと思っていました。ただ・・・不肖・中原、講演がはじまっても、「最新のもの」や「ライブ感のあるもの」を、学習者のみなさまに、お届けすることから諦めがつきません。
というわけで、前代未聞、講演途中で、方針を変えました。
講演をしているなかで、皆さんの話し合いやご発言をうかがいながら、僕は、受講生の方々にとって、より本質的なことをお話しするべきだ、と勝手に考えて(すみません・・・前もって分かっていれば、なおよいのですが、その場の空気感で感じてしまうのです)、途中のスライドをカットして、別のスライドを入れ込んでお話しました。
(僕の講演は、途中でグループワークが入るので、その合間に内容を変えることができるのです)
新たに僕が追加した内容とは、
組織を「変える」ために、
組織の外部の人々は、クライアントと
いかなる関係をとりむすび、
いかなるかたちで、組織のデータを取得し、
どのように組織を巻き込んでいくのか?
また、
組織の外部の支援者とクライアントは、
組織を変えていくなかで生まれてくる
「変革への抵抗」といかにつきあっていくのか
ということです。
これはHRD(人材開発)だろうが、OD(組織開発)だろうが、組織の外部の人々が組織の内部の人々と、何かコトを組織内で為そうとすれば、もっとも基礎的な内容になります。が、なかなか、それが表だって語られることは希です。で、敢えて、こうした内容を「厚め」にお話しすることにいたしました(十分ではございません・・・何しろ・・・授業でいえば2コマ分の内容です)。
こうした判断をした理由は、おそらくは、社会保険労務士さん140名の方々の熱気を目の当たりにして、社労士の皆さんの「仕事の独自な立ち位置」であり「競争優位の源泉」に、僕がビビビときたのだと思います。
社会保険労務士さんたちの「独自な立ち位置」であり「競争優位の源泉」だと僕が思うのは、
「組織の外部」にありながら、しかし「経営者のパートナー」と言う意味で「組織の圧倒的外部」ではなく、しかも「組織の圧倒的な内部」でもない
という点です。
社労士の皆さんの仕事の立ち位置ー「組織の内部」でもなければ「組織の外部」でもない、この「周辺性(マージナルであること)」こそが、非常に興味深く思いました。
組織の外部からでも、「内部のひと」としっかりパートナーシップが結べれば、「組織内部の課題解決」を行うことができる。しかも、「組織の圧倒的な内部」でもないので、組織内のしがらみや政治からは逃れ、組織内部のひとが陥りがちな視野狭窄には陥らない。
社労士の皆さんが通常業務をこえて、さらに新たな仕事にのりだし、組織のなかでHRDを支援していくにしても、ODを支援して行くにしても、この「周辺性」をいかに活かすかが、ポイントであるような気がいたします。勝手ながら・・・。
当日は、こんな話を突然させていただきましたが、わたしの真意が、もし伝わっていれば、非常に嬉しいことです。ありがとうございました。
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一般には、
士業は「危機」だと言われます。
世の中では・・・
世間の常識では・・・
もちろん、僕は、社会保険労務士さんの仕事をよく知りません。よって、士業のなかでも、社会保険労務士さんにおとずれる危機の内容は、僕にはわかりません。
おそらくは、各種の業務がITに代替されたり、また、経営者自身が行うことができるようになってきつつあること。また定型業務の多くが、AIなどに代替されはじめていることから、そうした言説が、まことしやかに語られているのでしょう。
しかし、そういう紋切り型の言説に対して、へそまがりな僕は、こうも思います。
それは、
「士業」を「危機たらしめる」のは、そういう「外的危機」ではなく、「士業は危機」であるという言説にのっかりつつも「何もしないこと」ではないのか?
つまり、
士業を危機にしているのは「外的危機」ではなく「内的危機」ではないのか?
ということです。
危機は、たしかに、外的に押し寄せているかもしれません。しかし、本当に「危機を危機たらしめている」のは、「士業は危機である」という言説を「鵜呑み」にしてしまうことと、そうであっても、「何もしないこと」です。これを僕は「内的危機」と呼びます。
(ちなみに、このことは、大学で働く人々にとっても同じことだと僕は思います・・・圧倒的な人口減少を前に、どのように経営を行うのか、を中長期の目線で考えておかなければ、外的危機が実現すると思います。入試制度が変わる、行政の方針が変わったおかげで、一時的に受験生が増えたことで安住していては、おそらく、外的危機が実現します・・・自爆ちゅどーん)
また、どこまでも、へそまがりな僕は、ついつい、世の中の風潮がひとつのことを信じ出すと、別のことを言いたくなります。
それは
士業は「危機」なのではなく「チャンス」なのではないか?
ということです。
士業がそれぞれにもっている「競争優位」を活かし、新たな「立ち位置」と「役割」をつくりだしていければ、これは「新たな高付加価値な仕事」をつくりだしていく「チャンス」なのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
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今回の講演は、慶應丸の内シティキャンパスでの僕の授業「ラーニングイノベーション論」の卒業生であり、社労士の山崎政枝さん、薗田直子さん、また志ある社会保険労務士の小山邦彦さん、矢萩大輔さんのご尽力のもと実現いたしました。この場を借りて御礼を申し上げます。中学時代に通っていた塾で、ともに学んだ社労士の稲垣準さんに、おそらく30年ぶり?20年ぶりくらいにお逢いできたことも、非常に嬉しいことでした。人生、あっという間だねぇ・・・。学び多き人生を!
士業の方々からは、最近、様々なお問い合わせをいただいておりますが、非常に多忙を極めており、これにお答えすることは難しい状況です。志ある方々が、ある程度の数、東京にいらっしゃり、またかなり前からお問い合わせをいただければ、お答えすることも不可能ではないのですが、それとて、難しい状況です。
しかし・・・挑戦する方々を、僕は、心の底から応援しております。
そして人生はつづく
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最近、なぜか???、僕が「自分の半生」を語る取材が、たてつづけにございました。なぜでしょう。その第一弾です。CAMP(若手キャリア支援)のプロジェクトを実施なさっている佐藤裕さん(パーソル)にお声がけいただきました。
下記はお恥ずかしながら・・・「我が半生の記録」です(笑)。「なぜ東京の大学に進学したのか?」「なぜ今の研究を志したのか?」など、人生を振り返ってみました(笑)。ご笑覧くださいませ!
おもいおこせば、我が半生にも、いろいろな出来事がありました。
でも、1年1秒です。
北海道をでて、もう25秒。
あっという間ですね。
廃人同然だった東大生が“学ぶこと”の面白さに魅せられた。道を踏み外して生きていく、唯一無二の我流人生。
http://camp-program.com/read/otonazukan/723.html?fbclid=IwAR2qUXldm7LBWVYQILf6VwB_lXPB-JouGcsytHgk8Z9bUPVLsj_2fcZzUAs
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新刊「残業学」重版出来、6刷決定です!(心より感謝です)。AMAZONの各カテゴリーで1位を記録しました(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
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新刊「組織開発の探究」発売中、重版4刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
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