NAKAHARA-LAB.net

2019.7.19 06:21/ Jun

「フィードバックとは、先輩から怒られることでしょ?」という「エセ・フィードバック」の蔓延にご注意を!?

※7月22日(月曜日)は所用のため、ブログの更新をお休みさせていただきます!明日またお逢いしましょう!
   
「先生、うちのバイト先でも、フィードバックをするんですよ。でも、うちのバイト先は、おかしいんです。フィードバックって、「休憩時間に、先輩が後輩を怒ること」だと思っているんです。先輩から怒られて、すみません、以後気をつけます、と反省することがフィードバックだと思っています。それがイヤで、バイト先から、どんどん人が辞めていく・・・いったい、どうしたらいいですかね」
   
  ・
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  ・
  
 昨日、学生から、こんな相談を持ちかけられました。
 ふむ、なるほど。
 さて、どうしようねぇ・・・。
 一緒に考えよう。
    
  ▼
  
 本来、フィードバック(feedback)とは
  
 1.よいことも、悪いこともふくめて、相手の行動がどのように見えるかを、相手に通知すること
 2.相手の行動の立て直しをうながし、目標と現状のギャップを埋めるよう働きかけること
  
 のことをいいます。
  
 狭義には1だけをフィードバックということもありますが、結局、「効果性の高いフィードバック」とは、2のプロセスも駆動しなければなりません(目標設定や振り返りなど)。よって、僕は、フィードバックは1と2のプロセスすべてを包含するものとして捕らえることをおすすめしています。
  
 フィードバックという言葉は、少なくとも、僕が、人材開発の領域にかかわりはじめた20年弱前は、あまり使われることばではありませんでした。しかし、近年では、この言葉が注目され、人口に膾炙するようになっています。
  
 しかし、一方で問題も生じています。
 一般に「量的普及」は「質的低下」をうながすものです。
 巷には、冒頭に見るように、フィードバックとはいえない「エセ・フィードバック」が、ここにも、あそこにも、存在しているようです。
 
 冒頭見ましたように、
  
 フィードバック=休憩時間に先輩から怒られること
  
 というのは、甚だしい誤解ですね。
  
 しかも「休憩時間に」というところが、また香ばしい(泣)。
  
 学生とは、その後、まず、アルバイト先のそのような現状を変えるために何ができるのかを話し合いました。
「フィードバックの現状」を把握することと、現在のフィードバックのあり方「離職につながること」を実証するような研究計画をつくるようにアドバイスをしました。あと休憩時間もね、これは、それ以前の問題です。
    
 このように、中原のゼミ、授業では、人材開発や組織開発の基礎概念を学んだ後、実際に自分のケース(自分のかかわりたい組織)を決めて、様々な調査を行い、その現状を変えることを試みることを行っています。さて、どうなりますことやら。
  
 皆さんの会社では、いかがでしょうか?
 フィードバックという言葉は、現場では、どのように受け止められていますか?
 あなたの会社のひとびとにとって、フィードバックとは何を意味しますか?
  
 フィードバック=怒られること?
 フィードバック=期末に評価をつきつけられること?
   
 あなたの会社には、エセ・フィードバックが蔓延していませんか?
 えっ、誰も、フィードバックという言葉を知らない?
 おあとがよろしいようで
   
 今週もお疲れさまでした! よき週末を!
 そして人生はつづく
    
  ーーー
    
フィードバック入門等で御一緒させていただいているPHPさんで、登壇の機会をいただきました。「部下育成のスキルを伸ばす」というテーマで、1on1やフィードバックのやり方、効果について講演させていただきます。9月10日・東京開催です。どうぞお越しいただけますと幸いです!
  

9月10日・東京開催「部下育成のスキルを伸ばすー1on1とフィードバック」
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
  
 ーーー
   
新刊「実践!フィードバック」が重版2刷決定、前書「フィードバック入門」は3万部突破です。耳の痛いことをいかに部下に通知し、そこから立て直しをはかることができるか。全国各所の管理職研修で用いられて居明日。はじめてリーダーになる方、管理職になる方におすすめの2冊です。どうぞご笑覧くださいませ!
    
 
  
DVD『フィードバック入門』
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
   
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