2019.5.31 06:47/ Jun
ロールプレイングゲームでは、武器をもって、旅に出なければ、スライムにだってやられてしまいます。
たとえば、こんな風に(泣)。スライム1匹くらいなら、素手でも何とかなるかもしれませんが、大勢に囲まれてしまっては、スライムごときに「フルボッコ」です。
同じように(笑?)、研究(知的探究)という「冒険」にとって必要なのは「研究方法論」という「武器」です。
ここで研究方法論とは、端的に申し上げれば、
1.どのようなものを研究対象として
2.どのような手続きと方法で、それに迫り
3.どのように結果をアウトプットするのか
に関する「研究のしきたり」のことです。
「しきたり」とは書きましたが、堅苦しいことではありません。むしろ、知的探究を志すひとびとを「自由にする」研究ために「方法論」はある。
知的探究は「冒険」です。そして冒険に「悩み」はつきない。
しかし、悩みのなかには「重要なもの」から「さして重要ではないもの」までいろいろあります。研究方法論は、知的探究を志す人々を自由にします。そして、さして「重要ではないこと」で、いちいちクヨクヨ悩まなくてもいいように、それは「決まっている」のです。
実際、方法論を学び、体得しまうことで、より自由に、フィールドで知的探究を行うことができます。
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しかし、この研究方法論、なかなか学生に習得させるのは、困難です。
大学院生ならばともかく、学部生となると、なかなか。
そして、このことが、僕が、この1年ー2年、ひそかにモンモンとしていた課題でした。
たとえば卑近な例でいうと、経営学部の自分のゼミの学部生に、どのような本をすすめ、研究方法論を学んでもらおうか、と考えていたのです。
学部生に「研究方法論」を教えるときには、まずは「面白い」と思ってもらわなくてはなりません。
手続きやら、しきたり、やらの前に、まず「研究するってのは、自由だし、面白いんだ」と思ってもらわなくてはならない。
数ある名著は思いつくのですが、今のところ、僕が一番いいな、と思っているのは、下記の「最強の社会調査入門」(前田拓也、秋谷直矩、朴沙羅、木下衆編著、ナカニシヤ)です。
この本は、若い俊英の研究者たちが、まずは「動いてみる」ことを主張しー「聞いてみる」「やってみる」「行ってみる」」ことから始まる社会調査を、彼らの失敗体験も含めて、伝えています。これが面白い。目次もなかなかロックしていて、興味がひかれますね。ホステスをやってみる、刑務所でブルーになる。どういうことなんだろう、と、思わず知りたくなります。
第Ⅰ部 聞いてみる
1 昔の(盛ってる)話を聞きにいく――――――――朴 沙羅
よく知っている人の体験談を調査するときは
2 仲間内の「あるある」を聞きにいく―――――――矢吹康夫
個人的な経験から社会調査を始める方法
3 私のインタビュー戦略―――――――デブナール・ミロシュ
現在の生活を理解するインタビュー調査
4 キーパーソンを見つける――――――――――――鶴田幸恵
どうやって雪だるまを転がすか
第Ⅱ部 やってみる
5 「わたし」を書く―――――――――――――――前田拓也
障害者の介助を「やってみる」
6 「ホステス」をやってみた――――――――――松田さおり
コウモリ的フィールドワーカーのススメ
7 <失敗>にまなぶ、<失敗>をまなぶ――――――――有本尚央
調査前日、眠れない夜のために
8 暴走族のパシリになる―――――――――――――打越正行
「分厚い記述」から「隙のある調査者による記述」へ
第Ⅲ部 行ってみる
9 フィールドノートをとる――――――――――――木下 衆
記録すること、省略すること
10 学校の中の調査者―――――――――――――――團 康晃
問い合わせから学校の中ですごすまで
11 好きなもの研究の方法―――――――――――――東 園子
あるいは問いの立て方、磨き方
12 刑務所で「ブルー」になる―――――――――――平井秀幸
「不自由」なフィールドワークは「不可能」ではない
13 仕事場のやり取りを見る――――――――――――秋谷直矩
「いつもこんなかんじでやっている」と「いつもと違う」
第Ⅳ部 読んでみる
14 「ほとんど全部」を読む――――――――――――牧野智和
メディア資料を「ちゃんと」選び、分析する
15 判決文を「読む」―――――――――――――――小宮友根
「素人でいる」ことから始める社会調査
16 読む経験を「読む」―――――――――――――酒井信一郎
社会学者の自明性を疑う調査の方法
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この本で、興味をもってもらったら、そのつぎは、しっかりとした研究方法論を「選択」し、学んでもらうことです。研究方法論には、たくさんの名著がありますが、最近の学部生の「懐事情」を考えると、一冊ですべてが収まっているハンディーなものがいい。しかも、経営学の研究が事例になっていると、さらによい。
そうした本を、僕はずっと探していましたが、ようやく見つけました。須田敏子先生がかかれた「マネジメント研究への招待」です。こちらが素晴らしいです。調査やフィールドワークはもちろんのこと、実験とか、聞き取りまで、すべてが一冊で網羅されています。
おまけに、認識論、存在論など、研究方法論を規定する哲学などについても、紙幅がさかれています。大学院生などの指導にもよいような気がいたしました。目次は下記の通りです。
第1部 研究方法論への招待
第1章 マネジメント研究と研究方法論の重要性
第2章 存在論・認識論・研究アプローチ
第3章 マネジメント研究:研究方法論の選択
第2部 さまざまな研究方法
第4章 インタビュー
第5章 実験法と準実験法
第6章 サーベイリサーチ
第7章 エスノグラフィー
第8章 ケーススタディ1:研究方法論の再考
第9章 ケーススタディ2:ケースの選択基準と研究事例
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今日は研究方法論について書きました。
中原ゼミでは、3年生が、そろそろミニ卒論(3年生での卒論ショート版)の研究計画をねりはじめ、何を研究するかで、議論をはじめています。
ぜひ、武器をもって、自由になって欲しい
自由に、世の中というフィールドを探究して欲しい
指導教員としては、愛すべき学生たちを、そういう思いをもって、見つめています。
そのためにはね・・・本、読もうね(笑)。
図書館で借りてもいいからね(笑)
そろそろ読まなきゃね(笑)
そして人生はつづく
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