2019.5.29 07:05/ Jun
最近、様々な組織をおとずれ、よくうかがう話に、「ひとが採れないデフレスパイラル」というものがございます。このデフレスパイラルは、「ひとが採れない状況を放置しておくと、さらに、ひとが採れなくなる」というものです。
ふだんはあまり意識されない、この「デフレスパイラル」が認識され初めて来るのは、組織が「働き方改革」をするようなときです。
たとえば、組織が、長時間労働是正や、フレキシブルな就業、マネジメントの見直しなど「多様な働き方を試みよう」とするとき、現場では、様々なハレーションが生まれます。
そういうときに、よく出てくるお話が、
「現場では、ひとが採用できなくて、ただでさえ、仕事が回らないのに、多様な働き方なんて、どうでもいい。長時間労働の是正なんて、やってる場合じゃない。そんなことより、仕事だ、仕事!」
という現場の思いです。
この気持ちは、痛いほど、よくわかります。
本当に、最近は、ひとが採用できませんので・・・。
本当に、「回らない現場」は増えているような気がしますし、そのことに悩みをもたれている管理者の方のお気持ちも、わかります。本当にお疲れさまです。
▼
ところで、こうした認識は、いったん「中長期の視点」にたつと、まったく「違う見え方」にもなります。
ここではじめて、冒頭に述べた「デフレスパイラル」が浮かび上がってくるのです。
通常、現場では、
「ひとが採用できないので、仕事が回らないから、働き方改革をしてる場合じゃない」
と認識されているのですが、いったん「中長期の視点」にたつと、
「ひとが採用できず、このまま仕事が回らないことを、そのまま放置していくと、さらにひとが採用できなくなり、さらにさらに仕事が回らなくなる」
ことが予想されるからです。
これが「ひとが採れないデフレスパイラル」です。
より具体的には、「ひとが採れないデフレスパイラル」は下記のプロセスをとるのではないでしょうか?
「ひとがとれない」
↓
「仕事が回らない」
↓
「職場の一部のメンバーで仕事を肩代わりする」
「管理者が仕事を、ひきとる」
↓
「メンバーや管理職が疲弊し始める」
↓
「そんな職場や仕事のやり方を見ると、誰も、入りたくなくなる」
「経験あるメンバーが愛想を尽かし、離職する」
↓
「ひとは、さらに採用できなくなる」
「ひとが、さらに減る」
↓
「仕事が、さらに回らなくなる」
↓
「残されたメンバーで、仕事をさらに肩代わりする」
「管理者が仕事を、さらに丸かぶりする」
↓
「メンバーや管理職が、さらにさらに疲弊し始める」
↓
「採用力がさらにさらに落ちて、ひとが採用できない」
「残されたメンバーも愛想を尽かして、さらにさらに離職が激しくなる」
・
・
・
(以下、落ちるところまで、落ちていくデフレスパイラル)
くわばらくわばら。
このデフレスパイラルは、事業継続が困難になるまで採用力が落ち、離職が増え、人が減るまで続きます。おそらくそのときには、仕事を肩代わりしていたメンバーや管理職も、疲弊し続けているでしょう。
大切なことは、どこかで、この「負の連鎖」を断ち切る、ということでしょう。
「一番地道な手段」は「働きやすい職場をつくること」「柔軟に働ける仕組みをつくること」に尽きると思うのですが、いかがでしょうか。
ま、たいていの場合、そんなことはわかっているのですけれどもね・・・。
なかなかね・・・。
▼
今日は「ひとが採れないデフレスパイラル」についてかきました。このデフレスパイラル、ある程度進行すると、本当に「後戻り」ができず、落ちていくところまで落ちていくほか選択肢がなくなっていきます。
あなたの職場は「ひとが採れないデフレスパイラル」に陥っていませんか?
そして人生はつづく
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