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2019.2.18 06:43/ Jun

あなたにとって「詩」とは何ですか?:「吸って、吸って、吸って」いた子ども時代の黒歴史!?

 皆さんにとって「詩」とは何でしたか?
   
  ・
  ・
  ・
  
 まことに残念なことに、子ども時代の僕にとって「詩」とは「やっかいな試験問題」であり「感情をこめて読まなければならないもの」でしか、ありませんでした。
  
「説明文」「小説」「随筆」・・・教科「国語」には様々な教育の素材があるけれど、子ども時代の僕にとって、もっともエキセントリックだったのが「詩」です。国語で「詩」が扱われたときなどは、どう向き合ってよいのか、残念ながら、僕には、なかなか掴めませんでした。
 
 詩にまつわる「試験問題」と言われると、これまた途方に暮れてしまいます。ロジックよりも感情が重視されている気がして、「やっかいな試験問題」だな、という印象をもっていました。
  
 加えて、詩の授業では「朗読」が求められました。しかし「なぜ朗読するのか」は、僕にはわかりませんでした。唯一わかったことといえば、説明文や小説を読むときよりも「感情をこめて読んだ方が、褒められるんだなぁ」ということ(笑)。気がついたら、いつもよりも、ゆっくり詩を読んでいる自分がいました。
  
 かくして、僕は詩が好きではありませんでした。でも、結局、今から考えてみれば、
    
「僕は詩に出会えていなかった」
    
 のだと思います。
  
 そして、
  
 詩とは何か?
 なぜ詩を学ぶのか?
 なぜ詩を読むのか?
 そして、なぜ詩をつくるのか?
  
 こういう最も基礎的で、最も大事なことを、僕は腹から理解はできていなかった。いやー、まことにかたじけない。汗顔の至りです。
   
 ですので、まことに残念なことに、僕にとっては、詩とは「やっかいな試験問題」であり「感情をこめて読まなければならないもの」であったということになるのです。
  
  ▼
  
 ふとしたことから若松英輔著「別冊NHK100分de名著 読書の学校 若松英輔 特別授業『自分の感受性くらい』」(NHK出版)を手に取りました。この本は、作家であり東京工業大学教授の若松英輔さんが、日本を代表する詩人である「茨木のり子さん」の詩を用いて、中学生に向けて行った特別授業の様子を、紙上で再現したものです。
  

  
 この書籍、薄い書籍(ページ数が薄いという意味です)ながら、本当にわかりやすく、詩にまつわる、もっとも大切なことを述べておられました。
  
 それは・・・
  
 詩とは何か?
 なぜ詩を学ぶのか?
 なぜ詩を読むのか?
 そして、なぜ、わたしたちは、詩をつくるのか?
  
 です。
  
 若松さんは中学生に向けて、平易にこれらのことを語られます。
  
  ▼
  
 若松さんによれば、
  
 詩は、実は、わたしたちの「生活のさまざまなところに潜んでいる」
 
 と言い切ります。
  
 そうなんですよね・・・よくよく考えてみれば、詩は、わたしたちにとって「縁遠いもの」ではないのです。もっともわかりやすいのは「歌詞」。詩がなければ、歌手は「歌う言葉を失ってしまう」と若松さんはおっしゃいます。そして、私たちも、ふだん何気なく口ずさんでいる「歌」を失ってしまう。
   
 そのうえで、若松さんは、「詩」とは
  
「人生という道を歩くことがつらいと感じるとき」に、「言葉のちからを借りて、容易に言葉に収まらない何かを世に送り出そうとするもの」
  
 であるといいます。

 つまり、
  
 詩とは「言葉にならないことを、言葉にすること」
  
 なのです。
  
 シンプルな言葉ながら、「なるほどな」と思いました。あれは「非言語の言語化」だったのだ、と。わたしたちが目にしていたのは「非言語」だったのだ、と。
 わたしたちには、ふだん生きていれば、「噛みきれない思い」や「唱歌しきれない思い」が心にこだまするときがあります。言葉にならない、そのような思いを、敢えて「言葉」することが詩なのだ、ということになります。
    
 先ほど述べましたように、僕自身は、子ども時代、詩と「出会えていなかった」ように思います。
 それならば、僕は、詩とどうして「幸福な出会い」をしてこなかったのでしょうか?
    
 それは若松さんによれば
   
 「詩を読むだけだったからだ」
  
 とおっしゃいます。
  
 わたしたちが「詩の本質」を理解するためには、
  
 「詩を読んで、詩を自ら書く」
 「詩を書いたら、また読む」
  
 が重要だとします。
  
 若松さんによれば、「読むと書く」「聞くと話す」は、いわば「呼吸の関係」だというのです。
  
 「読む」は「吸うこと」
 「書く」は「吐くこと」
 「聴く」は「吸うこと」
 「話す」は「吐くこと」
  
 このバランスをとり、呼吸をしていくことさえできれば、詩はより身近に感じられるのでしょう。
  
 振り返ってみれば、僕にとって、自らの私的体験は「聴く」と「読む」に限適されていました。つまり、僕は「吸うこと」ばかりをしていた。本当に大切だったことは「吐くこと」を伴うこと・・・すなわち詩を「書くこと」や「話すこと」であったのかもしれない、と思いました。とりわけ、書いてみたことを、自らがどのように思うのかを語ること。これがきっと大切な詩的経験だったのではなかったのかと思います。
  
 僕の子ども時代の「詩の経験」は「読む」と「聴く」にかなり偏っており、それに「試験問題を解く」が重なり合っていました。呼吸のバランスが悪かった。

 ま、今からでも遅くはないですね(笑)。 
 次に僕が書く本は「詩集」にするか?(自爆)
  

  
  ▼
  
 今日は週の頭から「詩」のことを書きました。
 今週一週間が「ポエムな一週間」になりそうで、とても楽しみです。
  
 ちなみに、茨木のり子さんは、僕が最もすきな詩人のひとりです。彼女の詩のなかで、もっともよく知られている「自分の感受性くらい」を目にすると、僕は、シャンと背筋が伸びます。
  
 自分の感受性くらい
 自分で守れ
 ばかものよ
    
 そして人生はつづく
   
 ーーー
  
 自分の感受性くらい
 茨木のり子
  
 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて
  
 気難しくなってきたのを
 友人のせいにはするな
 しなやかさを失ったのはどちらなのか
  
 苛立つのを
 近親のせいにはするな
 なにもかも下手だったのはわたくし
  
 初心消えかかるのを
 暮らしのせいにはするな
 そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
  
 駄目なことの一切を
 時代のせいにはするな
 わずかに光る尊厳の放棄
  
 自分の感受性くらい
 自分で守れ
 ばかものよ
  
 
   
 ーーー
  
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 ーーー
 
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