2019.1.25 05:50/ Jun
コンセプトは「かっこいい英単語」を並べることでも、「思いつきでつくる紋切り型のスローガン」でもありません。
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僕がつとめる立教大学経営学部では、スチューデント・アシスタント(SA)の制度が発達しており、下級生の授業を、上級生の有志が教員とともにつくり、運営していくといったことが、ごくごくアタリマエに行われます。
僕は、来年度の「2年生向けのビジネスリーダーシッププログラム」の授業開発を担当しているのですが、1月ー3月は大忙し。来年4月から行われる2年生向けの授業を、来年3年生の有志15名程度とつくりあげなければならないからです。協力してくれる有志の皆さんには、心より感謝をしています。本当にありがとう!
ここで学生の皆さんとつくった授業、授業スライドをもとに、約10のクラスで授業が展開します。授業は、兼任講師の先生方とスチューデント・アシスタント(SA)がペアになっておこなっていただく。そういうかたちで、授業が展開しています。
(お忙しい中、ご出講いただいている兼任講師の先生方には、この場を借りて、あつく御礼申し上げます!)
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現在、この授業開発プロジェクトは架橋に入ろうとしています。
そして、その際、課題になったのが「コンセプト」という言葉です。
プロジェクトでは、来年の授業では、何をコンセプトにして、どのような授業をつくりあげるのかを決めようということになったのですが、この「コンセプト」という言葉が、学生たちに伝わりませんでした。
僕は、アタリマエにこの言葉を使っていたのですが、彼らは、それがピンとこなかったようです。
説明不足、理解をうながせていない。
それは学生のせいではありません。
悪いのは、もちろん、僕です。
ごめんなさい。
というわけで、せんだって、改めてコンセプトとは何か?なぜ、それが重要かについて、改めて機会をもって伝えました(まだ十分ではありません)。ここでもう一度、それを説明したいと思います。
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コンセプトについては、さまざまな定義があるとは思いますが、僕は、いつもこんな説明をしています。
コンセプトとは「企画のヘソ」である
コンセプトとは「その企画からユーザーが得られるメリットを1語で言い当ててしまうもの」である
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通常、企画には「特徴(オリジナリティ)」というのがあります。企画のオリジナリティとは、その企画だけがもっている「競争優位」。他の企画や商品との「違い=差別化」のポイントだとお考えいただければ結構です。そして、それを1語でいいあらわすのが「コンセプト」です。
コンセプトとは「かっこいい言葉をつくること」ではありません。
耳障りのよい「英単語」をならべることではありません。
何か物事をつくりあげるときには、丁寧な調査、観察をとおして、ユーザーが何を得たいのか、何を提供すれば喜んで貰えるのかについて仮説(仮の案)をつくります。その仮説にしたがって、オリジナリティをさだめ、それを端的に表現するワンワード、ワンセンスを見つけます。
それがコンセプトです。
コンセプトとは「差異化のポイント」「競争優位をワンセンテンスで表現することば」ということになります。
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よく知られている例をあげて説明しましょう。
たとえば、スターバックスのコンセプト(理念)は何でしょうか?
スターバックスのコンセプトは「Third Place(サードプレイス:第三の場所)」
です。
スターバックスは、第一の場所(家庭)や第二の場所(職場)でもない、「第三の場所(異質な人々が集い交歓できる場所)」を実現する場として機能することを考えてつくられたカフェということになります。スターバックスで当時めざされていたことは、単に「コーヒーを提供すること」ではない、というところがポイントですね。そうではなくて、スターバックスは、なかなか得られない「空間を提供すること」をめざしています。
もひとつ。
朝っぱら恐縮ですが、すこし前に流行した「うんこドリル」のコンセプトは何でしょうか?
おそらく、それは「楽しい漢字ドリル」「小学生が思わずハマる漢字ドリル」ということではないかと思います。
このコンセプトは、いわゆるオキシモロン(形容矛盾)とも呼べそうですね。形容矛盾とは、2つの相反する概念をひとつのワードとして結実させて、新しさや新鮮さを演出するレトリックのことをいいます。
一般に、小学生にとって通常の「漢字ドリル」は「楽しくない」「小学生が決してはまらない」ものです。
これを逆手にとって
「楽しい」+「漢字ドリル」
「小学生がハマる」+漢字ドリル」
としたのが、「うんこドリル」なのかなと思います。
なぜなら、うんこは小学生の「大好物」です(ちょっと変な表現ですね・・・すみません)。
それを用いて、漢字ドリルに「楽しさ」を演出したのが「うんこドリル」ということになります。
なかには、ドストレートなコンセプトもありますね。
もっとも有名なのは「アスクル」でしょうか。
これは、ユーザーが得られるメリットを、直接的に表現しています。
今日注文したオフィス用品が、明日、必ず来る
から「アスクル(明日来る)」ですね。
いかがでしょうか。
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僕は、これまで、さまざまなプロジェクトを立案してきましたが、そうしたときには、こうしたコンセプトワークを非常に大切にしてきました。
要するに、自分たちが、そのプロジェクトで成し遂げたい、ユーザーに提供したいものは何かを、しっかりとワンワード、ワンセンテンスで表現し、それをステークホルダー(関係者)全員で握ったうえで、プロジェクトを推進してきたのです。
コンセプトは、プロジェクトにとって到達したい目標を定めること、です。
コンセプトを適当に決めてしまうことは、プロジェクトを放り出してしまうこと、他人任せにしてしまうことに近いのだと思います。
そういう意味では、コンセプトとは、「プロジェクトを推進するチームが、チームであるために必要なこと」とも言えそうですが、いかがでしょうか。
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立教経営の学生たちは、大変勉強熱心で、大きな伸びしろをもっています。
彼らがピンとこないときには、僕が、たいてい説明不足のときです。
そういうときは、学生が悪いんじゃない。教員が悪い。僕はそう思います。ごめんね(学部生が何がわからないかが、大人の僕には、わからないときがあるんどえす)。
僕も彼らとともにコンセプトワークをともにいたしますが(だめ出しをするだけでは、物事は前に進みません、もちろん僕もやります)、僕がつくるコンセプトなどは「ぶち壊してしまって」大いに結構です。「学生に、(自分のアイデアが)上書き保存されるのは本望だ、あっぱれ」くらいの覚悟をもって、僕は、日々教員として過ごしているつもりです。
彼らが、どんなコンセプトをつくりあげてくるのかが、楽しみでなりません。
そして人生はつづく
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