2018.9.11 06:49/ Jun
中原研究室(以下、中原研)では、日々、様々なサーベイ(調査)が実施され、その結果が「分析」されています。
中原研で収集されるデータの中には、研修やワークショップなどで現場の方々に還されるデータというものがございます。
現場の方々に回答いただいたデータで、分析をゴリゴリと行った結果を、そのまま研修やワークショップのかたちで現場にお返しし、現場のあり方を見直したり、改善したりしていただくためのデータです。
こうした研究のサイクルのことを「サーベイフィードバック(Servey + Feedback)」といったりします。
中原研では、ほとんどのプロジェクトのデータは、「調査をしただけ」では終わりません。調査結果を分析して、ワークショップや研修などのかたちで現場にお返しする「サーベイフィードバック」が、ほぼすべてのプロジェクトで実施されています。昨今ですと、パーソル総合研究所さんの「希望の残業学プロジェクト」や、横浜市教育委員会・教職員育成課さんとの「持続可能な働き方プロジェクト」で、こうしたサーベイフィードバックが実施されようとしています。
サーベイフィードバックとは、調査の結果(サーベイ)を、現場の方々に「鏡」のようにおかえしして(Feedback)、自分自身の変化の一助に役立てていただくことです。一部の組織変革や組織開発の試みの中では、伝統的に、このサーベイフィードバックが用いられます。
中原研究室では、組織変革や組織開発に役立ててもらうことのできるような、様々な組織のデータが、収集され、分析されています。
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しかし、このサーベイフィードバックというものが、「簡単」なようでいて、なかなか難しいものです。
単純に調査結果の数字を「羅列」しただけでは、現場に変化をもたらすことは、極めて「困難」なのです。
あまりにも「大量の数字」を羅列してしまえば・・・
「いろいろあったね、で、どこ見んの?」
ということになってしまいます。ワークショップなどでは「ど白け」が生まれます。
あまりにも「辛辣な結果」の数字を、何の配慮もなく「羅列」してしまえば・・・
「なめんな、こら。てめー、何様だ!」
と、それだけで、シャッターをジャーッと下ろされてしまいます。あまりにも生々しい現実に耐えかねて、そこから先は思考停止です。ワークショップや研修などで、それ以上、話題が展開することはありません。
とはいえ、いいことばかりをあげつらうこともできます。
そんなことをしてしまえば、
「おれたち、すご」
「だよねー」
「だよねー」
「すこ、すこ、すこ」
ということになって、何も考えてもらえなくなってしまいます(笑)。
この場合のポイントは「同じ数字」を提示するにしても、提示の仕方があるということです。その時には、現場の方々の心理状態、そして、研修やワークショップでのファシリテーションのあり方を「総合的」に考慮にいれて、配列を考える必要があります。
端的に申し上げますと、現場の方々に、自組織の問題点を考えていただくためには、そのやり方があるのです。これが、研究室のノウハウだったりします。
せんだって、研究室にプラりと訪ねた際、助教の町支大介(ちょうし・だいすけ)さんが、ある調査の結果を見せてくれました。素晴らしいクリアな分析結果で、さすがは、数々のワークショップや研修で、経験を積み重ねているだけはあるな、と思いました。
町支さんとは、その後、この分析結果を、どのように配列し、どのようにワークショップで提示すれば、現場の方々に、何かを考えてもらう気になるのだろう、ということで、少し議論をしました。この後は、彼が、様々な分析を積みあげ、素晴らしいサーベイフィードバックを練り上げてくれるのではないか、と期待しています。
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サーベイフィードバックを研修やワークショップで展開するときには何が重要か。
敢えて、敢えて、そのエッセンスを3つにまとめるのだとすれば、下記のようになります。
比喩的な言い方で申し訳ないのですが、まず、
1.サーベイフィードバックには「愛」がなくてはなりません。
どんなに辛辣な結果がでていても、それ以前に、まず一番最初には、実践を積み重ねている人々に対する「リスペクト」や、「頑張ってくれて、ありがとう」の気持ちが必要です。それを比喩的に「愛」といいます。
次に、
2.サーベイフィードバックには、まず「鋭い刃=ハッとさせる瞬間」がなくてはなりません
「愛」ばかりだけでは現場は変わりません。現場の方々が、うすうす気づいてはいたけれど、あまり注意を向けてこなかったことを、思わず考えてしまうような結果が、次に必要です。大人の学びや変化には、ときに「痛み」を伴うことがあります。相手の変化を願い、鏡のように「ハッとさせる瞬間」を提示できるかが手腕です。
最後に、
3.サーベイフィードバックには「変革のストーリー」が感じられなくてはなりません
要するに、重い腰をあげれば、何かの変化がおとずれるに違いない、といった「予期」のようなものを、現場に方々が、結果から読み取れない限り、サーベイフィードバックは現場に変化をもたらしません。そうでなければ、先ほど申し上げましたが、シャッターを下ろされて終わりです。
ここでもっとも重要なことは、現場に変化をもたらすのは、下記を認識することです。
それは端的に申し上げますと、
変化は「現場の方々」からしか生まれない
ということです。
変化をつくりあげるのは、サーベイフィードバックを受け取った、現場のフロントラインにたっている方々である
ということですね。
変化をもたらすのは「調査者」ではありません。
調査者にできることは、「愛」をもって、しかしながら「はっとする瞬間」をつくりだし、変化のきざしを感じ取ってもらう機会をつくる支援を差し上げることだけです。
「現場を変えていける人」は「現場の人」だけなのです
我々は「無力」です。
しかし、無力であることを自覚しつつ、現場に変化が生まれることを願い、現場の方々のご支援を差し上げることが、我々にできることです。
(※無味乾燥な数字を羅列することならAIにもできると思います。しかし、上記の3点は人々の「感情」や「意味づけ」を扱います。だから、AIにはサーベイはできても、フィードバックはできません。中原研でスキルと経験を積めば、AIに負けない力量をつけることができる???はずです)
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今日は、サーベイフィードバックのあり方について書きました。
今日も中原研では、様々な組織調査が実施され、分析がなされています。
多くの現場の方々にとって、意味のある時間を創出できる調査を、今後も企画していきたい、と願っております。
そして人生はつづく
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