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2018.6.13 05:58/ Jun

「1 on 1ミーティング」の目的は「ガス抜き」か「素振り」か「成長支援」か!?

「1on1(ワン・オン・ワンミーティング:上司・部下間の定期的なミーティング)をする理由って、期末に、ビシッとした評価をするためぢゃないんですか?」
  
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 かなり前のことになりますが、会社ぐるみの取り組みで1on1(ワン・オン・ワンミーティング)を実践することになった、ある事業部のマネジャーの方が、こんなことをおっしゃっていました。
  
「1on1ミーティング」というものが、ここ数年、人事領域では流行しています。
   
 「1on1」は一般的には、上司・部下間の定期的なコミュニケーション(毎週15分ー30分くらいでしょうか)を通して、
  
 1.日々の部下の成長支援をすること
 2.部下のキャリア相談を行うこと
 3.場合によってはフィードバックなどを行うこと
  
 と理解されているのかな、と思います。
  
 それに対して、冒頭のマネジャーの方の意味づけでは、「1on1」は「期末にビシッとした評価をするため」だと理解されていました。
 おそらく、その含意は、「1on1」の機会を利用して、ふだんから部下のことを観察し、時には「ソルティ(しょっぱい)」な、しかし「納得性」のある評価をするためだ、ということなのでしょう。
そういう考え方もあるんだな、と理解することができます。また、この会社では、このような意味づけで、「1on1」を導入したのかな、と推察してしまいます。
     
 これに対して、別の会社のある課長さんは、こんな風に僕に話をしてくれました。
  
1on1ミーティングをするのは、振り返りやフィードバックを習慣にさせるためです毎週、振り返りやフィードバックをしていると習慣になってきます。究極、そういうのを自分で回して、自分で育っていってほしいんです。そういう自分で自分を育てる習慣をつくることが、1on1ミーティングの目的ぢゃないんですか? 1on1は、正しいフォームでビジネスに向かえる体をつくる素振り練習みたいなもんです
   
 なるほど。
 これも、冒頭の方とはすこし異なりますが、一理ある説明です。
 1on1ミーティングを毎週毎週行っていれば、振り返りをする癖、フィードバックを受ける癖がついてくるのは容易に予想できることです。
  
 これに対して、ある食品関係の部長さんは、こんなことをおっしゃっていました。
  
1on1ミーティングは、いわば、ガス抜きですよ。部下の話を聞くだけで、それでいろんな日々の不満が抑えられるってこともあるのです」
  
 なるほど。
 ガス抜きね・・・・。
  
   ▼
  
 今日は、1on1ミーティングのお話をしました。今日のお話にあるように、1on1ミーティングは、その手続きは、そこそこ決まっていますが(上司部下間の定期的なミーティング)、その「意味づけられかた」は、非常に多様であるということです。また、おそらくですが、その会社によって、導入の意味づけが異なるのかなとも思います。

 かくして、
  
 1on1ミーティングは「多面体」
   
 です。
   
 多面体には「光の当て方」「見方」によって、様々な解釈が可能になります。また、そこで生まれる効能も、おそらく変わってくるのだと思います。
     
 さて、ここでご質問です。
   
 あなたは「1on1」に、どんなイメージをもっていますか?
 あなたにとって「1on1」は、どんな目的をもっていますか?
 あなたの会社は、「1on1」をなぜ導入したのですか?
  
 「1on1」は「ガス抜き」??
  
 そして人生はつづく
   
 ーーー
   
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