2018.3.27 05:47/ Jun
僕は「本」を書く
しかし
僕は「本のできるまで」を知らない
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現在手がけている本を含めれば、僕は、著者として、30冊近くの本を書き、そして、編んできたことと思います。しかし、まことにお恥ずかしながら、僕は「本」を書きますが、意外なことに「本のできるまで」を、これまであまり知りませんでした。汗顔の至りです。
本書「本のエンドロール」(安藤祐介著、講談社刊)は、印刷会社の営業社員・浦本学の視点から、「本ができるまでのプロセス」を描いた小説です。
営業、印刷営業、進行管理、構成管理、色校正、組版進行管理、組版オペレーター、校正、印刷オペレーター、断裁、デザイナー、DTPオペレーターなどなど・・・「本ができるまでのプロセス」には、わたしたちの知らない、多くの人々の職人的な努力が隠されています。
通常、本の奥付には、著者や編者のクレジットは入りますが、これらの人々の献身的な努力がクレジットとして記載されることはありません。知りたくても、なかなか目に出来ないものが、これらの方々の職人的努力なのです。本書には、こうした隠された人々の熱い思いがつづられています。
「本を刷るのではなく、本を造るのが、私たちの仕事です」
(同書 p6)
「印刷会社は、本の助産師みたいな仕事だと思っています。物語は本という身体を得て世に生まれてきます。生まれてくるときのお手伝いをするわたしたちは、本の助産師ではないかと」
(同書 p45)
「こだわりなんて、見方によっては、ばかばかしいものだ。だが、こだわりを捨てたら、俺たち職人は職人ではなくなる」
(同書 p52)
わたくしごとで恐縮ですが、先ほどのリストの中で、著者の僕が、実際にお逢いするのだとしたら、仮にお逢いできたとしても「営業の方」くらいでした。
これまで一部の書籍の「あとがき」などで、営業の方のお名前は記載したことはございますが、これほどまで多くの方々が関わっているとは思ってもみませんでした。浅学を恥じます。
本書の最後には、通常は記載されない職人的な仕事をなさっている方々、会社ののクレジットが、2ページにわたって、いわば、「映画のエンドロール」のように刻まれています。「本のエンドロール」という、この本ができるだけでも、2ページ、35名(社)の方々の努力があったのだなと思うと、なんだか、ジーンときます。
本書の企画は、このように「再帰的な企画」になっています。本文の記載のみならず、「本のエンドロール」という書籍の出版プロセスそのものをとおして、隠された人々の献身的な努力を伝えようとしているのです。このあたり、著者や編集者の「粋」を感じました。なかなかスピリットにあふれる本のように感じます。本好きの方には、おすすめです。
ちなみに、本書には、下記に記すように、短いドキュメンタリームービーにもなっています。もし、このドキュメンタリーショートムービーに興味をお持ちになったら、ぜひ本書を手に取ってみてください。
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今日は「本のエンドロール」をご紹介しました。
世の中、知っているようで、わからないことだらけです。
だから、世の中は、面白い。
そして人生はつづく
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