NAKAHARA-LAB.net

2017.7.14 05:55/ Jun

今、海外で最強にイケてる「ナウい人材開発」はいかがですか?

 海外で、最強にトレンドな人材開発!
 他社もみんな購入している人材開発!
 御社でも、そんな人材開発やってみませんか?
   
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 ごくごく一般的な「人材開発」の定義とは、「組織戦略・目的達成のために必要なスキル、能力、 コンピテンシーを同定し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援すること」(Hall 1984)です。
  
 この定義に見るように、人材開発とは「組織のかかげる戦略・目標達成」のために行われるべきものであり、畢竟、「経営に資すること」が求められます。
  
「経営に資すること」のなかで最も大きいことのひとつは、「競争優位を得ること」です。言葉を言い換えれば、人材開発とは「人の視点から、企業の競争優位をもたらすこと」ということになります。
 競争優位のひとつは「他者とは異なること」です。すなわち人材開発とは、他社とは異なるかたちで「優位性のある人材」を引き留め、能力をさらに伸ばし、さらなる貢献をひきだすこと」に他なりません。
  
 すくなともロジック上は・・・。
  
 しかし、人材開発の実践現場のリアルはそうではないところもあるようです。
 聞くところによると、
  
 1.今年の「人材開発のトレンド=ナウい(死語)」が喧伝され、他社と同じことを横展開されがちだそうです
 2.アメリカやヨーロッパからの施策がよきこととして「輸入」されがちだそうです
 3.良さの保証(導入のための判断基準)を「同業他社もやっていること」に求めがちです
  
 かくして、同じような施策が、同業他社で、一斉に輸入され、導入される、という奇妙な事態が生まれます。
  
 あれっ??? 人の観点から、他社とは異なる企業の競争優位をつくりだすことが、人材開発なんじゃなかったっけ? (笑)
 競争優位って言ったら「違いをつくること」だよね? (笑)
 あれ、違いは「どこいった?」(笑)
    
  ▼
  
 ちなみに、こうした状況に関連して、かつて、元ナイキの人事責任者であった増田弥生さんは、ご著書のなかで、「蛇口の大量輸入」の寓話をお書きになっています。
     
 それを短縮して、引用させていただくと、下記のようになります。
  
 幕末のお話です。武士の一団がヨーロッパを旅して、洗面所で、「蛇口」をひねりました。蛇口から「綺麗な水」が出てくることに驚愕したそうです。結局、武士のうちの一人が、大量に「蛇口」を買って日本に帰ったという寓話があるそうです。
(増田・金井「リーダーは自然体」、2010より改)
  
 このお話の面白さ、しかし、それでいて強烈な風刺はご理解いただけますでしょうか。
  
 「蛇口」は、確かに、水の出てくるところであるけれども、それだけ「持って帰っても」、決して、そこから「水」が出るわけではない。「蛇口」から水が本当に出るためには、蛇口の先に「水源」を確保し、水道を整備するなど、「巨大なシステム」に存在し、それらが有機的に結びついていなければならない。
   
 しかし、人は、綺麗な水が出るからといって、「蛇口」だけを大量に「輸入」したがる・・・・。
 深く、痛いご指摘ですね。
  
  ▼
  
 今日は「トレンドで行う人材開発」「輸入モデルで行う人材開発」「横並びで行われる人材開発」のことを考えてみました。
  
 あなたの会社は、最近、海外でトレンドな「蛇口」を求めてませんか?
 あなたの会社は、「蛇口」の大量輸入をしていませんか?
 あなたの会社は、他の誰もが購入している「蛇口」を求めていませんか?
  
 そして人生はつづく
  
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