NAKAHARA-LAB.net

2017.4.18 06:42/ Jun

「事業をつくる人」を後押しするために必要な条件とは何か?

 事業創造を行う人材は、いかに育てるのか?
 事業創造を行う人材が、活躍できる職場環境とは何か?
  
 研究室メンバーの田中聡さん(D1)は、こうした問題関心のもと研究を進めているひとりです。せんだってのゼミでは、田中さんが、管理職による事業創造行動(corporate entrepreneurial actions)の英語論文を報告してくださいました。
  
Hornsby, et al(2009) Managers’ corporate entrepreneurial actions: Examining perception and position. Journal of Business Venturing. 24(3) pp236-248
  
 この論文では、管理職による事業創造行動(corporate entrepreneurial actions)に影響を与える要因として、すでに提唱されているCorporate Entrepreneurship Assessment Instrument (CEAI)というフレームワークをさらに深掘りしています。
 先行研究で知られている、事業創造行動にポジティブな影響を与える諸要因(CEAI)とは、だいた下記のようなものです。
  
 1.経営による支援が得られるか?
 2.職務に裁量が与えられるか?
 3.報酬が与えられるか?
 4.時間利用可能性があるかどうか?
 5.組織境界の柔軟性があるかどうか?
  
 論文では、これらの諸要因のうち経営による支援、職務裁量性と管理職の職位の関係を調べておりました。大変コンパクトに管理職による事業創造行動についてレビューできる論文でした。
  
 論文を読みながら考えていたのは、これらの要因は、たしかに管理職による事業創造行動を規定する諸要因なのだけれども、実際、「事業創造の現場のどれだけが、これらの諸要因を満たしているのかな」という点でした。
  
 よく「発明は、机の下で生まれる」といいますが、実際には
  
 1.経営に「はしご」をはずされちゃうこともある
 2.何をしてもいいよ、と言われつつ、たいした裁量やリソースはない
 3.とくに事業創造しても、報われるわけではない
 4.本業と兼業するなどして、隙間時間を利用して行われる
 5.ギチギチの組織の「穴」をつくように行われる
  
 のが「事業創造のリアル」ではないかな、とも思いました(泣)。
 経済合理性でぜーんぜん説明つかない(笑)
 なんでやってんだろ?(笑)
 もちろん、くどいようですが、先ほどの諸要因が「すべて満たされている」にこしたことはないのですけれども(笑)。

 パラダイスは、ない(笑)。
   
  ▼
  
 事業創造に関する研究は、そのほかの領域に関して、あまり進んでいないところもあるのかなと思います。
 この点に関しては、田中聡さんが、これから様々なかたちで調査やパブリッシュ活動を行っていくと思いますので、彼の今後の研究の進展に期待をしているところです。
  
 そして人生はつづく
    
 ーーー
     
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