2005.6.23 23:32/ Jun
その菓子の本当の名前は、なんというのだろう。
昔、舗装すらされていなかった自宅近くの通り道に、ときおり、米菓子をつくるおじさんがやってきた。
大砲みたいな大きな機械とビーチパラソルのついたリヤカーをひいて、彼は、時折、忘れた頃に僕らの街にあらわれる。
彼の姿をみつけると、子どもたちが、自宅から米1合と300円を持参し、どこからともなく集まってくる。
おじさんは、子どもたちから300円を受け取ると、持ってきた米を大砲につめ、そいつを火でゆっくりと熱する。
しばらくすると、火で熱せられた大砲は、「どん!」というものすごく大きな音とともに、破裂する。大砲の先からは、サクサクとした菓子になった米が勢いよく吹き出す。それを大きなゴミ袋にいれて、子どもたちは家路につく。
当時、米菓子の名前は、そのまんま「どん」とよばれていた。子どももオトナも、それを「どん」と呼んでいた。
こういう行商が、全国どこにでもあるものなのか、僕は知らない。そして、その米菓子の正式名称も知らない。
「どん!」という大きな音!
300円と米1合のはいったビニール袋を握りしめ、その音に歓声をあげていた頃のこと。
なぜか、昨日、僕の夢の中に、その光景がでてきた。懐かしかった。
そういえば、中学校に入る頃になったら、急に、あの「どんのおじさん」の姿を見なくなった。「見なくなった」のではなくて、「見えなくなった」? はたまた気づかなくなった? 真相はわからない。
いずれにしても20年も前の、遠い昔の話である。
—
ほらほら、そっちに行っちゃいけないったら
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