2017.3.10 06:27/ Jun
「主体性」という言葉ほど、世の中で、珍重されているものはありません。
「主体性」を持って欲しい
あの人には「主体性」がない
世の中では「主体性」というモノサシを用いて、様々な人々が評定されています。主体的であることは「善」、非主体的なことは「悪」とすら考えられている節すらあります。
しかし「主体性」という言葉が、人口に広く膾炙しているのとは裏腹に、「主体性の育成」は困難を極めます。
どのように「主体性」を育成したらよいのでしょうか?
を尋ねられると人は口をつぐむのです。
「主体性の育成」には「ジレンマ」と「パラドクス」が存在するのです。
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「他者の主体性」を育もうとする人々は、まず「主体性のジレンマ」にぶち当たります。
「主体性のジレンマ」とは、
「主体的になれ!」と第三者に命令して、第三者が発揮する<主体性>とは、本当に求められる「主体性」ではない
というジレンマです。
それは「命令されて発揮される非主体性」であり、「見せかけの主体性」です。別の言葉でいうと、
主体的になれ!って言われたら、主体的になってみただけ!
トホホ。かくして、第三者に主体性を喚起したいと願う人は、立ち止まります。
どうすればいいのか、と。
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ここで私たちは「主体性をめぐるパラドクス」に直面せざるをえません。
「主体性をめぐるパラドクス」とは「主体性を育成するために、非主体的な環境で試行錯誤させる」というパラドクスです。
主体性を育成するためには「非主体的な環境」を人為的に準備し、それへの反発や葛藤を喚起することなのです。
具体的には、主体性の育成とは、まず「外部からの働きかけによる目標の達成の反復」からはじまります。
要するに、こういうことです。
「まずは、監督者のもとで、非主体的に物事を成し遂げる。単純に物事を成し遂げるのではなく、一応、自分で目標をたてさせて、それに対して挑戦させる。挑戦の際には、監督者からフィードバックをする。かくして、目標を達成させ、また次の目標を設定させる。外部からのフィードバックを得ながらの目標達成を繰り返しつづけさせる」
そうこうしているうちに、人は、こうした「外部にお膳立てされた非主体的環境」に「反発」や「葛藤」を覚えるようになります。
「もしかして、自分だけでもできるんじゃないだろうか」
「いちいち、あのひと、うるさい」
「言われなくても、わかってるってーの」
うーん、愚息・TAKUZOみたいだ。
しかし、そこが、「支援の解除」のポイントです。
非主体的な環境に置かれている第三者が覚える「反発」と「葛藤」を利用し、少しずつ「外部からの働きかけ」を引いていくのです。
「だったら、自分でやってみなよ」
かくして、だんだんと、外部からの働きかけがなくても、「自ら」喜んで自由に振る舞うことを覚えていきます。”他者の管理下で立てさせられた目標”だったのに、今度は、”自ら進んで目標をたてられるようになる”のです。
ほら、センテンスのなかに「自ら」が増えてきたでしょ。
こういう「自らの増加」を、第三者が目にしたとき、”あの人は、最近、主体的になってきたね”とラヴェリングされるのです。
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生まれてただちに、「主体的」であった人はいません。
生まれたばかりの子どもは、母親に依存し、父親に守られ、そもそも非主体的な環境下で生きていきます。
他者からのフィードバックを得て、ときにそれに葛藤や反発を覚えつつ、少しずつ「自ら」を増やしていきます。
だから、主体的な人を育てたい人は、常に、「葛藤」や「反発」の中に巻き込まれることになります。
でもね、それは宿命であり、役割だ。
やれやれ、そういうものなのです。
人は「非主体的な行為」の「反復」と「葛藤」を通じて「主体的な人」になるのだから
そして人生はつづく
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