NAKAHARA-LAB.net

2016.6.22 06:28/ Jun

「紙の文法」と「ブログ文法」は何が違うのか?

「ブログの文体」というものは「紙の文体」とは全く異なる
 昨日、ある仕事をしていて、このことを切に思いました。
 実は、人事専門誌「人材教育」の僕の連載「学びは現場にあり!」がリニューアルされることになり、編集者の西川敦子さんから、昨日、こんなリクエストをいただきました。ハードな課題をありがとうございます。
「先生の執筆文のパートなのですが、ここもリニューアルしたいんですよ。これまでは解説っぽい文章でしたよね。あのー、ブログっぽく書いてくれません?
「ブログですか? いや、解説なんだから、解説でいいんじゃないですか。」
「いいえ、ちょっとブログっぽさをだしたいんですよ。だから、ブログっぽく」
「・・・・・・・」
「ブログっぽくです」
 毎朝ブログを書いていながら「ブログっぽく書く」ということがまったくわからず、一瞬、えー、どうやって書くのかなと面食らってしまったのですが、
「まー、これも神がくれた試練なんだろう。神は超えることのできない試練は与えない。何とかなるべ」
 と思い直り(激ポジティブ志向)、
「はい、じゃ、とりあえずはやってみますよ」
 と電話で答えてしまいました。
  ▼
 よーいスタート!
 ニンニーン、ニキニキ、ニンニンニキニキ
 ニンニンニキニキ ニンニンニキニキ
 ニキニキニキニキ
 (運動会の恒例ソング「天国と地獄」を歌ってください)
  ・
  ・
  ・
  ・
 1時間経過
  ・
  ・
  ・
  ・
 2時間経過
  ・
  ・
  ・
  ・
 嗚呼、しんど・・・ぜーぜーぜー。
 でも、まー、何とかなったわ。
 結局、「ニンニンニキニキ」を歌い始めてから、2時間ほど悶絶時間がつづき、何とか原稿はあげたのですが、このプロセスの中で、僕が到達した「真理」として、冒頭の命題がございます。
 これは僕だけにあてはまることかもしれませんが、僕は今回の仕事のなかで、このことを痛感しました。
 「ブログの文体」というものは「紙の文体」とは全く異なる
 「紙の文法」と「ブログ文法」は別物である
 こんなこと、しっかし、まったく考えたこともなかった。
 現在、僕は、NAKAHARA-LAB(個人ブログ)の方は月間で6万PV、Yahooニュースの方のブログ記事は97万PV(先月)ありますが、そんだけ書いていても、まったく考えたこともなかったのです。
 しかし、よく考えてみると、ブログを書くときには、いろいろ無意識にしていることがあります。
 といいますのは、もう既におわかりのように、ブログで読みやすい文章というのは、「スクロール」とかのことを考えて文章を配置しますし、一文を短くしたりする必要があります。
 たとえば
  ・
  ・
  ・
  ・
 のような「無駄な点」も、通常の紙媒体では使いませんよね(笑)。
 原稿用紙に「点」は無駄にうたない。
 
 またこのブログの「1文の長さ」を見てみてください。
 かなり細かく改行が入っていると思います。
 経験的なのですが、これ以上、長くなると、かなり読みにくくなります。
 
 あと、先ほどの
 「ブログの文体」というものは「紙の文体」とは全く異なる
 のように「読者に読んで欲しい部分」を「改行して、さらに太字にする」などのようなことも紙媒体ではしませんね。しかし、スマホで文章を読まれることが一般的な今、みんな、すぐにスクロールしてしまうのですね。
 少し込み入ってくると、すぐにスクロールされる。飛ばされる。
 だから、大切な部分はかなり「強調」しなければならないのです。
 要するに、ブログの文体は「ディスプレイ」で読むこと、「スクロール」されること、昨今は「スマホで読まれること」などを前提に「最適化」されているということです。
 少なくとも僕の文体は・・・・(笑)。
 だから、
 ブログの文体は「紙の上」で書くのは難しい
 のですね。
 そして僕はライターでも何でもないので、どうでもいいですが、おそらく、こうも言えるのでしょうね。
 紙の文章がうまい人が、オンラインでも「よい文章」を書けるとは限らない
 オンラインで「よい文章」をかける人が、必ずしも、紙でもよい文章をかけるとは限らない
 嗚呼、なかなかウルトラハードな試練でした。
 まー、でもいろいろ学んだよ。
 いや、もうけもんだったかも(笑)
 ▼
 ちなみに、今回の連載では「生まれてはじめてのご依頼」をもうひとつうけました。
 西川さん曰く
「先生がブログに描いてるみたいなイラストを、ワンポイントで入れたいんですよね。先生、イラストを描いてくれません?」
 とのことでした。
「あのー、すみません。僕、図工で2をとったって知ってました? 図工2ですよ。イラストはムリでしょう」
「いや、先生のイラストを見たいっていう人が多いんです。ブログで描いてるみたいなイラストをひとつお願いしますよ」
「・・・・・」
「ブログみたいなイラストです」
「はぁ・・・わかりましたけど」
「ヤケクソ」で描きましたが、こちらは「自己嫌悪」です。
 たぶん、載りません。
 
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 そして人生はつづく

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