NAKAHARA-LAB.net

2016.6.1 06:13/ Jun

あなたのチームには「悪しきパターン」がまた生まれていませんか?:チームワークを「俯瞰」する目、立てなおす「勇気」!?

 授業や研修などで、たくさん「グループワーク」を見る機会があります。
 それまであまり接点のなかった人々が集まり、あるテーマや課題について話しあい、アウトプットを出していくプロセスを授業者・ファシリテータとして見ていると、いろいろな「パターン」に出会います。
 パターンとは「専門用語」のひとつですね。
 パターンとは、「人々のコミュニケーションのなかで、繰り返される行動や現象のこと」とお考え下さい。
 
 グループワークをしていると、「あっ、これ、前にみた現象だな」と思う行動がメンバーによって繰り返されます。それが「パターン」です。
  ▼
 グループワークを外部から観察していると、さまざまな「パターン」が現れて消えていくことがわかります
 せんだって観察していたチームでは、5名のチームのコミュニケーションが、チームのリーダー格とサブリーダー格の間だけでなされており、他の3名がどんなに割って入ろうとも、そのコミュニケーションの中には参入できない「現象」が生まれていました。これが「パターン」のひとつです。
 どんなに場所や時間を変えようとも、このグループダイナミクス、このメンバーの中では、この「パターン」が繰り返されます。
 パターンは、個人の資質、グループの中の人間関係、権力勾配によって規定されているからです。
(ちなみに、課題の異なるこうしたグループワークをいくつか重ねてみれば、かなりの確率で、その人の人となりがわかるような気がします。グループワークを通じたアセスメントが可能なのではないかと思っています)
 このチームには、以前、こんな声かけ(外的働きかけ)をしました。
「今、グループの話しあいをみていると、みんなのコミュニケーションの矢印が固定的になっている気がします。自分たちは、どんな風にコミュニケーションをして物事を決めていますか? このままで最終ゴールまで行って、チームの状態は、大丈夫?」
  ▼
 リーダーは、自らのチームを率いるときに、常に「チーム全体の状況」を「俯瞰」する「鳥の目」を持たなければなりません。
 
 本来ならば、「チーム全体の状況」を「俯瞰する鳥の目」をもってながめ、必要に応じて、自らに対して「働きかけ」をおこなわなければならないのです。
 しかし、それがなかなか難しい。
 本来ならば、上記のような「外的働きかけ」は、チームのなかで、誰かが担わなければならないことです。特にリーダーがそれを担わなければ、前には進みません。
 しかし、リーダー含め、チームのメンバーは常に「課題一辺倒」「成果目標邁進」になっていることと、「権力勾配」にすでに絡め取られているので、なかなか口に出せません。
 そんな風にして、チームは暗礁に乗り上げるのです。
 そのあとに残されるのは、たいていこんなセリフです。
「最悪の結果だったね。でも、わたしは、最初から、こうなるんじゃないかと思っていた。わたしは、わかっていた。最初から、こんなことはしたくなかった」

  ▼
 時がたち、学期も進み、僕がかかわっている授業や研修のグループワークは、そろそろ「Point of No return(ポイント・オブ・ノーリターン)」にさしかかります。「Point of No return」とは「帰還不可能点」のこと。
 これ以上、先に進んでしまうと、後戻りできなくなるポイントがもうすぐそこ。そして成果発表のタイミングが、そのあとに続きます。
 何とかして、自分たちのグループワークを俯瞰する鳥の目をもち、パターンに向き合い、勇気をもって、自らのチームを立て直して欲しい、と思います。
 リーダーは「鳥の目」を持って、パターンを観察して下さい
 そして
 「チームを立て直す勇気」を持ってください
「最悪の結果だったね。でも、わたしは、最初から、こうなるんじゃないかと思っていた。わたしは、こんなことはしたくなかった」
 と言わないためにも。
 そして人生はつづく

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