2016.2.25 07:24/ Jun
今週、中原は、プロセスコンサルテーションについて学ぶワークショップに引き続き参加させていただいております(南山大学・人間関係研究センター 中村和彦先生主催、講師:Dr.Mary Ann Raineyさん、心より感謝いたします)。
20名弱の皆さんと、1週間にわたってホテルに缶詰になって、プロセスコンサルテーションのスキルを高めることを目的に、過ごしております。
プロセスコンサルテーションの開祖、マサチューセッツ工科大学のエドガー・シャインによれば、「プロセスコンサルテーション」とは、
「コンサルタントが、クライアントとの関係を築くことをベースにして、クライアントが自身の内部や外部環境において生じている出来事のプロセスに気づき、理解し、それに従った行動ができるようになること」
です(中原一部改訳)。
一般には、こんな場面を思い浮かべていただければと思います。
今、複数の利害関係者が集まる会議体(たとえば役員会など)があって、彼らが意見交換をする場面があるとします。様々な政治的パワーのため、みなの発言は滞っているか、ないしは、議論がスムーズに進みません。
あなたはコンサルタントとして、彼らのインタラクションに外部から働きかけながら、成果につながるようインタラクションをガイドする役割を担っています。
こういう場面が、プロセスコンサルテーションの実際です。
ま、一言でいえば
プロセスコンサルテーションの仕事場とは「議論の修羅場」
です。
一般に、「コンサルテーション」とは、有能な専門家がクライアントに対して「こうすればいい」「絶対にこうするべき」といった「処方箋」をだしたり、 絶対的な基準に照らして「点検」を行う行為として捉えられています。
シャインは、こうした「コンサルテーション像」に「異」をとなえ、反省を迫り、プロセスコンサルテーションという概念を「Coin(製造)」しました。プロセスコンサルテーションには、下記のような「強烈な哲学」があります。
—
人にできるのは、人間システムが自らを助けようとするのを支援することだけだ。
コンサルタントというものは、問題を解決するために、組織のメンバーはこれこれをなすべきである、と具体的に勧告できるほど、その組織の特殊な状況や文化について熟知していることは決してない。
問題を抱えているのは、クライアントだけなのである。また、問題の複雑さを知っているのもクライアントである。さらには、所属する文化において、何がうまくいきそうかを知っているのもクライアントだけである。
クライアントとコンサルタントは、一緒に状況を診断し、問題が何かを見極め、適切な対策を共同で考え出し、一緒に実現することをめざすべきである。
クライアントが自分で問題を理解し、自分たちがおこなう治療法をとことん考えて見るようにならない限り、彼らが解決法を実行にうつすことはあまり期待できない。
そうであるならば、コンサルタントの仕事とは、クライアントが援助を受けられるような関係を築くことである。
(プロセスコンサルテーション1章、中原一部抽出・要約)
—
今回のワークショップでは、20人の参加者が「大きな円」になってすわり、議論をします。自分たちだけで何らかの議論設定をして、自分自身で議論をしたりする40分のセッションが、合計9回(合計360分)もうけられています。
参加者の中の2人が交代で、プロセスコンサルタントとして、この会議に加わり、おおよそ10分に1度くらいを目安にして、「ワンステートメント」で、会議への外的働きかけを行います。
もっともクライアントにとって有益な「ワンセンテンス」を選び出すことが、非常に難しいことです。
40分のセッション終了後は、講師のリフレクションタイムが30分もうけられ、40分の時間をじっくり振り返ります。メアリー・アンさんからの辛口のフィードバックがあります。
1日の終わりには、下記の4つの問いが投げかけられ、みなでリフレクションをするという感じです。
1.What am I learning about the group
2.What am I learning about myself?
3.What am I learning about our group
4.A name for the session(セッション事に名前をつける)
おー、スパイシー。
なんというマニアックな場でしょう。
▼
こう文字に書いてしまうと、非常に簡単なことのように思えますが、それは全くそういうことはございません。僕たちが今まで経験してきたセッションは、僕の「名づけ」をあえて引き合いにだすのであれば、
1.軸なき迷走
2.秩序から無秩序へ
3.分裂
4.統合への痛み
となります。まぁ、のたうち回るほど話が「迷走」します。
しかし、この「迷走」に、プロセスコンサルタントは、「どこまで」何を根拠に関わるか、ということが問題です。
メアリーさんはここで2つのメタファをだします。
「Direct the movie」と「Watch the movie」です。前者は否定的なニュアンスで、後者は肯定的なニュアンスで用いられます。
プロセスコンサルタントは、どんなに会議体が紛糾しようとしても、「ムービー(ここでは会議)のディレクターになっても、主人公になってもいけません。客観的な事実を収集し(Watch the movie)、それを参加者に鏡のようにフィードバックしていくことが求められます。
例えば、会議のメンバーが注意散漫になり、下を向いて明らかに会議から離脱しようとしているとき、こんな言葉掛けをするという事例が出されていました。
皆さん、上を向いて議論に参加しましょうよ(×)
皆さん、下を向いて足下をみていらっしゃいますね(○)
他には
つまり、あくまで会議の参加者が「自ら選択できる」ように「選択の余地」を残しながら介入を行うと言うことですね。
あのね、これ、口で言うのは簡単です。
でも、
わたしたちは、言い足りないか、あるいは、言い過ぎるかのどちらかになってしまう
ものです。
▼
今日はプロセスコンサルテーションについて書きました。
ホテルに缶詰になり、外に一歩も出ない日がもう4日、つづいています。せっかくのチャンスなので、思い切り学びたいと感じています。
そして人生はつづく
ーーー
■関連リンク
「議論の修羅場」を乗り切るためのプロセスコンサルタントになるためには、いったい何が必要か?:
https://www.nakahara-lab.net/blog/2016/02/post_2565.html
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