2015.7.10 06:48/ Jun
先だって、慶應MCCの授業「ラーニングイノベーション論」に、採用学で著名な服部泰宏先生にご登壇いただき、みなでディスカッションする機会をえました。本当にお忙しい中、ご出講いただいた服部先生には、心より感謝をいたします。ありがとうございました。
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服部先生のご講義は、どの内容も非常に面白いものでしたが、僕がもっとも興味をもったのは、「採用の入り口が多様化している」というご指摘でした。採用に関しましては、これまでにもブログで書いてきたことがありますが、まさに予想にかなり近い形で変化が起こっている気がいたします。
これからの就活におこる三大変化:「前倒し化」「アングラ化」「マルチルート化」
http://president.jp/articles/-/11812
RPG化する就職活動!?:「採用活動とは言わない採用活動」の密かな広がり
http://www.nakahara-lab.net/2014/02/rpg.html
昨今ひろがる中には、数日間の講座を受けてもらって、そのなかで評価するというものがあったり、優秀な社員に数日間弟子入りして、そのプロセスの中で採用するものがあったりして、まことに興味深いことでした。
ここで起こっていることは、さらに
「採用者ひとりひとりとの濃密なインタラクションを行うようになっていること」
そして
「講座とか弟子入りとかに代表されるように、”育成”とも解釈できるようなインタラクションを提供する傾向があること」
そして
「もはや大規模な人員を採用対象とするのではなく、そもそも少人数に採用対象を限定すること」
が同時に起こっているような気がいたしました。
濃密なインタラクションは、経営の観点から考えれば、コストフルです。よって、こうしたものを大人数のプール全てに適応することは、経営上、難しいという判断をせざるをえません。
ここまでをすべて「エイヤッ!」とまとめて、ワンセンテンスで申し上げますと、近年の採用では、
「採用のなかに育成コンテンツが入り込み、ごくごく短期間の育成プロセスにおける”学生の伸びしろ”と”学生の組織への馴染み度”を、評価する試み」
があらわれているのではないかという仮説が成り立ちます。
専門用語を用いることに成増が、さらにシンプルに申し上げますと、
「社会化されやすさ」を予測する採用手法として「育成コンテンツ」が用いられている
という言い方もできます。
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「育成コンテンツ化する採用」は、コストがかかる / 少人数しか対象にはできないというデメリットがある一方、数々のメリットがあります。
最大のものは、先ほども申し上げましたように、短期間「育成」を提供することによって、そうしたもののなかで、学生がどの程度「組織になじみ」さらには「伸びるのか」を評価できるところもあるのかな、と思います。学生も、昨今の方々は成長願望がありますので、こうした採用の手法はおおむね高く評価される傾向がでてくるのではないかと思われます。
組織の人員からみた場合には、この学生が現場にきたときに、どの程度、「かまってやりたいと思うか?」も評価できるのではないでしょうか。「仕事ができるかどうか」の潜在力を評価するときに、一番説明力が高いのは「実際に仕事をさせてみること」です。育成の色がかかってはいますが、「実際に組織の人と一緒に仕事をさせてみること」は、コストフルではありますが、もっとも確実な採用手法といえます。
実務のビジネス能力を評価できず、潜在的な能力を評価せざるをえない日本の現在の採用慣行では、まずは「組織になじむかどうか」「伸びしろがあるかどうか」「可愛がられるかどうか?」が非常に重要なファクターになると思います。
それに対しては、いろいろな議論があるとは思いますが、「実務のビジネス能力」を先行する教育機関で十分扱えていない以上、また、現在の日本の採用慣行が「ジョブ」というよりも「メンバーシップ」を評価している以上、こうした評価項目が登場してくることは、経営的には妥当性があると僕は思います。
これを評価する手段が、こうした「育成化する採用」に現れているのではないかと思いました。もちろん、どれだけ一般性のあることかはわかりませんが・・・。
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今日は「育成化する採用」のお話をしました。従来、採用と育成のあいだには、明確な境界がありましたが、これらが接近し、「採用とはいわない採用」や「採用にはみえない採用」が広がりつつあるというお話をさせていただきました。これの問題点は「多くを扱えない」ということがありますので、こうした動きがひろがるとき、「そもそも最初から採用の入り口にすら到達できない学生」が多くなることは予測できるのかな、と思います。
また、このお話をつきつめていくと、実は、採用研究にひそむ支配的なパラダイム「マッチングパラダイム」にも、やや修正が必要になるとは思いますが、その話は、やや専門的なので、また別の機会で。
素晴らしいご講義をいただいた服部さん、そして熱意とパッションあふれる受講生のみなさま、事務局の保谷さんに、心より感謝をいたします。ありがとうございました。
そして人生は続く
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