2015.2.3 06:25/ Jun
「実務担当者」から「新任マネジャー」へのトランジション(役割移行)研究というものを、本当に細々と続けています。
この研究は、拙著「駆け出しマネジャーの成長論」の続編ということになりますが、今月に「大きな山」があり、また一歩、研究が進むことになりそうです。なるべく早く研究知見をお届けできるよう、頑張ります。
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これまでの研究において「実務担当者」から「新任マネジャー」への役割移行においては「新任マネジャーが陥りやすい、いくつかの罠」というのがわかってきています。そのさわりは、「駆け出しマネジャーの成長論」にも書かせて頂きましたが、今日は、それとは違うものを論じていきましょう。
ここで「マネジャーの陥いりやすい罠」とは、新任マネジャーにとってみれば、一見「合理的(ラショナル)」に見えるのだけれども、ついついハマってしまう「思考の癖」とお考えください。そうしたものに囚われていくと、深みにどっぷりはまっていく事例が少なくないということです。
「罠」のひとつは「水平展開の罠」です。
「水平展開の罠」とは、「自分が実務担当者時代にとって成功した勝ちパターンを、そのまま部下・職場にもやらせようとして、成果が出ないこと」をいいます。この事例は、主に、営業組織を念頭においていただければ、幸いです。
ワンセンテンスで述べるなら、
オレが、勝ちパターンを教えてやるから、言うとおりにやればいいんだよ
という感じですね。
もちろん、この戦術でも、うまくいくこともあるでしょう。しかし、ヒアリングなどで語られるのは、その逆であることの方も少なくないのです。成功パターンを教えているのに成果がでない、という感じですね。
さらに、この戦術は、マネジャー「自らの成功体験」に支えられておりますので、なかなか「客観視」することができません。成功体験に支えられているがゆえ、ラショナルにも感じますが、これが「罠」になることは少なくありません。
それでは、なぜ水平展開戦術がうまくいかないこともあるのでそう。それは「水平展開戦術」が奏功するためには、最低でも2つの前提条件がそろっていなければならないからです。
ひとつは「成功パターンを踏襲させたい部下の能力・モティベーションが、マネジャー自分と同じであるか?」ということです。
マネジャーとしては、「成功するやり方」を教えるのだから、そのまま展開さえすればいけるはずだ、と考えたくなるものですが、たいがい、それはうまくいきません。なぜなら仕事を支える「部下の能力・モティベーション」が、自分のそれとは異なっているパターンもありえます。
また職場には、様々な人がいます。部下が一様に、同じだけの能力・モティベーションをもっていさえすれば、職場として「面」をつくることが可能ですが、たいがいは、そうはいきません。
人生いろいろ、能力いろいろ、そして、モティベーションいろいろなのです。かくして、同じ戦術を展開していても、「まだら」がでてくることになります。
「水平展開戦術」の、もうひとつの前提条件は、「自分が実務担当者であった頃の外部環境(市場環境)と、今回、成功パターンを適用する外部環境(市場環境)は、同じかどうか」ということです。これが同じであれば、成功の勝ちパターンは似ていることも考えられるので、適用が可能かもしれません。
しかし、環境は常に移ろいゆくもの。
自分がかつて成功した勝ちパターンが、必ずしも、適用できるとは限りません。
かくして、新任マネジャーの水平展開戦術には「陰り」がみえはじめます。思ったように成果はあがりません。
新任マネジャーは焦り始めます。その様子を戯画的に描き出すと、こんな感じです。
オレが勝ちパターンを教えてやるから、言うとおりにやればいいんだよ。おい、こら、言うとおりにやってるか? そこ、勝手に、カスタマイズしてんじゃねー。
勝ちパターン教えてやったろうが。本当に、熱意あるか? 熱意があるなら、成果がでるはずじゃねーか。
かくしてデフレスパイラルに陥りだしたマネジャーを襲うのは、「熱意の罠」「恐怖政治の罠」です。ここについても、書いていきたいのですが、僕は、もう大学に行かなくてはならず、時間がないのですね。
この話題は、また今度お話ししましょう。
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今日は新任マネジャーが陥りやすい「水平展開の罠」について書きました。もし、あなたが「勝ちパターンを教えてやってるのに、なんで、できねーんだよ」とか「勝ちパターンを展開しているのに、いまいち、成果がでねーんだよ」と思っていたら、この2つの前提条件を探ってみられると、少しヒントがうまれるかもしれませんね。
そして人生は続く
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I have investigated what kind of experiences and troubles people tend to have when they are promoted from general staff to managers. I found that there are some pitfalls into which new managers tend to fall.
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One of the biggest pitfalls is that new managers tend to force their own way of working on their staff. Generally, new managers have achieved high performance before being promoted and have created their own way of working. They apply it to their work and they are promoted to manager. New managers tend to force their staff to work in the same way as they did in order to achieve high performance from his staff.
In short, the manager says,
“I’ll show you the best way.
You just do it.
Otherwise, you cannot achieve the goal!”
New managers have a lot of confidence because they have been successful and they have been promoted. They have “strong successful experience”. Of course, it occasionally works. But the most usual case is the opposite. I think that it usually fails even if their staff work like their manager.
Why is this strategy not successful?
I think that there is one pre-condition in order to have this strategy work.
The pre-condition is that their staff must have the same ability and motivation as the manager. New manager think their staff have only to apply their way of working. Generally, it does not work. The staff’s ability and motivation is totally different from their manager’s.
In our workplace, there are a lot of people with diverse social backgrounds. Their ability and motivation are different. So, even if their manager teaches successful methods to them, they cannot apply it to their work. Some people neglect it. Others don’t have the ability to use it.
New managers wonder why their staff cannot achieve high performance even though they teach the best way to them.
“Why are they able to achieve the goal?
Why can’t they work like me?”
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Today, I wrote about one of the pitfalls into which new managers tend to fall. New managers must check their staffs’ ability and motivation before they assign jobs to them.
Life goes on…
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追伸.
ただいま「現場マネジャーの抱えるディレンマ」を絶賛募集中!です。えーい、どないせーちゅうねん系悶絶ディレンマ、どうかお寄せください!
「現場マネジャーの抱えるディレンマ」を絶賛募集中!
https://www.nakahara-lab.net/blog/2015/01/post_2347.html
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