2014.6.12 06:37/ Jun
大学院の僕の授業「経営学習論」では、週に一本、英文ジャーナルの実証研究を読んで、議論する、という授業をやっています。僕の授業は、どの授業も僕がレクチャーをするのは、全部でおそらく20分くらい。その他は、プレゼン+議論で構成されています。
大学院の授業なので「ハイレベル?な議論をしている」と書きたいのですが、なかなか時間も限られていて、いつも、尻切れ?気味に終わるのが、やや残念に思っていました(大学院レベルのこの手の授業は、2時間ぶっつづけの授業にするとか、週に2回授業があるとすごく楽だな、といつも思っています)。一方で、この授業の想定レベルは「大学院レベルの初学者」、すなわち「学問の入口」ですので、そんなものなのかな、とも思ってきました。
ただ、先だって、本田由紀先生(社会学)と、ある件で、お話を伺う機会があり、そこで、本田先生の学部での授業について、いろいろご教示頂きました(貴重なお時間をありがとうございます!)。
先生の授業では、学部生にリーディングリストをお渡しになり、文献を授業までに目を通してくるようにいい、授業中、議論をなさっているとのことでした。学生の一方が「論文を批評」し、他の学生が、それをディフェンスする、という議論であると伺っています。
そういうのは面白いな、と思って、ちょっと、昨日は、自分の授業でも、単に議論をさせるのではなく、少しだけ工夫をしてみることにしました。
それが「指導教員になったつもりゲーム」です(笑)。
いつものように単純に議論をするのではなくて、この論文の著者の「指導教員」になったつもりで(トップジャーナルの著者の指導教員とは、まことにおこがましいのですが・・・)、
1.論文の良い点をまずは褒めてあげる(1ほめ)
2.その上で、論文の弱点を指摘する(3けなし)
3.弱点を克服する「代案」を提案する(代案提示)
という単純なゲームです。
いわば、「論文指導」という局面を授業に取り込み、ゲーミフィケーションしてみたとも言えるかもしれません。
大学院生には、禁止項目として
「論文をけなしまくる」のはなし。
まずはいったん褒めて(1ほめ)、その上で、建設的な批判をする(3けなし)(笑)。基本は「1ほめ、3けなし」ですよ、と。なぜなら、「あなたは指導教員」だから。学生のモティベーションをあげながら、クオリティをあげなければなりません。「こてんぱんに叩かれ、くそみそ言われるだけ言われて、発憤て、目を輝かせる学生」は、僕の経験上、ひとりもいません。
あと、
「ちゃぶ台返し=オラオラオラーと論文の枠組みをぶちこわして、悦に至るような指導」
はなし!
なぜなら「あなたは、これまで指導してきたら」(笑)。論文の枠組みをつくることに、これまでコミットしてきたはずなので、それをちゃぶ台返しするのはなし。
あと、
「人類の課題の無茶ブリ=そもそも、そんなデータをとれないよ、という無茶な方法の押しつけ」
は禁止! なぜなら、もう論文はできているから(笑)。
とつげました。
要するに「品のある指導」をしなさい、と(笑)。あくまで、今、行うことは「一歩先行くお手伝い!」ですよ、とお願いしました。
そこで、特に大切なのは「建設的批判」に基づく「代案提案」です。
そこでは「論文のロジックを補強してあげる」「より精緻な研究方法・分析方法を提案してあげる」「今からでも可能な実験デザインを提案してあげる」ということにしました。
▼
結果は、(小生の力量不足で!泣)アイオープナーな議論とまでは・・・いかなかったのですが、いつもよりは、少しだけ前向きな議論ができたのかな???と思っています。
「プロフェッサー田中さん、いかがですか?」
「プロフェッサー浜屋さん、コメントをお願いします」
「プロフェッサー高崎さん、何が改稿のポイントですか?」
と指名すると(笑)、皆さん、「プロフェッサーになったつもり」?で論文指導をなさっていました。ただ、意外にも「論文をほめること」と「代案を提示すること」というのは、なかなか、まだ難しいのかな、という印象がありました。
まぁ、また少し試行錯誤して、少し慣れてきたら、違うゲーミフィケーション場面も試してみようかな、と思っています。
そして人生は続く!
ーーー
【Translation】Title : Comment as if you were a supervisor!
In graduate school, I have a course named “Management Learning” in which every graduate student reads a professional research paper, published in a top journal, and discusses it with other students. I provide only 20min lecture. Discussion is the main learning activity.
One week ago, I hit upon a good idea to improve my course by using a game style. It is a game which I call “Comment as if you were a supervisor”.
In this game we don’t have simple discussion. I thought it would be better and fun if we could make some comments on the paper as if we were academic supervisors.
Procedure is as follows.
1.At first, we have to read the paper, find good points and praise the author.
2.After that, we have to find more than three weak points (leap of logic, insufficient data and so on) in the paper.
3.At last, as if we were academic supervisors, we have to give some alternative ideas to the author to improve the paper.
How simple this game is ! We could call it “Academic gamification” because we have introduced a sense of game into the academic activity.
The most important thing is for the students to make some constructive alternative ideas. Otherwise they will point out and criticize the bad points.
For example, if the logic of the paper is not strong, we have to reinforce the logic as if we were academic supervisors. If the author of the paper doesn’t have good research methodology, we can propose the appropriate methodology.
▼
As a result, although we haven’t had eye-opening discussion(!), we could discuss more constructively than before.
I asked the student:
Professor Tanaka, What do you think?
Professor Hamaya, Please comment
Professor Takasaki, What is a point to improve this paper?
Each student answered as if they were academic supervisors. I think it is difficult for students to find and appraise good points and to make alternative ideas constructively.
However this game has just got started. I think they’re going to get accustomed to it and to have fruitful discussion in some weeks.
Life goes on!
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