2014.6.10 08:27/ Jun
学生ではあるけれど、今までとは少し違う
社会人ではないけれど、全く違うとも言い切れない
就職活動を終えた「内定時期」というものは、いわば「どっちつかず」の時期でもあり、「学生の終焉」と「社会人の開始」の中空に存在する「境界」の時期でもあります。
しかし、この時期というものは、実は、「キャリア論の観点からなされる就職研究」「経営学的観点からなされる社会化研究」と比べて、学術研究の知見が圧倒的に限られている領域でもあります。
「全くない」というわけではないのですが、わかっていることはそう多くないのです。
今年、中原研究室では、いくつかの共同研究プロジェクトが走っていますが、そのひとつ「トランジション研究会」では、2010年に大学3年生だった方の追跡調査を通じて、その間に生じた移行を探究しています(東京大学と電通育英会と京都大学の共同研究です)。
トランジション研究会のメンバーは、吉村ゼミ長を筆頭に、舘野さん、高崎さん、保田さん、濱屋さん、田中さん、中原です。
「探究の中心的領域」のひとつにあげられるのが、この「内定時期」です。だって、ブルーオーシャンだから(笑)。
たとえば、ある人が組織に新たに参入するときには、リアリティショック(こんなハズじゃなかったという幻滅体験)とよばれる「ネガティブな心理的変化」を経験します。
一般に「内定時期のフォロー施策」というものは、こうしたリアリティショックを軽減することも視野にいれ、様々な施策を考えるところもあるのですが、メンバーからの現段階の分析結果によると、リアリティショックの低下は、内定時期の様々な施策とはあまり関係はないということがわかってきました。
つまり、リアリティショックは、どんな施策を実行しようが生じてしまう、ということです。であるならば、むしろ、それが起こったとき、かつ、過剰であった場合の対処の方が問題となります。
「たかがそんなことか」と思われるかもしれませんが、研究というものは、そういうものです(どうも、研究をすれば、常にアイオープナーなすごい現実が見えてくると思われる傾向がありますが、そんなことはありません)。ひとつひとつ実証データを積み重ねて、ようやく現象の実像がおぼろげながらに、わかってくるものなのです。その分析さえ、自分が思い描いていたとおりに、パパーンと綺麗に仮説が検証されることは、そうですね・・・感覚的には、100個仮説があって、1個くらいでしょうか。ていうか、ほとんどないね(泣)。
そういうトランジション中におこるひとつひとつの出来事について、実証的に研究していくことこそが、このプロジェクトの目的です。
現段階は、それぞれの出来事・要因をしらみつぶしに分析しているところで、まだまだ、自信をもって、お出しできるようなものはないのですが、メンバー一同、少しずつ、こうした研究を進めたいと思っています。
ちなみに内定時期に関しては、経営学習研究所・理事の田中潤理事が、興味深い公開研究会を企画してくださっています。2014年7月6日(日)14時から17時までです。
「内定時期をどのようにデザインするか、どのように生活するか」というテーマで、様々な話題が展開されるようです。非常に興味深いですね。こちらの方も、どうぞお楽しみに! すでに応募がはじまっておられるようですが、くれぐれもお早めに!
経営学習研究所sMALLラボ 「内定時期というトランジションを考える」
http://goo.gl/3YIkaI
そして人生は続く
–
追伸.
雑誌「週刊東洋経済」(6月14日発売)に、先だって刊行させていただいた「活躍する組織人の探究 大学から起業へのトランジション」(東京大学出版会)の書評が掲載されました。福山大学の中沢孝夫先生からの御書評です。心より感謝いたします。ありがとうございました。
活躍する組織人の探究(東京大学出版会)
http://ow.ly/xOqLx
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