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2011.12.24 11:26/ Jun

【INHOUSE】準備ワークショップ2日目を終えて:「内製」と「内製化」を分けて考えたら、少しだけ、見えてきたもの

 先日、都内某所にて、【INHOUSE】の準備会(ワークショップ)第二回目を実施しました(ややこしくて、またまた、すみません。本当の【INHOUSE】はこれからなのです・・・企画委員会を開催して、何をしていこうか、議論しようと思ったところ、嬉しいことにたさくさんの方々から賛同いただき、準備会ワークショップになってしまった、という経緯があります)。
 先日は、ゲストに「リーダーは自然体」を金井壽宏先生らと執筆なさった増田弥生さんをお招きし、”内製化”の動きがすすむ中での、企業内の人材育成のあり方、新しい研究会の方向性について、皆さんで考える機会を持ちました。

 まずは、ご参加いただいた皆様、増田さん、そしてファシリテータをおつとめいただいたKさん、プレゼンいただいたKさん(Kさん続きますね)、ありがとうございました。心より感謝いたします。
INHOUSE.jpg
 ワークショップ2日目は、議論を進めているうちに、面白く、また大変興味深いことに「内製化」という概念について、整理する必要があるね、まだ全然の必要があるよね、という話に収斂していきました。いろいろ議論をしていくうちに、僕も含めて、様々な「モヤモヤ」が発生しました。
 以下では、当日の議論をふまえ、僕なりに整理したことを書きます。
  ▼
 まず概念整理です。「内製」「内製化」という言葉のしめすところが、人によって異なることがわかりました。これらの言葉は、似ているけれど、それらは違う。そして、ここをきちんと整理することが、実りある議論につながることがわかりました。
 ですので、まずは、この定義から行っていきたいと思います。以下の定義は、あくまで私見・独断・偏見ですが、
「内製」とは、
「企業人材育成のあり方を、企業内部の人が、経営戦略と現場の状況をみすえた上で、自らビジョンを描き、イニシアチブをもったうえで実行可能にしていくプロセス」
 と定義します。詳細はあとで記述します。
 有名なHall(1984)の定義によりますと、
 人材育成とは、
「企業が経営戦略・経営目的達成のために必要なスキル、能力、コンピテンシーを同定し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援することで、人材を企業経営に計画的に供給するための活動と仕組み」
 のことです。
 ということは、「内製」とは、人材育成の活動そのものをさすことになりますね。そして、それを「すべて外に渡してしまう」ということは、やや矛盾したことになります。
 もし教育や人材育成が、経営戦略・経営目的をみすえて、他社に抜きんでるような競争優位を導く源泉のひとつであろうとするならば、それは企業毎に特殊な人材育成のかたちが模索されるべきです。その仕組み・枠組みのすべてが、競合他社と同じ、ということはありえません(コンテンツの一部が、他社と同じであっても全然OK)。
 そして、そうした企業特殊の人材育成システムを構築するためには、内部のことに精通し、もっとも内部を知り得ている人が関与しない、ということはありえない、ということになります。つまり、それをすべて外注するというのは、人材育成が「経営戦略」にも同期せず、「競争優位」にもつながらないことを意味します。
  ▼
 次に「内製化」を考えます。
 こちらもあくまで私見の定義ですが、
 「内製化」とは一般に
 「企業人材育成のデリバー(研修・コンテンツ)の一部で、(これまで外部に外注していたものを)、内部で行うこと」
 を指しています。
 より具体的には、
 「内部の人が、内部の人に向けて、インストラクション・ファシリテーション・コンテンツ開発を行うこと(デリバーすること)」
 と定義してもかまいません。
 この2日間の準備会ワークショップを踏まえて、このように「内製」と「内製化」をわけて考える必要性を痛感しました。先日のワークショップで議論になったのは、この「内製」と「内製化」の概念の混乱であり、何が今人材育成の領域において、イシューなのか、ということでした。同じ「内製」という言葉が含まれますので、話が大変ややこしいのですね。
 もし可能ならば、
 
 もう、「内製」って言葉を使うことをやめませんか?
 当たり前すぎて、もう。
 ややこしくて、もう。
(内製という言葉を使ってたのは、アンタだろ、というツッコミが聞こえてきそうですね。おっしゃるとおりです、申し訳ございません。そうなんです。心からお詫びいたします。でも、ワークショップを踏まえて、問題がよくわかりました。)
(ちなみに、増田さん含め、その後、米国企業につとめる何人かのかたに、米国のHRDでは、「内製」「内製化」に対応する言葉はない、とのこと。面白いですね)
  ▼
 
 次に、これらを踏まえて、人材育成のプロセス(内製のプロセス)を3つに分けて振り返っていきましょう(内製っていう言葉を使わなくても、もういいんですけどね。あえて、この記事では、これまでの経緯を踏まえて、この言葉を残しておきます)。
 この作業をする上で、人材育成を敢えて「人材開発(≒研修)」と「組織開発(研修以外の、組織を動かすための施策)」にわけます。この分け方がざっくりしているのはわかっているのですが、ごめんなさい、敢えてやります。
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 まずは研修の場合。
「内製プロセス」、いいえ、「人材育成のプロセス」は、下記のようになるはずです。敢えてざっくりと3つのプロセスで説明させていただきます。1.イニシアチブ、2.デリバー、3.アフタフォローの3つです。
1.イニシアチブ
 経営戦略に照らして、自らイニシアチブを発揮し、人材育成のグランドデザインを描く。別の言い方をすれば、戦略、外部環境からてらして、HRDポリシーをつくることに他なりません。場合によっては、外部の支援を受けることも多分にあるでしょう。すべてが内部でなくてもよいですが、”内部の人が関わらなくてよい”ということは、たぶん、絶対にありません。
 内部の人々が「イニシアチブ」や「思い」をもって、ビジョンやポリシーなど、具体的なデリバーの大枠になるようなフレームワークを構築していく必要があります。
 そして、このイニシアチブを外部に渡してしまう、ということは、先ほど述べましたように、人材開発が「経営戦略」にも、「競争優位」にもつながらないことを意味します。人材開発部門のレゾンデートル(存在証明)を失ってしまうことと同義です。
2.デリバー
 1で描いたもののうち、研修やワークショップで解決するべきところに関しては、基本は内部でデリバー(インストラクション・ファシリテーション)を行います。もちろん、内部だけですべてをカバーできるわけではありません。内部でできるものと、外部でできることを峻別していく必要があります。外部パートナーとの戦略的連携、という視点がここででてきます。
 何を内部で、何を外部での統一した基準はありません。内部の人の給与水準、かけられる人的リソースにも、それは依存するからです。外部に外注するべきものは、増田弥生さんの言葉を借りるならば、
「1.外部でもいいもの」
  ・組織内にナレッジが蓄積しなくてもよいもの
「2.外部の方がいいもの」
  ・組織内の説得に外部であった方が都合のよいもの
  ・高度に付加価値のある、内部にはないコンテンツ
 ということになります。これはひとつの基準だと思います。
 そして、ここが「内製化」の関与してくるところです。
 従来は、上記のうち、外部に外注していたものを、中で行うようになってきているようですね。たぶん内製化されつつあるのは、「1.外部でもいいもの」ではなく、「2.外部の方がいいもの」です。
 1は定義からして、もともと組織内にナレッジがなくてもよいものですので、中で行う必要がありません。「2.外部の方がいいもの」のうち、「内部でも可能」だと判断されたものが、内製化されているのではないでしょうか。
 
 その背後には、
1)コストの問題
2)現場の要請に応える企業特殊のコンテンツが必要になってきたこと
3)人事部・人材開発部のデリバラブルを高める問題
4)ソーシャルメディアやインターネットの影響などで、人事や人材開発の方々が、直接、人材開発の知識・情報ソースにふれるようになっていること
5)人材育成における「経験」の重要性が認識されるようになってきたこと(この重要性が認知されるということは、畢竟、企業特殊の”現場経験”、あるいは”業務経験談から派生する教訓(持論)”が、学習リソースとして重要視されることにつながります。よって、企業個々の状況に依存しない内容に加えて、各企業特殊の経験・持論を中心に人材育成が構築される可能性が高くなります。そのリソースをもとに学習プログラムを構築する主体として、内部人材が適当ということになれば、内製化が選択されます。各企業特殊の経験・持論を効果的に共有する主体として、内部が難しい場合には、外部が積極登用される可能性が高まります。よって、これが一概に内製化の理由とは言えません)
 などがあることを、これまでも指摘してきました。ポイントは、内製化は、一般に1)だけが原因として語られますが、決して、それだけではない、ということです。
 しかし、ここに問題がないわけではない。
 むしろ、「噴出」している。問題のやまといっても過言ではないかもしれません。
 2日間のワークショップを通じて、共通してきた問題点は、
1)インストラクター、ファシリテータの教授スキルの確保
2)提供している教育・コンテンツの質保証の問題(自信が持てない)
3)内部・外部の選択がうまくいかない(よって、クオリティが担保できない)
 などでしょうか。
 要するに、「クオリティの担保」が最大の課題のようです。この問題は、実は、企業内人材育成を行う側の専門性を高め、提供されている教育の質保証を行っていく「仕組み」が、いままで、あまり注目されていなかったことがあるのだと思います。
 例えば、増田さんによりますと、米国のHRの場合、米国の先進企業の場合には、「ファカルティデビュー」の仕組みが存在します。きちんとした専門性・スキルをつけてから、教え手としてデビューできるよう、仕組みを整えている、ということですね。おそらくは、外部教育機関の果たす役割が少なくないと思います。
 要するに、コーチング、ファシリテーション、インストラクション、様々なスキルを短期間で獲得してもらい、他者からレビューされて、専門性を高めていくのです。「教師教育学(Teacher education)」の企業版と考えて良いですね。
 また、外部の人材育成専門家に関与してもらい、イニシアチブを立ち上げる際にコンセプトメイキングを手伝ってもらったり、定期的にレビューを行ってもらうことで、質保証を実現している企業もあるそうです。
 このように、内製化をすすめるのであれば、最低限のクオリティを確保し、さらには維持していく仕組みがセットになって論じられる必要があります。ここにも、外部との戦略的連携の可能性が拓けていますね。ここがまず、今後、考えていかなければならないポイントかもしれません。
3.アフターフォローと評価
 最後にアフターフォローと評価です。
 前者は、ある意味で「非日常であった研修」を「日常」に接続する仕組みです。別の言い方をするならば、研修で学んでもらったことを、職場でも実践してもらうようにする仕組みです。これは基本的には内部の人が関与しないということはないでしょう。しかし、外部からも定期的なサポートを得られる可能性もあるかもしれません。
 後者は、かけた教育のアカウンタビリティを示す、ということです。数量的に評価するのだとしたら、専門的知見をもった外部と戦略的に連携するということになりがちであると思います。ここは、専門的知見を持ちにくい(ジョブローテーションで、たまたまアサインされた場合には)内部には難しくなるかもしれません。
 以上が研修の構築プロセスです。
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 次に「組織開発系」です。ここでいう組織開発とは、「組織図を描くこと」や上記の「研修」以外で、組織の卓越性・協働性を高める施策をひとくくりにしています。具体的には、「ビジョン・理念系」や「つながりの創出」などがあるでしょう。
「ビジョン理念系」とは、ここでは、組織理念の共有や再確認のために、組織内部で定期的に開催される会のことをさしていいます。
 後者の「つながりの創出系」は、「組織が専門化・機能分化しつづけたことに対応して、組織を超えた問題解決を行うときに、異なる組織間のメンバーが集められて実施されるもの」あるいは、「社内のつながりが希薄になってきたことから、公式組織を超えて、組織メンバーの「関心」に基づいた社内コミュニティがつくること」でしょうか。
 
 こちらの場合は、そもそも外部に外注されていることは、それほど多くはなかったと思います。ですので、内製化の問題として考えることが適当かどうかはわかりません。もちろん、外部の素晴らしいファシリテータの力を借りて、上記を実施した事例も多々あります。
 これらを内部で実行していると、様々な問題が発生しているようです。
1)会が属人化してしまい、必要な組織開発業務が、人についてしまう
2)ファシリテーションスキルの高低があるため、職場によっては、うまくいかない
3)組織全体に広めるためには、マニュアル化をしなくてはならないが、どうまとめてよいかわからない
 などでしょうか。
 組織開発系の「内製化」の問題点は、こうして見ると、「組織開発スキルの水平共有」「ファシリテーションスキル」などの専門性開発、であるということになりますね。いずれにしても、専門的な知見が必要です。外部パートナーとの戦略的連携が必要になるのかもしれません。
  ▼
 以上、ざっくりとですが、先日の会の内容を振り返ってみました。このほかにも、様々な議論が起こっています。Kさんがまとめサイトをつくってくださいましたので、もしよろしければ、そちらもご覧ください。
【INHOUSE2日目】
http://togetter.com/li/231269
 一応、これで準備会は終了ということになります。今後は、何らかのかたちで、会をオープンにして、様々な方々のご参加をいただきつつ、これらの諸問題にそって、何らかの「学びの機会」を実践していきたいと考えています。
 それが、どういう形になるのか、どういうイニシアチブ(組織)が関与するかは、また関係者の皆様と、年明けに議論させていただければと思っています。下記で、今後も情報提供させていきますので、どうぞご覧ください。
【INHOUSE : FACEBOOKページ】
http://www.facebook.com/pages/INHOUSE/255545127832314
 最後になりますが、ご参加いただいた皆様、増田弥生さん、ファシリテータをおつとめいただいたKさん、プレゼンいただいたKさん(Kさん続きますね)、に、心より感謝いたします。
 ありがとうございました。
 そして人生は続く!

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