NAKAHARA-LAB.net

2011.12.21 22:14/ Jun

Learning Science”s”の現在!:ワシントン大学・大浦弘樹君とのトークライブ

 今日は朝から怒濤のような一日を過ごしました。
 早朝朝っぱらから原稿2つを校正・脱稿し、電車に飛び乗り、本田技研工業・青山本社へ。同社のTさん、Hさんに貴重なヒアリングの機会をいただき(心より感謝です!)、昼に大学へ。
 いくつかの書類を書いて、その後、お客さんが来研。以前よりお逢いしたいと思っていた「仕事漂流」の著者・編集者稲泉連さん、プレジデント者の九法さんと一通りディスカッション(取材)をしたあと、東大病院でMRIの検査へ(先日健康診断でひっかかった・・・ダイジョブか、オレ? 涙)。

 はじめてのMRI検査は「頭のあたりで一斗缶をガンガンと叩かれるような音がするという噂」を鵜呑みにして恐怖に戦いていたものの、実際検査がはじまってみると、小生、あまりに疲れていたので、なぜか検査中爆睡。看護師さんに失笑をかってしまいました(いいのかな・・・)。
 その後、研究室へ帰って、UST中継。さらに電車に飛び乗り、保育園でTAKUZOを迎えて、今、ようやく、日記という感じです。。。ふぅ、、、あっという間だぜ、一日は。
  ▼
 UST中継は、
  “ワシントン大学・博士課程 大浦弘樹君の語るLearning sciences研究の現在”
 というテーマで、中原、大浦君、秋山久美子さん(元・ブルータス編集部、MIT)をまじえ、ゆるゆるとトークしました。下記で録画が公開されていますので、ぜひご笑覧ください。中継を手伝ってくれた、中原研究室D3脇本君と、M0の保田さん、心より感謝です。

 大浦君は、現在、フィリップ・ベル、ジョン・ブランスフォードなど、「学びの科学(学習科学 : Learning Sciences)」を研究している方なら、知らないでいることを許されない人々が、ファカルティをつとめる、学習科学のメッカで、研究をなさっています。
ワシントン大学 Learning sciences
http://education.washington.edu/areas/ep/deg_programs/learning_sci/
 かつて、彼は、僕の所属する研究センターで、特任研究員をつとめておられました。そんなことから、今回久しぶりにお逢いし、UST中継が実現しました(久しぶりにお逢いできて嬉しい事です)。
 大浦君からは、Learning sciences(学びの科学)のホットイシューとして、
0)デザイン実験(design experiment research)という方法論が当たり前になりつつある。実験室研究で、学習の原則を見出し、それを現場に落とすという従来の研究と実践現場の関係図式が崩れつつある。むしろ、研究者が実践者と協働し、現場をインプルーブ(改善)し、そこから土着のセオリーを立ち上げる努力がなされつつある。
1)米国では「学び」の再定義が進んでいる。学ぶとは「知識を蓄積すること」から、「社会に関連のある物事に参加すること」へ。それに伴い学習研究の射程がツール・カリキュラムのデザインを超え、組織・制度・教師教育のデザイン、さらにはネットワーク構築にまで拡張されつつある。
2)「学びの科学」を推進する場合、心理学・社会学・脳科学など、異種混交の専門家のCollaboration and coordinationが必要になる(だから、学びの科学の英語訳は、Learning scienceではなく、Learning sciencesなのですね)。その際、どのように緊張・葛藤を乗り越え、いかに教育現場を乗り越えるかが問題になっている
3)評価で何をはかるか、何をLearning outcomeとして設定するかが問題になっている。量的手法によって、最終的にはラーニングの成果をはかるにしても、その以前に、量的測定の指標作りのため、質的研究の果たす役割は大きいのであないだろうか
4)学習者や学習機関の社会的属性にセンシティブな学習研究が注目を浴びている
 というお話がありました。それぞれ、非常に面白いテーマですね。特に僕は1とか4に関しては、いろいろ言いたいことがあります。ツールやカリキュラムのデザインを超え、「学びのデザイナー」は、組織・制度のデザインにまで射程を広げるべきだと、僕はかつて小論で主張していました。また、被験者の社会的属性を統制した実験の必要性に関しては、近年、問題を感じていました。 
 ともかく・・・「学びの科学」は、猥雑で、怪しく。。。従来の学問分野の既存の枠組みを超え、様々な人々を巻き込みつつ、現場の改善のために動いています。それは、最初から最後まで、学際的な研究なのです。
 そして、学びの現場に何らかの貢献をしたいと願い、現場の方々と協働関係をむすび研究を進める研究者が、世界中に多々いることが確認できたことは、僕にとって、非常に嬉しいことでした。
 そして人生は続く。

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