2011.4.7 16:17/ Jun
慶應MCCでの僕の授業「ラーニングイノベーション論」の卒業生の勉強会が昨日開催されました。
今回のテーマは「災害後のメンタルヘルス」。精神科医・産業医の野口海先生をお招きし、専門家の立場からショートレクチャをいただいたあとで、中原のファシリテーションのもと、皆さんと対話を深める機会を持ちました。
その内容・概要は、後日の中原×野口先生のインタビューも含めて、後日、専門誌「人材教育」の特集として掲載される予定です。近々ですので、どうぞお読み頂ければと思います。
(今回の特集は、JMAM「人材教育」編集部さんのご協力で、無料で公開いただけるそうです。この場を借りて、JMAM「人材教育」編集部の皆様に、感謝いたします)
▼
今なお、私たちは「見えないもの」に不安を感じる日々が続いています。かくいう、僕も、時に「楽観的」になりつつ、時に「悲観的」になりつつ。日々上下する「気持ち」を見つめ、過ごしている状況です。
しかし、震災は「見えないもの」を私たちに突きつけるだけでなく、「これまで見えなかったものをはからずも、見えるようにもしてしまった」のかな、と最近、感じています。
つまり、震災は、組織の中で私たちがふだん仕事をする上では「なかなか目に見えてこないもの」を可視化してしまったのだ、ということです。
研究柄、企業の方とお逢いすることが多いのですが、多くの人々の口からは、様々な「企業・職場の今」が語られます。
例えば、
●こんなときだからこそ見えた組織のトップの度量、リスク感覚
●万全だと思われていた緊急時対応の意外な脆さ
●「不急の仕事」であると見なされ、仕事にキャンセル
が続く人々が、自分の仕事の意味を問い直しはじめたこと
●マネジャーの「世界観」は多様であること
楽観的なマネジャーと悲観的なマネジャーの確執
●個人情報保護の過剰対応により、なかなか進まぬ安否確認
希薄な職場の人間関係、つながり
●人それぞれに異なるキャリア観・仕事観・労働観
●「マネジャーの仕事」に感じていた矛盾
自分としては「なかなか仕事が手につかない」状況
なのに、部下に対しては「大丈夫」と語ることに
対する矛盾
・
・
・
などなど。。。
今、わたしたちは「見えないもの」に苛まれながら、これらの「見えてしまったもの」を「内」に抱えつつ、時に自分のキャリア観・組織観・労働観を激しく揺さぶられ、イレギュラーな仕事にキーキーになり、レギュラーな仕事を黙々と取り組んでいることもあるでしょう。組織、個人によって状況は全く異なりますが、よく見聞きする状況は、こんな感じです。
▼
けだし「震災」という「悲劇」はひとつです。
しかし、「わたしにとっての震災」は、決して「一様」ではありません。
そして、そのことがまた、私たちの「心の有り様」をうまく保つことを難しくしている側面もあるのだと思います。
2011年3月11日午後2時46分・・・わたしたちが、どの場所で、どのような状態で、誰といて、どのような経験をしたか。さらにはその人の「出身地」がどこで、どのような「家族構成」なのかによって・・・本当にひとりずつ「震災のストーリー」が微妙に異なります。
ゆえに、どのような「距離感」で、どのような内容から、このことを話していけばいいのかに悩みます。組織・職場の中でも、「誰」が「どのように」、この震災を受けとめているのか、皆わからず、疑心暗鬼になってしまう場合もあるようです。まさに進行中のこの出来事を、どのように「意味づけ」ていけばいいのか、私たちは「戸惑い」ます。
今はそのような時期なのかもしれません。
それもやむなきことなのかもしれません。
今、事業ライン・生産ラインの復旧が急がれる中、今、「人」に対するケアまで、十分提供できる余裕をもっている組織は、なかなか、ないものです。
しかし、このような事態だからこそ、近い将来には、「不安を感じている個人」、「見えてしまったもの」に苛まれる職場のメンバー」、「傷ついてしまった組織」の「ケア」が必要になるのだろうな、と感じています。
最後になりますが、野口先生、幹事団の皆様、そして保谷さん、ありがとうございました。素晴らしい学びの機会をつくることができました。参加してくださった皆さんも、ありがとうございます。お逢いできて嬉しかったです。
そして人生は続く。
—
■2011年4月6日 Nakahara Twitter
Powered by twtr2src.
—
■2011年4月5日 Nakahara Twitter
Powered by twtr2src.
—
■2011年4月4日 Nakahara Twitter
Powered by twtr2src.
最新の記事
2025.1.18 19:13/ Jun
2025.1.16 14:19/ Jun
2025.1.14 08:44/ Jun
2024.12.31 22:23/ Jun
2024.12.28 09:58/ Jun