NAKAHARA-LAB.net

2009.4.28 07:15/ Jun

ワークプレイスラーニング2009の事例企業選定!

 先日、第四回目のワークプレイスラーニング2009企画委員会が、東京大学にて開催されました。
 このブログで前々からお伝えしたように、今年のワークプレイスラーニング2009では、その企画のプロセスを、すべてこの場で公開いたします。
 プロセスを公開いたしますと、僕のメールボックスには、皆さんからの様々なメッセージが届きます。それを企画メンバーに伝えつつ、企画プロセスに活かしていくことをねらっています。
第1回企画委員会
https://www.nakahara-lab.net/blog/2009/02/post_1446.html
第2回企画委員会
https://www.nakahara-lab.net/blog/2009/03/2009.html
第3回企画委員会
https://www.nakahara-lab.net/blog/2009/04/2009_2.html
 年に一度、安田講堂で華々しく開催しているワークプレイスラーニング2009は、かくして生まれているのですね。そのBackstage(楽屋)をぜひ、ご覧下さい。
 ▼
 今回の企画委員会は、テーマの確認から行われました。ワークプレイスラーニング2009の大会テーマは、
 ”経験とつながりのデザイン”
 です。
 
 1.経験学習による”個”の成長のデザイン
   ≒個人の能力開発
 2.”個”と”個”のつながりのデザイン
   ≒組織の開発
 をいかに両立するか。そして、その先には、
「個人と組織のいかなる関係が望まれているのか」
 を考察したいと思っています。
 今年は3つの企業事例を素材に加えて、経営学・教育学・心理学・社会学などの異なる専門性をもった研究者による解説、そして、皆さんのディスカッションをまじえ、この「問い」に答えていきたいと思います。
 昨年度の反省点をふまえ、企業事例は4つから3つにすることになりました。その分、濃密な解説、濃密なディスカッションができることになると思います。
  ▼
 今回の企画趣旨を確認したあとで、いよいよ今日のアジェンダである企業事例候補の選定となりました。途中、長岡健先生から下記のような問題提起がありました。
1.聞いただけで満足してしまう、あるいは聞いてお腹いっぱいになってしまう事例ではなく、会場に「話題」が生まれるような事例を選んだ方がよい。
2.企画委員が「自分の聞きたい話はこれだ」という観点から事例を選ぶのはまずい。今のフェイズでは、あくまで企画者として「どんな話題を設定して安田講堂をどのような場にするのか」というの観点から事例企業を考えるべきである。
 確かにおっしゃるとおりです。
 いつものように、長岡先生は鋭いですね。
  ▼
 企業事例の選定にあたっては、それぞれメンバー各人が、事例を持ち寄って、それを共有することからはじまりました。この場ではご迷惑がかかってしまうので企業名をだすことはできませんが、下記のような多岐にわたる企業が、話題にあがりました。
 ○I食品
  ・リストラをしない経営で有名
 ○N産業
  ・個の成長と組織コミュニケーションの活性化を
   ねらった経営
 ○自動車ディーラーA社
  ・カリスマ経営者による経営品質の高い経営
 ○T工業
  ・社内におけるコミュニティづくり
 ○Dホテル
  ・非正社員・アルバイトを含めた成長の場づくり
 ○製薬会社H
  ・個人の成長と組織力向上をめざした施策
 ○外資系企業B社
  ・プロジェクト終了後のリフレクションを行う
  ・社外の外部ネットワークによる学び
 ○オモチャメーカーC社
  ・仕事の面白さで個人を魅了する経営
 ○外資系通信N社
  ・個人を「育てること」はしない経営
  ・専門職を採用する経営
 ○外資系コンサルM社
  ・プロジェクトごとの経験学習
  ・メンター制度(Know who)
 ○広告代理店
  ・仕事のきつさと学習
  ・疑似コミュニティ制度の導入
 ○N工業
  ・管理することを一切放棄した経営
 ○外資系ホテルR社
  ・高級なサービスを体験して学ぶ
  ・理念による経営
 ○某システムインテグレーション企業
  ・ポテンシャルのある人を採用する
  ・入社してからは現場でストレッチさせて、
   自ら育つ環境を、自分でつくらせる
 ○某メディア系企業
  ・自分で仕事をデザインする
  ・育てる環境をなくす、育つ環境をつくる
 ○A重工業
  ・社員同士が教え合う勉強会(学びの場づくり)
 ○U飲料メーカー
  ・10数年にわたって実施されているメンター制度
  ・離職率が低い
 ○I銀行
  ・私塾形式の勉強会運営
  ・若手社員の参加は任意
 ○P銀行
  ・現場の学びと研修が連携した
   支店長(マネジャー)教育
 
 ○M工業
  ・エンジニア同士が学び合う勉強会をつくる
  ・現場のナレッジ共有、マネジメント、
   DNA継承が一緒になっている
 メンバーからあげられた上記の企業事例をさらに詳細に検討しつつ、議論を重ねて、ようやく3つの企業事例候補を決定することができました。現在、交渉を開始しています。
 昨日の段階で1社からご快諾をいただきました。
 残り2社です。
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追伸1.
「人が育つ組織デザイン」本の執筆者会議が、昨日、ダイヤモンド社の石田さんをまじえて、東大で開催されました。各章の骨子について確認しましたので、いよいよ執筆開始となります。
 出版は秋頃の予定です。各種の調査データ、理論をご紹介する、育成に悩む現場マネジャー向けの本になる予定です。
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追伸2.
 慶應丸の内シティキャンパスの授業「ラーニングイノベーション論」が「満員御礼」になったそうです! めでたい>井草さん、保谷さん。
 講師の先生方、保谷さん、井草さんと協働しつつ、素敵な学びの場にしたいと考えています。
 あと数席追加を受け付けることもあるようですので、よろしければぜひご検討いただければ幸いです。
ラーニングイノベーション論
http://www.keiomcc.com/program/lin/index.html
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追伸.3
 金井壽宏先生との共著「リフレクティブマネジャー – 働くみんなの学び論(仮題)」(光文社新書)の執筆が、このGW、佳境に入ります。
 金井先生をはじめとして、光文社の黒田さん、秋山さんとのコラボレーションが楽しみです。
 —
追伸.4
 中原がファーストで書いている論文は、また再分析に入っています。何とか5月でメドをつけたいと思っていますが、いやはや(笑)なんとも(笑)。ちんたらしてすみません。
 共同研究の第一弾は、松尾先生・中原の連名で6月の組織学会(東北大学)で、松尾先生がご発表なさいます。
職場の学習風土に関する定量的研究
神戸大学大学院・経営学研究科 松尾 睦
東京大学・大学総合教育研究センター 中原 淳
 —
追伸.5
 中原・松尾先生が監修した組織診断ツール(調査)が、近日中、ダイヤモンド社から発売される予定です。一番最初の調査から考えれば、足かけ3年かかっています。何度も何度も調査を繰り返し、「質問項目」を精査し、ようやくここまで来ました。担当の永田さん、浅井さん、荻原さん、井上さん、お疲れ様です、もう少しですね。組織診断ツールの方は、既に分析を終え、システム開発に入っています。
 今、取り組んでいるのは組織診断の結果を用いて(Survey feedback)、どのようなワークショップを社内で開催するか、ということです。そのためのマニュアル、ツールなどの開発を、アダットの福澤さん、生方さんをまじえて行うことになりました。こちらの方も、エッジの切れた作品にしたいと思っています。
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追伸6.
 大学院授業「組織学習システム論」がネットで公開されています。今日は第三回目の授業です。昨日研究室で大学院生が、苦労してパワーポイントの資料をつくっているのを見ました。ぜひお楽しみに。
iii online(組織学習システム論)
http://iiionline.iii.u-tokyo.ac.jp/index.php/
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追伸7.
 富士ゼロックス総合教育研究所との共同研究は3年間のうち、2年目に入りました。昨年は定量調査でしたが、今年は定性調査です。ご担当者の坂本さんが、今、先方とのあいだで交渉を進めてくださっています。お疲れ様です。ちなみに、3年目最終年度は定量調査をもう一度行う予定です。
 —
 皆さんとのつながりの中に、僕の仕事は、あります。
 ありがたいことです、合掌。
 そして人生は続く。

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