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2009.4.26 10:48/ Jun

これは「便器」ですか?、「アート」ですか?:藤田令伊著「現代アート超入門」を読んだ!


上の作品は、「アート」ですか?それとも「アート」ではないでしょうか?
あなたはどう思いますか?
そして、あなたがそう判断した理由はなぜですか?
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マルセル=デュシャン「泉」
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藤田令伊著「現代アート超入門!」を読みました。

 21世紀以降に生まれた技術と都市に関係の深いアート・・・いわゆる「現代アート」の読み方を解説した入門書です。
 個人的には、今年上半期に読んだ新書の中では抜群に面白かったです。
 通常、「現代アート」の入門書といいますと、「読めばよむほど、さらにわからなくなるもの」が多いですね(笑)、、、敢えて、ポストモダンの用語をちりばめて、衒学的なムードを漂わせていて、たぶん、書いている本人もわかっていないようなものです。
 本書はそんなことはありません。フツーの人の言葉で、フツーの人の目線で、さまざまな工夫をもって書かれています。でなければ、美術はいつも
「3」の僕が読めるはずはありません(笑)。
  ▼
 通常、アートといいますと、わたしたちは、下記のような思い込みや価値観をもっています。
1.写真のように描くことがアートである
2.美しいものがアートである
3.何が描いてあるかわかるのがアートである
4.感じさえすればよいものがアートである
5.アートの絵の主題は「見えるもの」である
6.アートは作家が自分で描かなければならないものである
7.アートは作者の主観が表出されていなければならない
8.アート作品は見る者が受け入れるべきものである
 しかし、現代アートとは、考えもつかなかった表現を用いて、上記のような、私たちの常識、価値観、思い込み、コンセプト、ステレオタイプを相対化します。
 先ほどのデュシャンの「泉」は、「なぜ、アートは作者がつくらなければならないのか」「なぜ、アートは美しくなければならないのか」ということを相対化し、問い直すためにつくられたようにも思います。
  ▼
 終わりなき日常の中で、わたしたちの中に澱のように堆積してしまった価値観に「裂け目」をつくること、それが現代アートなのかもしれません。
 さらに言葉を足すのなら、現代アートを見るとは、私たちが終わりなき日常の中でいただいていた「考え」や「思い込み」を問い直すこと – すなわち「学び」の機会にほかなりません。
 今日の関東地方は、風は強いけれど、天気はよいです。こんな日こそ、現代アートを楽しんでみるのはいかがでしょうか(今日は僕は仕事です・・・トホホ)。
 そして人生は続く。

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