2009.4.14 16:45/ Jun
今日から大学院は授業とゼミがはじまります。今年、僕の大学院授業「組織学習システム論II」は、iii online(アイアイアイ・オンライン)という東京大学のeラーニングシステムで、一般に公開されます。
iii online
http://iiionline.iii.u-tokyo.ac.jp/
どなたでも視聴することができますので、ご興味があれば、ぜひ、どうぞ(本日中にはアップロードされると思います)。
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実は、iii onlineは、僕にとっては、思い出深いサイトです。
何を隠そう、僕は、iii onlineの立ち上げプロジェクトの中心メンバーだったのです(iii onlineはexCampusというプロジェクトの一環でした)。
開発チーム
http://excampus.nime.ac.jp/introduction/team.html
iii onlineは、東京大学大学院情報学環とメディア教育開発センターの共同プロジェクトとして、2002年 – 2003年にかけて開発がなされました。
今から7年前・・・当時、僕はメディア教育開発センター(現・放送大学)というところで「助手」をしていたのですね。
プロジェクトメンバーは、東京大学の山内さん、学生だった酒井君(現・山形大学)と久松君(現・東京大学)、藤江君(現・任天堂)、松河君(現・大阪大学)、同僚であった西森さん(現・東京大学)、田口さん(現・京都大学)、望月君(現・専修大学)、武蔵野美術大学にいた八重樫さん(現・立命館大学)、吉田さん。みんなで協働して、このサイトを開発したが思い出されます。
僕の役割はプロジェクト総括。夜な夜な、メンバーとともに徹夜に近い作業を続けました。
今となっては、インターネット大学院などは、珍しくもないですが、当時は多くの新聞・メディアに掲載される事件でした。
サイトの開設前夜、東京大学情報学環で学環長をなさっていた濱田純一先生(現・東京大学総長)、メディア教育開発センター所長であった坂元昂先生(現・日本教育工学振興会会長・東京未来大学学長)、石田先生(現・東京大学大学院 情報学環 学環長)で、翌日の記者会見のため最終打ち合わせをしました。夜の本郷で夜8時を回っていました。今となっては、よい思い出です。
それから7年・・・当時学生であった人は、今や教員になり、あるいは、社会人として働いています。そのときは、まさか、僕自身の授業が、このサイトで公開されるとは思いませんでした。
人生何が起こるかわかりません。
過去7年も感慨深いですが、これからの7年も全く予測不能です。
▼
そして人生は続く。
—
追伸.
ちなみに、今年度から大幅に「ゼミのあり方」を変えた。
ゼミを、「教師 – 学生の指導の場」と捉えるのではなく、「教員、教員にゆかりをもつ人々、学生、それぞれの切磋琢磨の場」と考えることにした。「1×nの場」から「教員をコアとしたn×nの場」への転換である。
具体的には、テレビ会議システムを用い、遠方にいる中原の共同研究者でも参加できるように整備した。昨日は二名の研究者がテレビ会議でゼミに参加した。
また、舘野ゼミ長の発案で、コメントシート制度をつくることにした。今まで、発表者にコメントするのは、ほぼ教員に限られていたが(もちろん自由にコメントはできたけど、全員がコメントできるわけではなかった)、全員が発表者に対するコメントを、コメントカードに書いて、手渡しすることにした。
このコメントカードは、ゼミ長曰く、キャロル=ドウェックのGrowth Mindsetの理論を参考にしている、という。ともすれば、局所的で、辛辣で、ネガティブなものに終始しがちなコメントを、いかにポジティブで未来志向にするか、なかなか工夫がなされている。
組織文化論の泰斗、エドガー=シャインは、組織文化は文物にもあらわれる、と解いた。かくして、中原研究室の文化は、こうしたあーティファクトに宿る。
▼
学びを研究する人々が集まる場こそ、常に「学びのあり方」にセンシティブになるべきである。そして、自らの「学びの文化」を革新するべきである。
中原研究室は、そういう「場」を目指す。
学びの文化の革新に挑戦する人々の集まりである。
(以下、組織学習システム論のシラバス)
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東京大学大学院 学際情報学府 2009年度
夏学期授業シラバス
「組織学習システム論Ⅱ」
– プロフェッショナルの熟達を考える」
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■講義の概要
人は、人生の一定期間、学校という場所「だけ」で
学ぶわけではありません。学校を「卒業」した後でも
、会社や組織の中で、新たな知識を獲得したり、他者
と知識を共有したりしながら、仕事に日々取り組んで
います。
人は年をとっただけでは、学びをやめません。
人は、生けとし生きる限り、学び続ける存在なのです。
本授業では、従来あまりスポットライトがあたるこ
とのなかった、学校の「外」の学習 – 「企業・組織に
おける学習」に焦点をあてます。
特に「組織学習システム論Ⅱ」では、プロフェッシ
ョナルと呼ばれる人々が、どのような出来事を経験し、
一人前になり熟達していくのかをグループで研究します。
1)プロフェッショナルと呼ばれる人々は、どのような
経験から学び・成長しているのでしょうか?
2)プロフェッショナルの学びや成長には、どのような
他者からの、どのような支援が影響を与えるのでしょうか。
3)プロフェッショナルの学びと成長と組織は、どのように
相互に影響を与え合っているのでしょうか?
これを明らかにするために、グループで、プロフェッ
ショナルの職種を決めて、インタビュー調査を企画・実施
します。
インタビュー結果を定性的手法を用いて分析し、発表
していただきます。授業の前半では、そのための関連
文献を購読します。
なお、本授業の様子は、東京大学情報学環 iii online
に一般に公開します。グループでのプレゼンテーション
も公開いたします。作成したPPT、および発表中の
様子がインターネットで配信されます。
受講希望者は、上記の件、ご承知おきください。
東京大学情報学環 iii online
http://iiionline.iii.u-tokyo.ac.jp/index.php/
■想定される受講者像
・組織における知識共有、学習に関心のある方
・組織のおける人材育成、人間の成長に関心のある方
・組織変革や文化の構築等に関心のある方
■評価
下記の3点から成績をつける。
1.コメントカードによる出席点30%
2.プレゼンテーション(全員からの相互評価30%)
3.最終プレゼンテーション(全員からの相互評価40%)
なお、相互評価のポイントは下記の5点。
1.スライド・配付資料のわかりやすさ( / 5)
2.プレゼンテーション手法(声・身振り)( / 5)
3.質疑応答の適切さ( / 5)
4.理論の解説がわかりやすいか( / 5)
5.考察がなされているか( / 5)
■場所・時間
火曜日 3限(13:00)より
未定
■連絡先
中原 淳(なかはらじゅん)
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
東京大学大学院 学際情報学府 准教授(兼任)
Blog : http://www.nakahara-lab.net/
重田勝介(しげた かつすけ)
東京大学 大学総合教育研究センター
TREEオフィス コンテンツ開発室 特任助教
Blog : http://jamsquare.org/shige/
■授業アーキテクチャ
・イントロダクション(中原:5分)
・プレゼンテーション(文献担当グループによる:35分)
・ディスカッション(グループで:15分)
・オープンディスカッション(クラス全体で:30分)
・ラップアップ(中原:5分)
■プレゼンテーションのやり方
・課題として設定された文献を購読し、内容を要約
する。すべての要約をより集めて、「ひとつのスト
ーリー」を構成する。
・文献はPDFになっているものはダウンロードするこ
と。PDF化されていないものは、図書館などで借りて
くること。文献の貸与は行わない。
・プレゼンテーションはパワーポイントで行う。
・プレゼンテーションの構成には下記を必ず含めること
・各文献の要約をまとめた内容
・今回の文献で興味深かったところ/面白かったところ
現場で役立ちそうなところ
・今回の文献の課題、問題点
・グループとして考察したこと
・配付資料は人数分用意し、各自で印刷すること。
・配付資料は「パワーポイントの配付資料」を用意する。
印刷は各グループで行うこと。
・プレゼンテーションの前か後に、利用したデジタル
ファイル(パワーポイント&ワードのPDFファイル)を
、メーリングリスト「soshiki2」にながす。
・プレゼンテーション授業終了後、授業で利用するコ
ンピュータに元ファイル(PPTファイル、ワードファイ
ル)を残しておくこと(評価の際に用います)。
・プレゼンテーションの時間は35分。その後質疑応答
があるので、どのような質問にも答えられるようにし
ておくこと。
■iii onlineでの受講について
本授業は、iii onlineでも受講することができます。
本授業をiii onlineで受講するか、教室で受講するか
は4月7日のオリエンテーションのときに決めるものと
します。授業の進行の関係から、途中で受講スタイル
を変更することは原則として認めません。
iii onlineでの受講と、教室での受講は、各課題が
異なります。下記の内容をよくお読みになって受講
ください。
■参考文献
・中原淳・荒木淳子・北村士朗・長岡健・橋本諭(2006)企業内人材育成入門.(ダイアモンド社)
・中原淳・長岡健(2009)ダイアローグ 対話する組織. ダイアモンド社
■内容
●4月7日 オリエンテーション
・講義概要
・授業の流れ
・グルーピング&自己紹介&連絡先交換
・名簿づくり
・スケジュールの確認と担当決め
・プレゼンテーションの準備と方法
※iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
テーマ 自らの受講動機について述べなさい
●4月14日 経験学習
・ジョン=デューイ(2004)経験と教育. 講談社, 東京
・ジョン=デューイ(2004)学校と社会. 講談社, 東京
経験と学習の源流をジョン=デューイの思想から学ぶ
※iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
●4月21日 経験学習
・松尾睦(2006)経験からの学習. 同文舘出版, 東京
松尾氏は経験学習理論と熟達化理論を接近させ、通常
の職場において「経験からの学習」がどの程度起こって
いるかを、心理学的手法を用いて明らかにしている。
※iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
●4月28日 経験と職種
・笠井恵美(2007)対人サービス職の熟達につながる経験の検討. リクルートワークス研究所(http://www.works-i.com/flow/survey/download.htmlにて入手可能)
・笠井恵美(2007)対人サービス職の熟達につながる経験:小学校教諭・看護師・客室乗務員・保険営業の経験比較 リクルートワークス研究所(http://www.works-i.com/flow/survey/download.htmlにて入手可能)
職種によって経験学習がどのように変化するのかを考える。
※iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
●5月5日 GW振り替え休日 休講
●5月12日 聞き取りの作法①
特別講義
・立花隆(1984)「知のソフトウェア」(講談社現代新書)
・小泉潤二・志水宏吉(2007) 実践的研究のすすめ – 人間科学のリアリティ. 有斐閣, 東京(p198-216 インタビューの章)
・小池和男(2000) 聞きとりの作法. 東洋経済新報社, 東京
上記の課題図書を全員通読してくること。
ゲスト講師
株式会社 ダイヤモンド社
間杉俊彦さん
※iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
●5月19日 経験による成長:
人を飛躍的に「成長」させるのはどんなイベントか?
・金井壽宏(2002)仕事で「一皮むける」.光文社書店, 東京
・モーガン=マッコール(2002)ハイ・フライヤー:次世代リーダーの育成法. プレジデント社
人を「成長」させたのはどのような仕事経験だったのか。
経営学による「経験による学習」へのアプローチ。
※iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
●5月26日 成長に影響を与えるもの:他者と組織
特別講義「人材開発白書2009」
ゲスト講師
株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所
研究開発統括部 研究室長
坂本雅明さん
※iii onlineでは公開しません
iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
テーマ:あなたの仕事・学問上での成長に
他者や組織はどのような影響を与えていたのかを
考察してください。2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください。
●6月9日 まとめの作法②
・戈木クレイグヒル 滋子(2006) ワードマップ グラウンデッド・セオリー・アプローチ―理論を生みだすまで. 新曜社, 東京
・木下康仁(2005) グラウンデッド・セオリー・アプローチ. 弘文堂, 東京
データから理論(モデル)を生み出すための参考にする
※iii onlineで受講の方は、2000字程度の
レポートをiii online上に次週の授業までに投稿
してください
●6月30日 中間発表
●7月7日 中間発表
※iii onlineで受講の方は、A410枚(12000字)程度の
中間発表レポートをiii online上に投稿してください
●7月14日 グループ学習+自己学習
●7月21日 最終発表会プレゼンテーション
●7月28日 最終発表会プレゼンテーション
※iii onlineで受講の方は、A4で20枚(20000字)程度の
中間発表レポートをiii online上に投稿してください
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