2009.3.31 07:40/ Jun
かなり前のことになりますが(最近忙しくて行けてない)、床屋さんに行ったときに、「理容師」さんにインタビューをしました。もちろん、髪を切られながら、です。
あなたは、どのようにして一人前になったのですか?
本当に偶然なのですが、僕が出掛けたお店は、かなり教育システムが確立されているお店だったんですね。
「お客さん、なんで、そんなこと知りたいんですか? もしかしてこの業界の人ですか?」
と理容師さんは、訝しがっておられました(笑)。
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理容師さんの場合、学校を出て、まず店に入ります。この段階で、ほぼ生身の人間をカットすることは不可能だそうです。
店では、最初半年くらいは見習い。昼はシャンプーをします。
シャンプーをなぜやるのか、ということについては、下記の4点の理由があるようです。
1.危険がない=失敗しても大丈夫
2.シャンプーをしながら、頭のかたち、髪の生え方は様々であることを知る
3.シャンプーをすると、どのように髪を切ればいいのか「完成したかたち」がわかる
4.手首を育てることができる
特に「手首を育てる」は、非常に大きいとおっしゃっていました。理容師さんの職場とは、想像以上に、「強い手首」が必要であるとのことです。
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昼はシャンプーですが、夜にもやるべきことがあります。夜は、「人形の頭」を使って練習させられるそうです。練習は、もちろん閉店後に。
「人形の頭」は、一体5000円くらいするそうです。もちろん、その費用は給料からの天引きになります。入店後まもなくて、一番金銭的に辛いときに、1体5000円の人形を買わなければならないということは、どういうことでしょうか。答えは簡単ですね。「髪を切る練習以外、お金がなくて何もできなくなる」ということを意味します。
「後から考えると、何もすることがなくなってよかったですよ、めちゃめちゃ集中できました」
と、理容師さんは遠い目をして語っておられました。
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その後、夜の練習は「人形の頭」から、「生身の人間」にうつります。店の先輩や同僚をモデルとして練習を行うのです。このとき、はじめて、人形と人間の違いについて知るそうです。
「人形は絶対に話しかけてこないんですよ。こっちは、もういっぱいいっぱいじゃないですか。そのときに話しかけられるってのが、どれだけ大変かわかりました。
あと、髪の生え方、頭の形、癖毛、ひとりひとり皆違うことを痛感しました。自分の切り方で、どれだけイメージが変わるか」
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その後、カット1000円の激安店に配属されます。
新人が顧客対応するかわりに、激安価格になっている「修行のためのお店」があるそうです。お客さんにもそれはお伝えしてあって、「修行のモデル」になることを了承してもらうそうです。
激安店には、コーチが1人いたそうです。この会社では、エース級の人材だそうです。このコーチの指導のもと、300人のお客さんをカットすると「卒業」です。
「この段階になると、あまりヘマはしませんけど、、、でも、たまには、うわ、なんじゃこれっていう風になっちゃうんです。でも、すごいのは、コーチです。コーチは、めちゃめちゃうまい。
人のカットの失敗を直すのは、めちゃめちゃ難しいはずです。でも、それを何も言わずに直すんです。直しているあいだ、僕らは黙ってみているだけです。あそこは、あーやればよかったのか、と反省します」
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「300人斬り」が終われば、いよいよ、実際にお店で顧客を持ちます。ここまで、だいたい、早い人で1年、人によっては2年程度かかるそうです。
長い長い道のりですね。
皆さんも、ぜひ、床屋さん・美容室に行ったら、インタビューをしてみてください。ここで紹介したプロセスは、必ずしも一般的ではないと思います。またいろいろな熟達プロセスがありそうですね、面白いですね。それに、インタビューの勉強にもなっていいのではないでしょうか。
もちろん、嫌がられない程度にね。
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