NAKAHARA-LAB.net

2005.9.20 21:10/ Jun

Formative Evaluation

 先日、ベネッセコーポレーションさんの神保町オフィスにて、「おやこdeサイエンス」のプレテスト実験が行われた。
 「プレテスト実験」とは、いわゆる「Formative Evaluation」である。僕らがこれまで開発してきた教材、i-modeサイトを、3組6名の親子に使ってもらい、いくつかの視点から評価を行った。
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 一般的に「Formative Evaluation」とは日本語では「形成的評価」と名付けられる。しかし、この訳語を一度聞いただけでは、その意味するところを理解するのは難しい。
 「Formative Evaluation」とは、要するに「Form(カタチをつくる)」ための「Evaluation(評価)」なのである(ちなみに、Formative Evaluationの本質的な意味を僕に教えてくれたのは、同志社女子大学の上田先生である、<かたちづくるための評価>という言葉も彼の造語だ。僕は、彼の研究から非常に多くのインスピレーションを受けている!)。
 何かものをつくるとき、僕らはよく「Formative Evaluation」を行う。それをへて、様々な反省が加えられ、より「使いやすく」「学びやすい」教材が生まれる。
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 「おやこdeサイエンス」の「Formative evaluation」でも、非常にたくさんの課題がうまれた。
 その課題の多さに、一度はメンバー全員暗澹たる気持ちを禁じ得なかった!!!
 そういった負の瞬間がなかった、とはお世辞でも言えない。一時は、全員言葉を失った。だけれども、そういうものなのである。そういうものなのだ、ものづくりとは。
 アタマの中で理論をシコシコくみ上げ、紡ぎ出した物語を超えたものが、現実には起こるのである。僕らは、そうした厳しい現実に向き合わなくてはならない。
 その「現実」を直視することが、自分たちの「数ヶ月」にわたる思惟 – アタマの中で紡ぎ出した渾身の物語を否定するものであったとしても、僕らは、それと向き合わなければならぬ!
 今日は、多くの課題の中から、予算・スケジュール・技術的実現可能性を加味し、仕様を練り直した。それは一度つみあげた「積み木」をガーンと崩すような感じで、気が滅入る作業ではある。まるで「積み木崩し」だ。しかし、それなしでは、僕らが見てみたい、あの「学習者の姿」を見ることはできない。
 これからだ!これからである!
 全力を尽くし、参加者が満足できる教材をつくりたい。
 心の底からそう思う。
 まだまだ、これからだ!
 僕らの教材は、もっとステキになれる!
 そして、「おやこdeサイエンス」の参加者は、ステキな学び手になれる!

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