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2005.9.14 10:23/ Jun

韓流eラーニング2日目:なぜu-learningなのか?

 朝、韓国教育人的資源部に向かった。厳重なセキュリティチェックをへて、Information Technoogy planing devisionへ。殺伐とした廊下をみながら、お役所というのは、どこでも「同じにおい」がするなぁと思った。
 ディレクター(課長)、Senior Supervisor(専門官みたいな感じ)と面会。名刺交換の際、二人がPh.Dを持っていることにまずびっくりした。やはり韓国はアメリカの影響が強い国なんだなぁと思う。
 以下、彼らの話をまとめる。
 —
 韓国MoE(Ministry of Education)としては、これまで「Cyber家庭学習」「u-learning施策」を実施している。
 「u-learning」に関しては、Korea Telecomやマイクロソフトと協力し、本年研究プロジェクトを立ち上げた。
 これはKERISのコーディネーションによって実施されているもので、韓国の9つの学校においてTabletPCなどを使ってもらうというもの。予算規模が2億円程度である(ちなみに韓国で流通するコンピュータの99%がMicrosoftの製品である。ソウルにMacをうる店は2つしかないとのこと!)。
 今後は、この先、2年間で有識者、民間IT業者らなどからなる「研究会」を立ち上げる。そこでも研究結果を参考に、政策をつくりたい。一応、現在、それを「u-learning@korea 2010」とよんでいる。
 u-learning@korea 2010というものをつくるのが現在のマイルストーン。ここでは、全国1万の学校に、u-learning関係の情報基盤をつくりたい。
 ■
 「u-learning」をどうとらえるのか、という問題に関しては、下記の3つが要件だとおもっている。
1.TabletPC、PDA、携帯電話などメディアは
  問わずに利用できる情報基盤であること
2.無線LANを活用する
3.学校教育と家庭学習を接続する
 特に特徴的だと思われるのは3についてである。要するに、家庭と学校がしっかり連携して、子どもの学習をケアしていくための手段としてITを活用したい。おそらく、個々に韓国のu-learningの特徴があるだろう。
 昨日紹介した「Cyber家庭学習」、および、彼らがすすめる「u-learningプロジェクト」には、近いうちに導入されようとしている「週5日制度」の社会的背景がある。
 さらに塾などの校外学習が盛んになりすぎて、そこに費やすお金が莫大にのぼることが、非常に問題になっている。週5日制はほおっておけば、この「Private Sectorでの教育」をさらに拡大してしまう結果になる。
 校外学習は、とにかくお金がかかる。少ない人で年間所得の2割を子どもの教育に費やす。多い人では4割~5割というのもざらである。一方で、お金のない親は子どもの教育にお金をかけることができない。このようなプロセスをへて進行する「世代間の再生産」に非常に懸念をもっている。
 故に、Information Technology Planing部門としては、こうした再生産を断ち切り、かつ、公教育の正常化を行うための施策として、e-learningやu-learningに注目している。
 なお、e-learningに関しては既にCyber家庭学習を行っているが、2点の反省点があるとのことであった。
 第一に「子どもの学習は、Cyberな空間だけで完結させるのではなく、実際の教室での学習と連携させなければ、のぞむ効果は得られない」ということである。
 第二に、「親をTutorとして巻き込んでいく必要性がある」ということである。積極的な親の関与のないところでは、子どもの学習はのびない。
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 その後、ソウル郊外にある「Sinhak elementary School」へ。ここは、u-learningの小学校のモデル校のひとつ。ソウル北部に位置する。ちなみに、ソウルは中央にある川「漢
江」を境として、南側を「江南」、北を「江北」という。裕福な人々がすみ、塾が百花繚乱しているのが何部。北はあまり裕福ではない。
 「Sinhak elementary School」は生徒数1300名。そのうち5年1組の32名に、TabletPCを1人に1台常に携帯させている。教室には無線LANのAccess Pointが2台設置してあった。教師は部長クラス以上の教員が15台所持している。
tpc0.jpg
 Tablet PCの利用の仕方は1)「科学」と「社会」の時間、2)家庭での学習など、3)学習履歴の親への開示、4)学校からのお知らせの通知など。
 1)は、教師がタッチスクリーン型の大型テレビを用い、子どもがTablet PCをノート代わりに用いるといったかたちで活用されている。
 2)では、宿題をTablet PCを用いて行う。また、チャットなどを通じて教員への質問なども行えるようにしているという。子ども同士でメッセンジャーを使って、宿題を一緒にするなどのことも行われているとか。
 3)は現段階では、どう言う学習を行ったのか、というポートフォリオを親に開示しているらしい。近いうちに成績に関しても、親に開示出来るようシステムを開発しているとのこと。
 親の反応としては、当初、経費がかかるのではないか、などの懸念が多かったが、現在では解消され、すこぶる評判がよいとのこと。「子どもがTablet PCを用いて教師とチャットしている姿を見て」安心した親が多いとのことであった。
tpc1.jpg
 気になる教師の負担としては、やはり家庭での子どもの学習までケアしなければならないので、負担は増える。現在は実験ということで、TabletPCを所持する15名の教員が相互に助け合って実施しているとのこと。
 ちなみに教員研修は、1)学校での10日間の研修、2)マイクロソフトの提供する研修で行った。そこでは、TabletPCの使い方から、教え方、問題のだし方について、研修が実施されたとのことである。
 なお、この小学校では、こうした実験的な授業を行っている教員には、インセンティヴがあるとのこと。昇進のときの判断材料になるほか、手当をわたしているという。
 子どもに感想を聞いてみた。
 「2キロ程度あるTablet PCは重くないのか」と聞いたところ、「重いけど、別に気にしない。自分のうちでパソコンを使えるのなら、別に気にならない」との様子であった。
 「お父さん、お母さんはなんか言っている?」と聞くと、「宿題なんかのとき、声をかけられることが多くなった」と明るく答えていた。
 Shihak elementary Schoolにおける評価はまだ行っていない。9月末に学習効果、満足度などを計測するとのことである。ただ、現段階でも「子どもたちの学習に対する興味は確実に増した」「宿題の提出率」は格段にあがったという。別の中学校で行った評価結果では、学習成績に統計的有意な差があったという。
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 夜は、雑誌Penで紹介されていた、最近の韓国のオシャレスポットのレストランへ。「あたり」だった。
 そして人生は続く。
 (文責:中原淳)

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