2005.9.8 22:29/ Jun
東京大学BEAT講座が主催する「教育における知的所有権」のシンポジウムが、先日土曜日、東京大学山上会館で実施された。
このシンポジウム、僕は、「高等教育における教育の情報化を推進立場」からパネリストとして参加した。
4月から推進しているOCWやTREEプロジェクトの中で、著作権問題はさけて通れない。TREEオフィスの山本さん、岩下さんらとともに、現在も「著作権との闘い」の日々が続いている。当日はそんな話をした。
キーノートスピーカーには、文化庁著作権審議会の委員をなさっている苗村憲司先生(元慶應大学教授・現情報セキュリティ大学院大学)をお呼びして、「教育現場における著作権」の動向についてお話をお聞きした。
苗村先生からはは、まだオープンになっていない情報を含め、貴重なお話をいただけた。今回のシンポジウム、僕は実施側にいるにもかかわらず、とても勉強になった。
苗村先生からお聞きした話でもっとも興味深かったのは、「教育の場では著作権フリーにせよ」という話と、国がすすめる「コンテンツ保護政策」はトレードオフの関係にあるという話だ。
その上で「コンテンツ保護政策の観点からも、教育だからといって著作権料を払わなくていいってことじゃない」ってことを苗村先生は主張なさっていた。
このあたりは、NIME客員教授(元・NHKエデュケーショナル)の杉村さんも同じ主張で、「教育の錦の御旗だけかかげて、無料にしろとだけ言い続けてきた教育業界は、反省すべきところにきている」と主張なさっていた。
僕の意見もまさに同じである。「コンテンツ保護政策とトレードオフにある」という観点こそはなかったものの、「しかるべきものには、しかるべきお金を払うべきだ」と僕も思っている。だからプレゼンでは下記のようにいった。
—
「知の公開」「eラーニング」は大学の事業であるから、それを「無償にしてくれ」とは言いません。大学は、しかるべき費用は払えます。いや、払うべきだと僕は思います。
問題はお金より手間なのです。現行法では、図版ひとつひとつに対して許諾の申請をしなければならない。
ただし、大学は教育機関であり、ひとつの大学だけで、放送局のように著作権部を要することは財政上不可能です。
よって、この許諾申請を簡素化する仕組み。たとえば、JA版権処理を一括して行ってくれる機関を設立するとか、一括契約を行えるとかができるようになると、非常に助かります。もちろん、この場合処理をアウトソースするわけですから、お金は支払います。
—
先日、実は、ある海外の教科書の版権処理を、TREEオフィスのスタッフに頼んだら、著作権処理を代行してくれる民間サービスを見つてきてくれた。それもネットでできる。結局、今回はそれを利用しなかったけれども、そんなことがサービスとして成立していることに驚いた。
そして、今の大学に必要なのは、こうしたサービスなのではないかなと思います。せめて、「教育と著作権に関する電話相談・メール相談」とかができれば、とても喜ばれると思う。コンテンツ登録サイトも重要なのかもしれませんが、これは絶対にキラーサービスになるな、と思う。
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シンポジウム終了後、苗村先生とお話ししていて、非常に印象的だった言葉があります。
「著作権の問題をもう少しスムーズにしたいと思うのだったら、教育関係者が自ら動き、業界を説得しなければならないのです。
自分たちから制度を提案し、組織を提案しなければならないのです。
それをしないで、いつまでも、学校や教育は「聖域」だからという認識でいることが一番悪い」
そうだよなぁ・・・。「大学が自ら動くべき」なんですよね。こういう話をすると、「国がやれだの、どこかの中立機関がやれ」だのって話になるんだけど、そんなの待ってたって、実現するわけがないんです。そこは予想がつく。
できるところから、大学が集まって立ち上げるべきなのかなぁ・・・もしそういう話になれば、個人的には「東大TREEプロジェクトは参加していくべきだろうな」と思いました。
あくまで私見ですが。
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