NAKAHARA-LAB.net

2007.10.23 10:50/ Jun

組織の中の物語には「パターン」がある?

 佐藤郁哉他「制度と文化」を読んだ。企業文化論、組織文化論、組織アイデンティティ論などの知見を整理した良著であった。

 その中に、「組織の中で流布するストーリー」に関して、下記のようなことが書いてあった。とても興味深かったので、引用する。
 —
 組織心理学者のジョアンヌ・マーティンは、企業組織の中で流布している様々な物語を採集・分析したうえで、それらを以下の7つのタイプに分類した。
1.ルール破り物語
2.大物物語
3.出世物語
4.クビ物語
5.転勤物語
6.上司のミスに対する対応物語
7.障害克服物語
 —
 組織には – 人の集まるところには – 必ず「物語」がある。そして、その多くは「その組織に独自なもの」だと思われている。しかし、そうした認識は多くの場合、誤解であることが多い。組織の中で流布している物語を類型化すると、上記のようなパターンがあらわれてくる、というわけである。
 ふりかえって考えてみれば、あなたの組織にも、上記のような物語がありませんか? 僕の所属組織は大学だけれども、それでも、「うーん、あるある」と思ってしまった。
 この知見を目にした際、真っ先に僕の脳裏に浮かんだのは、ロシアの文学研究者ウラジミール=プロップである。
 プロップは100編あまりのロシア魔法昔話の分析を行い,そこには「普遍的なパターン」「普遍的な物語展開のパターン」があることを明らかにした。
 プロップの構造主義的な物語分析は、のちの物語研究に強い影響を与えた。ジョアンヌ・マーティンの研究は、プロップの行った昔話分析の「組織バージョン」と言えるのかもしれない。大変興味深い知見である。
 —
 物語は、組織構成員が属する「文化」の制約を多分にうけることが容易に予想できる。
 いったい日本の企業では、どのような物語が流布しているのだろうか。
 また、企業ばかりではなく、「学校」にはどんな物語の類型が存在するのだろうか。
 そんなことを考えていたら、なんだかワクワクしてきた。「組織」と「物語」、一見、何にも関係なさそうな両者ではあるけれど、これに焦点をあてた研究が、もっとあってもよい、と思う。
 人間は物語の中を生きている。

ブログ一覧に戻る

最新の記事

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?

2025.4.1 18:20/ Jun

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?

【中原からのお願い】ファミリービジネスにおいて「事業承継」をご経験された方、ぜひ、アンケート調査にご協力いただけませんでしょうか?

2025.4.1 10:33/ Jun

【中原からのお願い】ファミリービジネスにおいて「事業承継」をご経験された方、ぜひ、アンケート調査にご協力いただけませんでしょうか?

2025.3.27 15:18/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2025募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!

「組織を変えよう」と「組織が実際に変わる」は「カニカマ」と「カニ」くらい違う!?

2025.3.19 08:36/ Jun

「組織を変えよう」と「組織が実際に変わる」は「カニカマ」と「カニ」くらい違う!?

2025.3.12 22:56/ Jun

「皆さんの会社の内定者の皆さまに、深い絆を!」内定者向けワークショップ!開発成果報告会!