2007.10.5 07:42/ Jun
先日、「若年層の貧困」について社会学的観点から研究している同期の研究者と話す機会があった。
(彼は若年層貧困について研究をする一方で、そこからの自立を支援する社会的活動もしている)
久しぶりの再会だったので「あの時、オマエは○○だったよな」的昔話にしばらく盛り上がったけれど、いつのまにか話は近況報告になり、「若年層の路上生活」におよんだ。
僕は、若年層の貧困については、本で読むだけの限られた知識しか持ち合わせていなかったので、とても印象深かった。
—
彼曰く、
「若者が路上に堕ちるのはあっという間だよ。特に、家族と切れている場合には、一瞬のうちに路上生活に堕ちる。でも、そこから這い上がるのはものすごく難しい。堕ちるのは簡単、這い上がるのは地獄なんだ。
たとえば、今、仮に、病気とかケガとかある突発的な出来事で、仕事をある一定期間できなくて、アパートを追い出されたとする。そうなったら最後。いったん路上に堕ちれば、次に新しいアパートを契約するまで、長い時間がかかる。
というのは、少しの小金があっても、日本では居場所は買えない。まず、不動産契約をするには、まとまった金を一括で用意する必要がある。
今の日本では、アルバイトがたくさんあるので、一日の生活費を稼ぐのはわけないことだ。でも、小金は稼げても、敷金、礼金、保証金という「まとまったお金」を一括で用意することはすごく難しい。
さらに最大の問題は、不動産契約には保証人が必要であることだ。家族と切れている場合には、保証人になってくれる人を見つけるのが至難のわざだ。しかも、いったん、路上に落ちた人の保証人になってくれる人は、そう多くない。
まとまったお金がないからといって、借金をしよう、と考えようものなら、さらに悲惨なことになる。住む家すらない人に、お金を貸すのは、まともな貸し主ではないことが多い・・・後はお決まりのストーリーが待ち受けているだけだ
だからいったん路上で暮らし始めた人には、緻密な支援が必要だ。どのようにまとまったお金を手に入れ、どのように保証人を探してもらうか・・・問題は根深い」
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「若年層の貧困」というと、僕らは、それを「本人の怠惰」に帰属してしまうことが多い。「最近の若者はプラプラして、仕事をしない」など・・・そういう語り方、問題の切り取り方は、マスメディアを中心に支配的である。
もちろん、そういう怠惰な若者もいないわけではないんだろう。そういう人もきっといる。
でも、僕は専門ではないので無責任にいい放つけれど、上記のように「やむをえず」突発的な出来事で路上に堕ち、這い上がることのできない人」も予想以上に多いのではないか、と想像する。
帰り際、彼の書いた論文や書籍をもらった。少し勉強してみようと思った。
堕ちるのは簡単か・・・過酷な現実である。
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