2020.9.11 07:40/ Jun
テレワークが「死語」になる日
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新型コロナウィルスの感染拡大は、一時期の危機的状況を脱したとはいえ、いまだ予断を許しません。東京の昨日の感染者は276人。木曜日にピークを迎えることが多い(週明け月曜日の感染者の報告が3日遅れで集計されるそうです)とはいえ、この数字は、油断できません。
最近、すこし、世間の緊張感が、一時期よりは弛緩しつつありますが、「この世の中から、コロナウィルスがなくなったわけではないこと」を、改めて認識せざるをえません。
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新型コロナウィルスの感染拡大とともに普及しつつあるのが、いわゆるテレワークです。
職種や業種にもよるので一概にはいえませんが、だいたい3割くらいの職種で、テレワークが普及しつつあります。
テレワークに関しては、僕は、数ヶ月前、こんな予想を立てました。
アフターコロナの働き方は「フレキシブルワーク」かもしれない!? : オフィスワークとリモートワークの「落とし所」に生まれる未来
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11684
この記事の要点を、端的に申し上げますと、新型コロナウィルスの感染拡大によって、世の中の働き方は、下記の3ステップで転換する、という「妄想」です。
1. まずは「対面のオフィスワーク」から「強制リモートワーク」へ
(強制リモートワークとは、緊急事態宣言で行われた強制的なリモートワークを意味します)
2. そのあと、リモートワークからの「バックラッシュ(逆戻り)」が一時期起こったうえで、
(コロナウィルスがあろうとなかろうと、何が何でも、仕事は対面だ、という層からの抵抗が一定生まれるはずです)
3. 中長期には「リモートワーク」から「フレキシブルワーク」への転換が起こる
(最終的には、オフィスワークとリモートワークの落とし所が模索され、フレキシブルに働ける環境がくる)
と予想しました。
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この予想の妥当性に関しては、皆さんに評価をお任せしますが、最近、さらに思ってしまうのは、この「テレワーク」や「リモートワーク」という言葉自体も、だんだんと「死語」になっていくのではないか、という予感です。
「死語」になる、とは、あくまで「メタファ」です。
すなわち、
リモートワークなのか、テレワークなのか、誰も、さして、気にしなくなる。
ないしは
リモートワークやテレワークを、誰も「特別視」しなくなる
のではないかと思います。だからとりたてて、リモートワークがあえて、語られなくなる。やがて「死語」になる。
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それでは「その先に広がる世界」は何か?
それは、
1. リモートであるか、いなかは、もう問題ではない
2. 成果を出せる「働き方」を
3. 自分で考え、自分で選んで、自ら実行する
ということにつきます。
要するに
「成果がでれば、働き方は、自分で選んでいい。そのかわり成果をだしてね」
ということです。
すなわち「成果がでる」のであれば、オフィスだろうが、リモートだろうが、テレだろうが、そんな「働き方の手段」はどうでもいい。
リモートワーク、テレワークとは、あくまで「手段」であって「目的」ではない。だから、誰も気にしない。誰も特別視しなくなる、というのが、未来のような気がしています。
このことを僕に示唆してくれたのは、D社の経営者のIさんです(ありがとうございます!)。
Iさんは、かつて、
リモートワークも、テレワークも、僕は、特に推奨しない。
成果を出す働き方を、自分で選んで、自分で実行してくれればいい
とおっしゃっていました。
まさに「慧眼」だと僕は思います。
かくして、テレワークやリモートワークは「死語」になる。といいましょうか、誰も「手段」を気にしなくなる。
皆さんはいかが思われますか?
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今日は、テレワーク、リモートワークの未来について考えました。
他人から「強制」されないとは、「自由」を意味しますが、しかしながら「自由」とは、なかなか骨の折れることでもあります。かつて、フランスの哲学者サルトルは、「人間は自由という刑に処せられている」という名言を残しましたが、
自ら考え、自ら選び、自ら実行する
というのは、フレキシビリティが高いものの、常に自己についてモニタリングし、自分をコントロール「しなければならない」ことを意味します。
おそらく、僕たちは、「働き方の自由」を享受できる時代、逆にいうと、「働き方の自由のあり方」自ら考える時代を生きつつあるのかな、と思います。
そして人生はつづく
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