2020.7.30 09:15/ Jun
「こないだ、あるオンライン授業で、10分間のブレークアウトルーム(オンラインディスカッション)やることになったんですね。そしたら、沈黙お見合いが、10分続いて、もう参っちゃいました。誰ひとりとして、ウンともスンとも言わないんです。だんだん言い出しにくくなり、そのまま10分の沈黙です。学生のなかには、ブレークアウト恐怖症になっているひともいます」
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先日、他大学の学生さんとオンラインミーティングをした際、その学生さんが、こんな嘆きをつぶやいておられました。それは本当に大変だったね。
Zoomをつかったオンライン授業では、教員が簡単に「ブレークアウトルーム」という「オンラインディスカッション小部屋」をつくることができます。
学生さんが受けた、この授業のことはよく知らないので詳細はわかりません。が、その授業では、数百人の学生を、4人〜5人くらいの小さなグループにわけて、ディスカッションをさせようとなさったのでしょうね。
しかし、そこで生まれたのは残念ながら「ディスカッション」ではなく「沈黙お見合い」であった(号泣)。果てしなく長くつづく沈黙。
おそらくは、この学生さんは、この沈黙に耐えられなくなり、「ブレークアウトルーム恐怖症」になっているということでしょう。
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ブレークアウトルーム(オンライン授業での小集団のディスカッション)をいかに活性化させるのか?
このことに関しては、もうすでに多くの識者の方々が、コツを述べられていると思いますが、敢えて、僕がアドバイスするのだとしたら、下記の5つです。
1.グループサイズを考える
2.問いを明確にする
3.考える時間(Thinking time)をもつ
4.指示を細かくだす
5.話し合ったことは「放置」しない
今日は、これについて論じてみましょう。
あくまで下記は、僕の専門での、僕の授業にまつわるノウハウです。
その前提でお聞きください。
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まず1の「グループサイズを考える」
これは、そもそもひとつのブレークアウトルームのグループに、何人くらいの学習者を入れたら、よいかということです。このグループサイズは「議論のしやすさ」と「議論にかかる時間」を規定します。
10人でのブレークアウトというのもできないことはないですが、おそらく、議論はしにくく、議論にかかる時間も膨大になります。
反面、2人のブレークアウトというのは、双方にウマがあわなかったとき、万が一、相手にトラブルが起きたときなどは、片方は何もやることがなくなります。
経験的には3人から4人、多くても5人程度のグループがうまくいく気がします。もちろん、これは授業目的や内容に応じて、変わるでしょうけれども。
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つぎに2の「問いを明確にする」
「問いを明確にする」とは、「学習者に考えて欲しいこと、ぐっと頭を使わせたいことの焦点をしぼって、教員から質問をなげかける」いうことです。
「何でもいいから、感想を話し合ってください」
「お互い、はなしあってください」
というインストラクションは、「考えるべき内容」を明示していません。長い時間をかけられるのであれば、「考えるべき内容」から考えて議論することも不可能ではないですが、短いあいだでは、なかなかうまくいきません。
短い時間で集中したディスカッションを起こすためには、問いをフォーカスを絞ることが重要です。
たとえば、
「組織社会化という概念について、自分の身近で経験したことのある出来事を1つあげてみてください」
このように焦点をしぼると、非常に話がしやすくなります。
つぎに問いの数です。
シンプルには「1つのブレークアウトでは、1つの問い(One breakout, One question)」にしぼったほうが、議論がしやすくなります。
たとえば
「組織社会化という概念について、自分の身近で経験したことのある出来事を1つあげて、相互に説明したうえで、お互いの相違点・共通点について話し合い、グループとしての結論をだしてください」
といった具合に、課題をいくつもあげればあげるほど難易度があがります。
これも授業内容や授業目的によりますので、一概にはいえませんが、対象者のレベルに応じて、問いの数を絞ることは重要なことです。
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3つめの「考える時間(Thinking time)をもつ」とは、
教員によって掲げられた「問い」について、学習者が「自分1人で考える時間」を、ブレークアウトルームの「前」にもつ、ということです。
通常、「ひとりで頭のなかで考えている時間」というのは、議論はできないものです。
ということは、ブレークアウトルームの「なか」で、学習者が「ひとりで考えること」と「話し合うこと」を同時に課してしまうと、沈黙が生まれます。
ブレークアウトルームは「外化(考えたことを、外に表現する時間)」と割り切ることが、うまくいくコツではないかと思います。
ブレークアウトさせるときには、学習者ひとりひとりが、しっかりと「考える時間」を確保させ、自分なりの答えをもったうえで、行うと、生産的な議論が生まれがちです。
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4の「指示を細かくだす」とは、ブレークアウトルームにはいった「後」に、学習者がどのように振る舞えばいいか、教員から「指示」を細かく出すことです。
本来ならば、学習者ひとりひとりがリーダーシップを発揮して、ブレークアウトルームに入ったあとに自発的に振る舞い、ディスカッションをリードしあってもらえればいいのですが、経験の浅い学部生などの場合は、それがうまくいかないケースもあります。
これは学習者のレベルにもよりますが、ブレークアウトルームに入ったあとに、どのように振る舞えばいいかの指示は、いつもより細かくする必要があります。
たとえば、僕が学部でブレークアウトなどをするのなら、下記のように指示をするかもしれません。
もつろん、ここまで指示を明確にすることに嫌悪感を感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ブレークアウトルームにいったん別れてしまったあとは、教員は、なかなかそこを回っていくことはできません(できないわけじゃないけど、全部は不可能なことが多い)。
対面授業ならば、ざっと教室を見回して、机間巡視をして、ディスカッションが厳しいところをフォローできますが、それができません。
ですので、先ほど例示したように、指示を細かくだしていきます。
ちなみに、話し合いにはバッファをもうけたほうがベターです。経験的に、わたしはグループ人数が4人ならば「4分程度」のバッファをもうけています。
時間が余ってしまったグループも「沈黙お見合い」にならないように、「時間があまったら、オンライン授業のメリットデメリットにについても話し合ってみてください」という風に、予備の課題を与えておきます。
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最後の「話し合ったことを放置しない」は、ブレークアウトセッションが終わり話し合った結果を、何名か指名して教室全体でシェアすることです。話し合いの結果を「放置しない」。
ブレークアウトセッションの前に
「話し合ったことを、教室全体でシェアするよ。誰にあてるかはわからないよ」
といっておけば、学習者には、モティベーションが生まれます。
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他にもいろいろあるかもしれませんが、だいたい、こんなところでしょうか。
皆さんの実践知も、Twitter、Facebookなどでお寄せいただけると幸いです。
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今日は、オンライン授業の「ブレークアウトルーム」での話し合いについてコツを書きました。この記事を書いていて、僕の脳裏に浮かんだのは、名人級の教育者「大村はま」さんの言葉です。
曰く
話し合いは「悪い癖」がついてしまいますと、まず直すことは不可能です。話し合いに対する興味を失い、その重要性を軽蔑するようになってしまいます。
話し合いなんて時間つぶしでつまらない。みんな聞いてもきいても黙っていて、何も言わない人がいるとか、愉しく話せないとか、話し合っても、結局は、自分で考えたのと同じだ。
話し合いがなくても、結局自分自分でやればいいんだ、とそういうふうになってしまいます。
(大村はま)
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大村はまさんは、Zoomのない時代から、「話し合いの素晴らしさ」と同時に、「話し合いに悪い癖」がついてしまったときの破壊的な悪影響について、喝破していました。
「ぺんぺん草も生えないような、沈黙お見合いブレークアウト」によって、「話し合いの価値」をネガティブに学習してしまう事態だけは避けたいものです。「話し合いに悪い癖」をつけさせたくない。
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結局、話し合いというのは、「さぁ、話し合ってください」では建設的なものには結実しません。
話し合いには「配慮するべきポイント」がいくつかある、
そして、
話し合いには「デザイン」が必要である、ということです。
ちなみに・・・最後の最後に「ちゃぶ台」かえすよ。
最後っ屁、かますよ。
今日お話ししたノウハウは、「オンライン授業のディスカッション」に特化したノウハウではないですよ。これは対面型授業の時代から、ずっとずっと、言われていたことあり、「効果的なディスカッションを生み出す教授技術」として長いあいだ、継承されてきたものです。
だから、オンライン授業って言ったって、それに特化したノウハウは、それほど多いわけではない、ということですね。
オンライン授業では「これまで継承されてきた教授技術」を、しっかりキチンとやり切ることが重要だ、ということです。
逆に、深い自戒をこめて申しますが、これまで対面型授業のディスカッションで、あまり配慮やデザインをしてこなかったのだとしたら、それは「その場のノリ」に甘え、「学生のとっさの振る舞い」に甘えてきた、ということです(ちゅどーん・・・爆死)。
そして人生はつづく
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