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2020.7.6 08:50/ Jun

研修満足度を質問する「直後アンケート」が研修評価としては「プチ残念」になりつつある件:研修評価は「行動の変化」まで追うのであーる!?

 研修評価は「行動の変化」までを追うのであーる
    
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 これが、近年の研修転移研究・研修評価研究のスタンダードです。
  
 端的に申し上げれば、
 
「研修の評価」と称して「研修終了後の満足度をアンケートすること」は、「うーん、ちょっとプチ残念だね」って言われちゃうよ
  
 ということですね。
  
 今日は、このことを考えてみましょう。
  
  ▼
  
 まず、一般には、研修の評価には
  
1.反応レベル(ex. 研修終了後のアンケートで満足度などをとる)
  
2.学習レベル(ex. 研修終了あたりに到達度テストを行う)
  
3.行動レベル(ex. 研修終了後に、職場の実践度合いを問う)
  
4.成果レベル(ex. 研修終了後に、職場の成果の向上を問う)
  
5.利益レベル(ex. 研修終了後にいくら儲かったかを問う)
  
 といったレベルがあると言われています(識者のオジサマによって違う)。
  
 このうち、
  
「研修の評価は、成果レベルや利益レベルというところまで測定するべきぢゃい」
 
 とおっしゃる「まことに香ばしいオジサマ方」もおられます。
 ふぅ。
  
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 もちろん、「研修やって、ガッポガッポ、金が儲かる」に越したことはありませんが、「どんだけが研修による儲けか」を「研修評価」で証明せい、と言われても、「そりゃ、アンタ、無理ゲーですがな」という方が多いです。
 
 こういうリクエストは、僕は、「研修評価の測定方法」として「現実的ではない」と思いますし「必要もない」と思います。

(できないわけではありません。ただし、統制群をつくったり、せっかくうまくいっている研修を、敢えてやめてみたり、ランダムで研修参加者を割り当てたり、無茶で無駄な状況設定をたくさんしなければならなくなる。高度な統計も必要になるし、ひともいる。そんだけコストをかけるなら、できます。仮に、研修評価するのに、追加で200万予算くださいっていったら、やりますか???。このあたりを理解するためには、実験計画法というものを理解しなければなりませんので、紙幅の関係上、省略します)
 
 端的に申し上げるのであれば、
  
「研修のパワー」だけで成果や利益を直接向上させることは難しいことの方が多いし、それを研修評価で「証明」するのは「無理ゲー」だ
  
 ということです。
  
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 といいますのは、下記の図に示しますように、「各職場の成果」や「利益」は、研修「以前」の宇要因、、、すなわち「戦略」と「市場」で決まってしまうところが多いからです。
 すぐに見てとれるように「成果」や「利益」は、何を売るのか、誰に売るのか、どのように売るのかといった「戦略」、そして、景気、競合他社の状況、競合商品のリリースといった「市場環境」に、もっとも大きな影響を受けます。
  

 
 上図に見ますように、行動変化の「以前」に、「戦略」や「市場」が「各職場の成果」や「利益」に大きな影響(矢印が太いです)を与えていることがわかるでしょう。
  
 ちなみに、このうち「市場」というものは、一般には、会社では「いかんともしがたい=変えられない」要因です。そうなると、会社にできることは「戦略」と「行動変容」ということになります。
  
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 さて、わたしは、先に「研修にできる」のは、図の上部にある「行動変化」であると申し上げました。よく練られて、デザインされている研修であるならば、上司の行動変化や、従業員の行動変化を促すことは可能です。そして、そこまでは影響を与えることが、近年の研修では期待されます。
   
 もちろん「行動変化」はまったく「成果」や「利益」につながらないわけではありません。薄い影響力とはなりますが「職場の成果」に対して、戦略や市場ほどではありませんが、直接影響を与えます(点線の矢印になっていますね)。
   
 ここまで話を進めますと、「あれれ」と思った方もおられるのではないでしょうか。
  
 そうですね
 
「行動変容が”点線”で、戦略が”太い線”なら、行動変容なんて必要ないんぢゃないだろうか。すなわち、研修なんて無駄なんぢゃないの?」
  
 という疑問がわいてきます。
  
 OK、あんまり急ぐなよ、ベイベー。
 KENZOが小学校に行ってから説明するからさ
  
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 (しばらくして・・・長靴はくのいやだ、とダダをこねておりました)
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 さて、それでは「行動変化」は、成果や利益に直接影響を与えないなら「意味がない」のでしょうか。いいえ、決して、そういうわけではないのです。
  
 ここが難しいところなのですが、「戦略(の達成)」と「行動変化」のあいだには、実は、赤い矢印がございます。そうです。戦略を達成するラストワンマイルは「ひとの行動」。「戦略の達成」を支えているのは「行動変化」です。
  
 というわけで
  
「行動変化」は「戦略」を通じて「各職場の成果」や「利益」に貢献している
  
 のです(難しい言葉でいうと間接効果があります)。
  
 というわけで、
  
 本来的に、戦略と行動変化の効果を分けて論じることはできないのです。
  
 すなわち、
  
 戦略と行動変化は、シナジーを生み出し、成果に貢献する
  
 ということです。

「研修やって、いくら、儲かったか、数字をもってこい!」
  
 と、何にも考えずにのたまう「香ばしい経営者のオジサマ」たちには(20年前から、この台詞、変わってませんね・・・いい加減、学んで欲しい)、ぜひ、このブログを印刷したり、メール転送してあげてください。
  
「それ、意味ないから。経営にとっても、いいことない。以上」
  
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 ちなみに、そう考えるならば「行動変化」が「各職場の成果」に与える直接的な影響が「点線」だからといって、「それが意味がない」ということにはならない。
  
 また「行動変化」が「各職場の成果」に与える「単体の影響」だけを取り出して論じても、あまり意味がない
  
 というわけで、全部をまとめて申し上げると、
  
1.研修の評価は「行動の変化」までは最低とりましょう!(ここは最低限)
  
2.戦略に従うかたちで「行動の変化」さえ起これば、成果や利益につながる可能性が高まります
  
 ということになるのです。
  
 かくして冒頭の文章になりますね。
 
 研修の評価は、研修参加者が職場にかえって、どのような実践を行ったかどうか、まではトレースするべきなんぢゃない、という認識がスタンダードになってきてます
  
 だから
  
「研修の評価」と称して「研修の満足度をアンケートでとっていても」、「うーん、プチ残念な評価だね」と言われてしまう
   
 ということになるのですね。
  
 というわけで、実務レベルでは、「行動変化を問う」ということで、研修終了後、しばらく遅延をおいて、研修参加者や、その上司に行動変容を問う質問紙に答えてもらう、ということが、スタンダードになりつつあります。
   
  ▼
  
 今日は研修転移論、研修評価論の基礎(ただし、大学院でいえば14コマ分の要点)を、1000字程度で説明する、という無理ゲーをやってみました。いかがでしたでしょうか?
  
 ちょっと難しかった?
 そういう方には、実は朗報がございます。
  
 実は、せんだって、慶應MCCのわたしの授業で、中原ゼミOB(東大時代)の関根雅泰さん、研修開発ラボでご一緒してきた鈴木英智佳さん、島村公俊さんらが、研修転移論と研修評価論の基礎を講義していただいたのですが、彼らが、そのビデオ教材の一部をYoutubeで公開してくれています(心より感謝です)。当日は、「チーム企」の栗原さん、小林さん、Kazumaさん、龍星さんらにも、ご協力をいただきました。ありがとうございました。
  
 今年の慶應MCCのわたしの授業「ラーニングイノベーション論」は「ZOOMを使ってのフルオンライン授業」です。おかげさまで12年続いて満員御礼。日本全国から、多くの志ある実務家の皆さん31名にご参加いただいております(ありがとうございます!)。
  
「研修の転移と評価」オンデマンド動画・大公開!
http://learn-well.com/blogsekine/2021/07/post_532.html
  
ラーニングイノベーション論2020
https://www.keiomcc.com/program/lin20a/
  
 オンデマンドビデオの方、ぜひ、ご覧いただければ、今日の内容、よりおわかりいただけるかな、と思います。
 
 そして人生はつづく
 
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 研修開発の実務、研修転移・研修評価に関しては、下記の書籍がおすすめです。どうぞご高覧くださいませ!

 
  
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