NAKAHARA-LAB.net

2005.8.5 22:05/ Jun

オープンソースの風

 昨今のeラーニング業界を見ていると、ロラン・バルトのセオリーを思い出してしまう。
 「作品からテクストへ」
 「作者は死んだ」
 
 という挑発的なコンセプトで、現代哲学を切り開いたのは、コレージュ・ド・フランスにて教授をつとめたロラン=バルト。
 彼の哲学がきっかけとなり、作品における作者の特権的な地位は剥奪された。作者の創意、作者の代弁した他者の声、そして、読者の解釈によって編み込まれた多声的な空間として、作品をみなす視座を、切り開いた。
 「あなたの声は、あなたの声ではない。あなたは、知らず知らずのうちに、他者の声を腹話している」
 …そのまま上記の文章を読めば、まさに「貞子」的状況。何だか背中が寒くなってくる。でも、この考え方も、彼が切り開いた現代思想の常識である。
 そして情報通信技術の普及した現代、もしロランバルトが生きていたら、こう言うのかもしれない。
 ソフトウェアの<作者>は死んだ
 —
 このところ、eラーニング業界では、オープンソースの動きがかまびすしい。

日経 Opensource LMSについての記事
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/NEWS/20050803/165847/
Opensource LMS
http://www.oss.ecl.ntt.co.jp/lms/index.html 

 要するに、従来の「システム売り切り」のビジネスモデルから、システム自体は無償で提供し、利潤の追求はサポートでおこなうというビジネスモデルへの転換だと言える。
 システムには、いろいろな人々の声が反映している。システムは、あなただけで開発するものじゃない。
 オープンソースのLMSたちをつめるこめるだけ詰め込んだ、ブータブルCDも、人気を集めているようである。ここには、東京大学情報基盤センターが開発したCFIVEも盛り込まれている。

KNOPPIX LMS
http://www.eitl.cs.takushoku-u.ac.jp/knoppix/LMS/

 僕もかつてexCampusというオープンソースシステムの開発をディレクションしていた。そのときは、まさかこんな時代がくるなんて予想だにしていなかった。
 ネクスト・フェーズがあらわれようとしている。そこには、どんな可能性が開けているか。
文責:中原 淳

ブログ一覧に戻る

最新の記事

あなたは、データを「愛していますか」?:データ自体が何かを「語り始める」くらいまで、あなたは、データに向き合っているのか?

2025.4.14 18:11/ Jun

あなたは、データを「愛していますか」?:データ自体が何かを「語り始める」くらいまで、あなたは、データに向き合っているのか?

自分の所属する「組織(ハコ)」によって、あなたは「有能」にも「無能」にもなりえる件

2025.4.6 18:11/ Jun

自分の所属する「組織(ハコ)」によって、あなたは「有能」にも「無能」にもなりえる件

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?

2025.4.1 18:20/ Jun

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?

【中原からのお願い】ファミリービジネスにおいて「事業承継」をご経験された方、ぜひ、アンケート調査にご協力いただけませんでしょうか?

2025.4.1 10:33/ Jun

【中原からのお願い】ファミリービジネスにおいて「事業承継」をご経験された方、ぜひ、アンケート調査にご協力いただけませんでしょうか?

2025.3.27 15:18/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2025募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!