NAKAHARA-LAB.net

2019.11.18 06:54/ Jun

「単にイベントを企画する」のではなく「お客さんが楽しく学べる経験」をデザインせよ!

 中原ゼミでは、ここ数年、2年生が、1年間学んだ知識や経験を駆使して、「ラーニングイベント」の企画をする、ということが慣例になりつつあります。
    
 ラーニングイベントは、「人づくり・組織づくり」を仕事になさっている皆様を対象(お客様)とした企画で、「自分たちが、この半年間、行った課題解決の成果を発表」する場です。
  
 今年の場合でいうと、金融庁さん・きらぼし銀行の皆様に貴重なサポートをいただきながら(両組織のみなさまには、心より感謝いたします!)、
  
 ・1on1を受ける側の社員の研究
 ・育児と仕事の両立作戦に関する研究
 ・男性育休とキャリア形成に関する研究
 ・新人の早期離職に関する研究
  
 に従事しております。
  
 自らの研究をすすめ、社会のひとびとに知見を「お届け」して欲しい、と心より願っております。
  
(3年生はミニ卒論で探求した内容を、発表するミニ卒論発表会を企画しているようです。こちらも楽しみです。昨年は、三年生は下記のイベントを企画してやりきりました)
  
【御礼】「帰ってきたラーニングバー!? : 20’s展」が終わりました!:中原ゼミの学生たちによる「20代×働く」の探究ワークショップ!?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/10083
  
  ▼
  
 さて、ラーニングイベントの企画・実施ですが、こちらは、しっかりと取り組めば、さまざまなことを実地で学べる機会になると思っています。
  
 なぜなら、
  
 イベントは「ひとり」では成し遂げることはできません
  
 よって、「他者とどのように連携したらよいのか」「聴衆となる他者に何を届けたらよいのか」など、様々なことを実地で学べるのです。
  
 列挙するならば、下記などが、ラーニングイベントを通して学び取れる内容です。
  

    1.イベントは「目的」を決めることが必要です

 何をするにしても、大切なのは「目的」を決めることです。多くの人数で、「目的」をひとつに決めて実行することは、大変なことです。
 ラーニングイベントをひとつ企画し、実行するとは「目的」について徹底的に議論することを意味します。何をするにしても、「目的」を意識する癖をつけて欲しいものです
  
 

    2.イベントは「コンセプト」で決まります

 イベントはコンセプトであり、ネーミングが重要です。その場に行けば、どのようなメリットが相手にもたらされるか。従来のイベントとは何が違うのか・・・こうしたことをしっかりとワンセンテンスで表現できなければ、ひとが集まるイベントはできません。
 ラーニングイベントを企画すると、コンセプトメイキング、ネーミングなどを学び取ることができます。

  

    3.イベントは「相手本位」の内容でなくてはなりません

 よいイベントは「企画者である自分が何をしゃべるか」よりも「聴衆である相手が何を欲していて、何を受け取りたいか」を中心に設計しているものです。「相手本位であること」は、学びの場づくりにとって、もっとも重要で、もっとも根幹になる思想です。
 イベントの企画をとおして「相手本位の目線」を学び取ることができます
 
 

    4.イベントは「段取り」と「人員配置」です

 イベントは「細かい段取り」をミスれば、ただちに台無しになります。そのためには、相手本位の目線にたって、聴衆である皆さんが、どのように「動くか」という「動線」を徹底的に予測し、対策を立てなければなりません。
 受付での対応、トイレをどう案内するか、食事をどのようにとってもらうか・・・すべてが一考の余地のあることです。そうした予測に基づいて「人員配置」を行わなければ、イベントはただちに「台無し」になります。イベントを行うことによって「段取り力」と「人員配置力」を学びます。また会場のご担当者のかた、音声や映像のご担当の方などとの対応も行わなくてはなりません。イベントは「ひとり」ではできないのです。
 
 

    5.イベントは「中身」です

 何よりも大切なことは、イベントは「中身(コンテンツ)」がもっとも重要です。ここをしっかりと練り込み、知見を「お届け」できなければ、どんなに「段取り」と「人員配置」を詰めても意味がありません。そのためには、心ゆくまで知的に暴れ、探究をすすめることです。
  
  ・
  ・
  ・
  
 このように自分で学んだ内容を、しっかりと「社会にお届け」するのは並大抵のことではありません。その中には、多くのラーニングポイントが存在しているので、しっかりと取り組んで欲しいものです。
   
 もしかすると、
  
 仕事で大切なものの多くは、イベントの企画・実施にあふれている
 
 のかもしれません
  
  ▼
  
 要するに・・・
  
 めざすべき地平は、
  
 単に、イベントを企画するのではない
  
 ということです。
  
 そうではなく
  
 イベントにおいて「お客さんが楽しく学べる経験」をデザインする
  
 のです。
  
 それをやりきれば、
  
 イベントを通して、自分たち自身も「成長すること」が後からついてきます。
  
 今年もよいイベントをやりきってくれることを願っております。
  
 さて・・・今年はどうなりますことやら。今年度のイベントは3月14日(土曜日)、東京南青山で実施の予定です。
  
 そして人生はつづく
  
 ーーー
     

  
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

    
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