NAKAHARA-LAB.net

2019.10.1 06:22/ Jun

だれもが最初は「初心者」だった!? : 「育て方がわからない」のは「育てない」からである!?

「育て方」がわからないんですよ。育てたことがないから、育て方がわからない。どうしたら、いいんですかね?
  
  ・
  ・
  ・
  
 仕事柄、よく、そんなご質問をいただくことがあります。
  
 脳裏では、
  
 そうだよね・・・わかんないよね
 気持ちはわかるなぁ・・・
  
 と思いながらも、「でもね」と思う自分がいることに気づかされます。
  
 これは「鶏と卵的」な話になってしまうのですが、
  
 「育て方」がわからないのは、育ててないからだ
   
 と、ついつい思ってしまうのです。
    
 逆に、「育て方」の多くは「育てるなか」でしか学べない。
  
 すなわち「育て方」の多くは「経験学習」でしか、学べない、と思うのです。
  
 ひとは、誰かにかかわり、誰かの背中を押すことで、育て方の眼目を知るのではないでしょうか。
  
  ▼
  
 そりゃ、ものすごく基礎的なことは座学や本などで学ぶことはできるかもしれません。
「相手に対してやっちゃいけないこと」や「相手にかかわるルール」くらいのことであれば。そういうことは、事前にしっかりと知っておいた方がいい。
 あくまで「一般論」くらいのレベルでよいならば、何も、やってみなくても、わかることがあるかもしれない。
  
 しかし、誰か相手を育てるときに、相手にどうかかわり、どう育てたらよいのか、多くは、育てるなかで、つかむしかない。
  
 と僕は思うのです。
   
  ▼
  
 たとえば、相手が子どもちゃんならば、
  
 子どもが何を望んでいるのか、子どもがどんな時間感覚で考えているのか、子どもが何につまづいているのか、は、相手の子どもを実際に「見ること」や、何か働きかけてみて、その「反応」を知ることでしか、推し量ることができない。
  
 そのときに、「一人称たる相手の子ども」に、どのようにこちらが振る舞うかは、そのときの状況や相手のキャラ、こちらのキャラに埋め込まれている。
  
 なので、「この子」に対する育て方は、育てる中でしか、学べない。
  
  ▼
  
 相手が、大人であるならば、
  
 この若手に、どのくらいのレベルの仕事を任せることができるかは、いったん適当な仕事を任せてみて、そのアウトプットを見てから、能力を推し量るしかない。 
  
 この若手に、どのようにフィードバックするかは、そのときの状況や、相手のキャラ、こちらのキャラや可処分時間に、埋め込まれている。
  
 なので、「この若手」にどうかかわり、この若手をどう育てるかは、育てるなかでしか、学べない。
   
 ということは、
  
 まずは「育てようとしないこと」には、育てられるようにはならない
  
 この世に、生まれた最初から「育てること」のプロフェッショナルであったひとはいません。
  
 育てることは、みな、「初心者(ノービス)」からはじまるのです。
  
 親は、親として生まれるのではない
 親の立場に置かれることで、親になっていくのです(Becoming a parent)
  
 なかには、
  
 僕は「育児」は苦手だわ
  
 とひともいるかもしれません。
  
 でも、それは「やらないから」
 「やろうとしないから」です。
  
 育児を最初から「できたひと」は、誰1人としていないのです。
    
 よき上司は、最初から上司ではない
 上司は、その立場になり、部下とかかわることで、上司になっていくのです
 (Becoming a mentor)
   
 メンターは、最初から、メンターとして振る舞えるわけではない
 メンターの立場になってみて、試行錯誤しつつ、メンターになっていくのです
 (Becoming a mentor)
   
 誰もがみんな最初は「初心者」だったのです。
 最初は、みんな、得意も、下手もない。
 最初から「得意」だったひとなんていないのです。
   
  ▼
  
 今日は「育てること」にまつわる「鶏と卵」的な話をしました。
 朝っぱらから一銭の得にもならないお話にお付き合いいただき、どうもありがとうございます。
  
 あなたのまわりには「育てようとせずに、育てられない」と言っているひとはいませんか?
     
 そして人生はつづく
   
 あっ、今日10月1日、44歳になりました。
 最近の口癖が「1年1秒」。
 本当に年齢を重ねるのが「秒」に感じます。
    
 今年もよい年でありますように。
   
  ーーー
  
新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
      

   
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
   
 ーーー
    
9月1日・日本経済新聞の中原の記事「長時間労働の構造にメス」のなかで拙著「残業学」が紹介されました。おかげさまで重版出来6刷、さらに多くの皆様にお読みいただいております。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
   
 ーーー
  
新刊「組織開発の探究」発売中、重版4刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
   
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
中原研究室のLINEを運用しています。すでに約13000名の方々にご登録いただいております(もう少しで1万人!)。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
   
友だち追加
  

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?

2024.11.26 10:22/ Jun

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?